kanaco
2025-06-23 23:08:53
2417文字
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【四仔+ケモ子供たち】あらしのよる

《四仔+ケモ子供》四仔が”おおかみこども”のンヤと”とらこども”のプイと仲良しなだけ(約2300文字)

それは激しい嵐の夜であった。

お外が怖くて架勢堂に帰れないどころか、信一の部屋で2人きりでお留守番もできない。

そう言って騒いで四仔の部屋に転がり込んできたにもかかわらず、ンヤとプイは子供らしいパッチリとした目をかっぴらきながら、窓の前に膝小僧を並べて座って、“怖い”言う外の様子を熱心に見ていた。

強い風に豪雨が横殴りになり、ゴーゴーザーザーと大きな音を立てている。木々がしなり、砦の壁や屋根を激しい雨音が打つ。その度にオオカミの耳とトラの耳をピクピクと震わせ、小さな手をギューギューとつないで、口をあわあわさせながら、ンヤとプイはピッタリと体をひっつき合わせていた。

「ぅあー」
「ぅあー」

(なぜ怖いというのに窓の外を見る……

四仔は子供たちから少しだけ後ろに下がって胡坐をかき、窓に張りつく2匹のケモノの子の後ろ姿を眺めた。

今日はあいにくの天気のために診療所は空いていた。しかし欠陥した箇所も多い九龍城砦の雨漏りやら故障修理やらの手伝いに洛軍と共に1日中駆り出され、いつもとは違う角度で疲れきっていた。それにもかかわらず、いつでも騒がしいキッズたちの預かりドコロになりくたびれているのが本音だ。

とはいえ「後で迎えに行くからごめんな、2匹を頼む」と言った信一は、今日の朝からずっと龍捲風と共に砦全体の指揮をとっており、いまだ後処理が終わらず仕事に出たままだった。まだ働いている友人のことを考えると、そう文句は言えまい、と四仔は思った。

まぁ、2匹も雷雨に怯えているがゆえに、逆に静かで良いとも言えるし

(さすがに可哀想か?)

いつも嬉しそうに振れている2匹のシッポも今は“しょんぼり”とカーペットに垂れて元気がない。四仔は2匹の気を外から逸らそうと、両方のシッポに手をそっと伸ばしてみた。信一や十二に毎日手入れをされている、柔らかくて手触りの良い毛並みが四仔の手に優しく掴まれる。

しかし外に夢中であるためか、いつもであれば構われて喜ぶオオカミのシッポは、四仔の手から逃れるように2回ほどユラユラと揺れてまたパタンと下に落ち、トラのシッポは逃げて子供の細い腹に巻き付いてしまった。

その時。

外の暗闇を切り裂くような激しい雷光が鋭く落ちた。

瞬間的に部屋がピカピカと白く点滅する。
四仔の頬にさえ刹那の熱を感じたので、窓に張り付いていた2匹の頬はもっと熱かったであろう。

「「!!!???」」

ンヤとプイが悲鳴にもなっていない甲高い声を上げて、言葉の通り体を飛び上がらせた。そして小さな体には重く響いてしまうような重低音のゴロゴロという音を受けて、ついに2匹が「「ひゃーー!!」」と叫びながら四仔の方に手を伸ばして走ってくる。

2つの塊が凄い勢いで飛んできて、四仔の腹に我先に激突した。

「ぐふっ!」
一切の容赦ない純粋な子供の頭突きとはなんと重いことか。それともそれは2匹が獣人であるからか。

ンヤの石頭が右肋骨に、プイの石頭が左の鳩尾に、ダイレクトアタックをかまされた四仔が後ろにひっくり返るのだけはこらえながらも痛みに息を詰める。

そんな四仔の大ダメージを気にも留めず、プイが四仔の腹にグリグリと額を擦らせ、ンヤが瞳に今にも零れ落ちそうなほど涙をためて「せーじゃ」と名前を呼んだ。

しかし、四仔が2匹に与えられた衝撃に何とも言えない顔をしているのをみたンヤが「はっ!」とした顔をして、四仔の体に顔をうずめているプイの耳をひっぱる。

それによって顔を上げたプイも「はっ!」とした顔をして四仔の顔をマジマジと観察する。

「???」
ケモノの子たちの反応に四仔が不審な顔をしていると、2人の小さな手が四仔の頭にのびて触ると“いい子いい子”と撫で始めた。

「せーじゃ、かみなり嫌い」
「せーじゃ、かみなり怖い」

「いやこれは雷では
自分が慰められていることに面を食らい、成すがままになりつつも「そうではない」と否定しようとした四仔を静止するように、2匹がスクっと立ち上がった。

それから四仔の頬にぷにっとした人肌が触れた。

四仔の右頬にンヤの左頬が、四仔の左頬にプイの右頬がピタッとくっついて、小さな2匹が四仔の大きな体にぎゅーっと抱き着ついた。ふわふわとした柔らかい子供のすべらかな感触が四仔の顔を包んで、抱きつかれた場所からも熱めの子供体温がジワジワと広がって伝わっていく。

「ろんあにき、これすると嬉しいっていう」
「たいがーあにき、これすると元気になる」

「せーじゃ、かみなり怖くない」
「ンヤとプイいる」

(おぉおぉぉ
雷は全くもって関係ないが、これはこれで疲れた体にはすごく染みわたる

傷だらけの頬を気にして、常日頃マスクで隠し続け、他人に触らせるようなことは決してしてこなかったのに。まるでその繊細な場所、そして気持ちが浄化されていくようであった。

(なるほど、これがアニマルセラピー

もちもちのほっぺに両方から包まれた四仔は、ひとしきり感心すると、深く考えることを放棄した。

外でまた激しく雷鳴がとどろく。
四仔にひっついたまま、再びブルブルと震えはじめた小さな塊を宥めるべく。四仔は右手にンヤを左手にプイを抱え込むとそのまま後ろにボスンッ。

ダイブするように寝転がって敷いてあった布団へと身を沈めた。




しばらく
「わりぃー、四仔。遅くなったわ。チビたち引き取りに来たぜ」
仕事をひと段落させて信一が四仔の自室を訪れた。
勝手知ったるでノックもせず、ガチャリとドアを開けてその部屋を覗き込む。

「おやぁ」
目に映ったのは「小」の字に並んで仲良くスヤスヤと眠る1人と2匹の姿。

「仲がよろしいこって」
にこやかに笑った信一は部屋に入り込むと、傍に畳まれていたブランケットを拾って広げてあげた。