mamizu_ya
2025-06-22 22:10:34
491文字
Public
 

読み合わせ台本『かえらずのうみ』別視点SS

『かえらずのうみ』と同じ世界観の異なる視点のお話となっております。

白波は柔らかく触れていき、足元の砂を連れ去った。

この海には人魚の伝説があるという。
波打ち際にいる人を連れ去って人魚にしてしまう、なんていうものだ。にわかに信じ難い話だけれど、彼女は、人魚の話を聞いたことがあるらしい。

浜辺に打ち上げられた人魚はね、連れていかれちゃったんだって。
どこに? だれに?
男の人。行先は誰も知らないの。

人魚を連れて帰るなんて酔狂な人間もいたのだ。でも人魚の肉は不老不死になれると、古くから言われている。
じゃあ、その人は人魚を食うために?
答えはわからない。
そもそも、真実なのかも知れないのだ。

でも憧れちゃう。
なんで?
もしもその人と人魚が恋に落ちていたのなら、逃避行じゃない。

なるほど、そういう考え方もあるのか。
俺の隣で、彼女はまっすぐに水平線を見つめていた。

いいな。私も人魚になって、そんな恋をしてみたい。
わざわざ人魚にならなくたって。
人魚の恋は人魚にしかできないじゃん。

果たして、人魚の恋とはどんなものなのか。
彼女の言葉に、俺は連れ去られた人魚に思いを馳せた。

泡になんか、なってなければいいけれど。