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桜霞
2025-06-23 17:06:07
2835文字
Public
【RKRN】夢
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【RKRN】ペットさんぽ代行【sgud夢?】
一昨日スペースで話してた、すご腕さんがペット代行してる話を書きました。夢主は出ませんがこどもとワンちゃんがたくさん出ます。なお私はワンちゃん飼ったことがないので、この犬種とこの犬種は一緒に散歩できないわよなどの指摘はご遠慮くださいね。
青い空を背景に、鉄とコンクリートで建てられたビルが高さを競うようにして乱立しているその足元で、木々は風を受けて気ままに揺れている。
木擦れの音は目にも爽やかで、日向に照らされた芝生で遊び疲れたこども達に心地よい木陰を提供していた。
芝生の真ん中に置かれた遊具にはこどもたちが群がっており、その傍を着かず離れずの距離で、保護者たちが井戸端会議に興じている。遊具を取り囲むように設置されたベンチには、はしゃぐこどもたちを微笑ましく見守る老夫婦が腰かけ、その傍の石畳をスポーツトレーナーに身を包んだ若者が颯爽と走り抜けた。喧騒から少し離れたところでは、芝生に寝転がって日差しを楽しむ者もいれば、読書にふける者もいる。
「そっち行ったぞー!」
わーっ、という歓声と共にボールが飛んで転がって行く。瞬く間に追いついたこどもたちが、めいっぱい全身を使って動きまわり、今この瞬間だけを楽しんでいる。
ふと、こども達のうちのひとりが、瞬いて動きを止めた。隙をついて他のこどもがボールを奪っていくが、こどもはどこか一点を見つめたまま、微動だにしない。
「どしたの?」
「あれ
……
」
こどもが指で示した方を見て、もうひとりのこどもは「わっ!?」と声を上げた。子供たちの視線の先には、トイ・プードル、チワワ、柴犬、ミニチュア・ダックスフント、ポメラニアン、ブルドッグ、ゴールデンレトリバー、
……
とにかくたくさんの犬たちが、大きいものから小さいものまで、揃って行軍していた。皆一様に首輪からリードが伸びていて、リードは犬たちに囲まれて歩いている男の腰に巻かれたベルトに繋がれている。こどもたちは六匹を越えたところで数えるのを諦めた。
体の小さい犬たちはちょこまかと跳ねまわるようにして動き、時折男に飛びついている。男はむつかしい顔をしていて、長い足を気を付けて前に出し、薄いシャツに滲む汗が盛り上がる筋肉の影を分かりにくくしていた。
走り回る小さい犬たちを、いつ男が踏みつぶすとも知れず、というかむつかしい顔をしたでかくて怖そうな男がベルトからタコのようにリードを生やしてたくさんの犬に囲まれている光景が言わずもがな異様で、こどもたちは犬たちから目を離せなかった。その視界を、ボールが犬たちの方へ転がっていく。
こどもが、一緒に遊んでいたやつが変な方に蹴ったんだと気付いて息を呑んだ直後。
ボールに反応した犬が吠え、一目散に走りだした。
「ウオッ!?」
男の腰が、がくんと折れ曲がる。
ワンワン、バウワウ、キャンキャンと犬たちが次々に飛び出して行って、しかし男はなんとか踏ん張った。遅れてついてきた上体を沈めて腰を落とし、なんとか踏ん張ろうとしている。
「んぎぎぎぎ
……
!」
大量の犬軍団と遭遇して、ボールを追いかけて行ったこどもが、どうしよう、と戸惑っている。ボールはワンワンキャンキャン楽しそうに跳ねまわる犬たちの間に見え隠れしていた。こどもたちが茫然となりゆきを見守る中、犬たちは何を見付けたのかあらぬところへ走り出し、吠え、跳ね、男にとびかかってじゃれつき、リードは絡まりあい、
「うぉわッ!!」
結果として力負けしてしまった男が、膝からずべしゃあと地面に滑り込んだ。
思わず顔を見合わせたこどもたちが吹き出し、軽快な笑い声を響かせる。気まずそうにしている男は、しかし犬たちにいいように乗りかかられ、飛び越えられ、寝そべられ、起き上がるのすら難しそうだった。
誰からともなく走り出して、こどもたちが男の周りに集まる。
「おじさん、大丈夫?」
「、おじ
……
ッ!?」
「ねえねえおじさん、わんちゃん触っていい?」
「おじちゃん、この犬なんて言うの?」
「おっさん、オレのボール知らねえ!?」
「すげー! ふわふわしてるー!」
「触っていいって言われるまで触っちゃだめなんだよ!!」
男は茫然とした。犬のみならず、こどもにまで囲まれて、好き放題言われている。足などには我が物顔で腰かけられている。
溜息。男はすべてを諦めた。
視界に突然眩しい西日が入り込んで、思わず「まぶしッ」と声が上がる。
向こうの空を見晴るかせば、赤の混じる橙色に染まっていた。先程までお喋り───旦那の愚痴や義両親の愚痴、こどものしつけや家庭内教育の相談など───に興じていた保護者達が、あらまあもうこんな時間ねと口々に言い合って腕時計などを覗き込み、こどもたちが遊んでいるはずの遊具の方へ視線を向ける。
「
……
あら?」
「うちの子、どこ行ったのかしら」
「うちの子もいない」
「あ、あっちにいますね」
言われて遊具から視線を外すと、そこにはたくさんの犬がいた。犬たちに交じって、こどもたちが遊んでいる。長いリードが絡まりそうになると、輪の中心にいる男がこどもたちに声をかけている。男の肩にはこどもがふたり、それぞれ左右によじ登り、左右の足にはこどもたちが座ったり寝転んだり、好き勝手に寛いでいた。男は絡まったリードをほどこうとしていて、首を傾げる度にこどもたちに「ぶきっちょ!」と揶揄われていた。
「まっ、なにあれ」
「かわいい~!」
「あれですかね、ペットの散歩代行」
「あんなにたくさんですか!?」
「あ、ママ!」
「パパー! 見て見て、可愛いでしょ!」
「もう帰るわよ。ご飯の時間だから」
途端に、えーっ、とこどもたちの合唱が揃う。さよならして、と保護者に言い渡され、もうちょっとと粘るこどももいれば、嫌だと駄々を捏ねるこども、渋々素直にはーいとよいこの返事をするこどももいる。全身にまとわりついていたこどもからようやく解放された男は、ホッとしながら立ち上がった。
「すみません、遊んでいただいてたみたいで」
「ああいや、大丈夫です」
「ママ! このおじさんすごいんだよ」
「すご腕散歩代行おじさんなんだよ!」
「でもぶきっちょなのー!」
「ぶきっちょー!!」
「コラッ、なんてこと言うの!!」
ワーッ、と逃げるこども。コラーッ! とダッシュで追いかける母御。
「お世話になりました、お仕事お疲れ様です」
「とんでもない」
「じゃーなすご腕!」
「わんちゃんたちもばいばーい!」
大きく手を振るこどもたちが、保護者に促されて少しずつ小さくなっていく。先程の母御に追いかけられていたこどもが、遠くで「じゃあなー!」と飛び上がって、母御がぺこりと頭を下げた。
男も礼を返して、やれやれ、と嘆息する。ようやく嵐が過ぎ去った。
男の手がベルトの辺り、絡まったリードを一撫でする。次の瞬間、リードは全て解きほぐされた状態に戻っていた。
「よし、帰るか」
男の一言で、犬たちが揃って歩き出す。楽しそうに跳ねるもの、群れの後ろから見守るようについてくるもの、男にじゃれるものと様々だが、一同の影は、揃って長く伸びてゆく。
おしまい。
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