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ぽふむん
2025-06-21 22:00:00
3219文字
Public
ワンドロ
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黄泉路保育園
#童しの記念日2025前夜祭
#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「黄泉路♡」
ちまどまとしのぶちゃんです
鬼は嘘つきというしのぶちゃんの言葉がありますが
辛いこと、認めたくないこともしこうだったらもう少し……という思いから自分自身に嘘をつくということもあって……
自分についた嘘もつき続ければ真実になり、走馬灯にもなるのでは?という話ですら
眠らせていたメモアプリ内のネタメモの焼き直し。なので、実際にはもう少し時間かかったかも
「げーんこーつやまのたぬきさん、おっぱいのんで ねんねして」
幼子が陽気にボーイズソプラノで声もたからかに歌っている。
しのぶは十にも満たぬ男の童の小さな手を握り、 荒涼とした道を歩いていた。
体格的に重そうな漆黒の法衣を纏うこの子は七つ
……
いや、もう少し幼いかもしれない。
先程まで、唇をきゅっと結び石の塔を積み上げ、積み上げては崩されて。
それでも泣くこともせず、文句も言わず積み直していた童と同一人物とは思えない。
先程しのぶの小柄な体を嘲笑い、腰をへし折った大男と同一人物とは思えない。
童は、このように荒れ果てた地でも、恐れる様子すら見せずご機嫌で歌を歌っていた。
「ねぇ、ぼくは怖くないんですか?こんな道」
「平気。だってしのぶちゃんと一緒だもん。やっとお迎えにてくれた。
結局他の女や俺の母親と一緒だと思ってた。産んだらぽいって捨てておーしーまい。
女なんて皆嘘つきだって思ってた」
まだ声変わりすらしてない稚いボーイズソプラノが答える。
「みんな、その度に「仕方なかった」「こうするしか無かった」と言って泣くんだ。だから信じてあげた。でも、ほんのひとときもすれば笑ってた」
あまりに無邪気に言うからしのぶは押し黙った。
大正時代でもそんなことは隠密裏であったこと
発覚すれば罪に問われたが、江戸の頃よりあくどいものだったかもしれない。
金のために乳児を売る者。
育てられることもなく、臓器を売られたなどという事件もあった。
そんな女を、子供を
こんな歳で散々見てきたのだろう。
綺麗なのは表だけ。
裏は汚い。
この少年は綺麗な世界の概念すら知らない、泥沼に咲いた一輪の花
あの「嘘」の姿なら、こんな道はどうということはないだろう。
でも、ここにいるのはしのぶでも余裕で抱き上げられる少年だ。
「二十歳の大人なら これしきのことで疲れませんね」
そう言って、しのぶは童を抱き上げる。
「僕大人だもん!しのぶちゃんに恋する事だってできる大人だもん」
「はいはい
……
一緒に現世での贖罪を終え、生れかわることが出来るなら、本当の二歳差になりましょうね」
「約束だよ
……
今度は恋人同士に
……
でも、しのぶちゃんがお母さんというのも
……
いいなぁ」
童が、しのぶのぬくもりにうとうとし始めた
しのぶの脳内に、童の思念
いや、記憶がなだれ込む。
────────────
誰も手入れするものが居なくなり荒廃した寺院。
この寺院が打ち捨てられどのくらい経つだろう。
かつてこの寺院には数多の信者が集まり、教祖夫妻の十にも満たぬ子どもを御神体に講(寄り合いのようなもの)が開かれていた。
万世極楽講
ただ日頃の愚痴を語り合い、心の平穏を保つだけの寄り合い。
頼母子講やその他の講も開催されていたという
だが
その主宰とも言える教主夫妻が死んだ
女狂いの夫に怒り狂った妻が夫を刺した。
そして妻も
そういうことになっているが
……
実は金銭絡みだという話もある。
実は二人は夫婦ではなく、子どもも実の子では無いという話もあった。
なんにせよ
二人は相対死を遂げた
十にも満たぬ御神体。神輿を残して
この時代、心中は罪
二人の遺体は埋葬すら許されず、晒し者にされた
巻き添えはごめんとばかりに、ここに集まっていたものは蜘蛛の子を散らすように去っていった。
残されたのは子どもただ一人。
子どもだけで何ができようか
こんな時どうすればいいのか、教えられてきてはいない。
それを教えてくれる大人なんて居なかった。
今までも、今も、これからも。
みぃんな逃げてしまった。
自分のことで精一杯だから。
講は、子どもにとっては面白くもなんともないものだった。
くだらない身の上話を聞くのはあくびの出るような心持ちだった
でも
その代償に、毎日お腹いっぱいご飯が食べられた。
やさしい女達がお乳をくれた。
父親の妾や妾ですらない ただ伽を共にするだけという女達が、自分を囲んで笑っていた。
手遊びしたり、お歌を聞いたり
それはそれなり
心地よかった。
全部なくなった
全部壊れてしまった。
手入れをしなければ 瞬く間に建物は劣化する。
みるみる朽ち果てていく寺院
食べ物も底を尽きた
すぐそばには、埋葬を許されず腐り崩れ落ちていく、かつての父と母であった物。
(お腹
……
すいたな)
(寒い)
(ひもじいよ)
幼子の体は痩せこけ、干からびていく
この地域の気候風土が手伝い 即身仏となろうとしていた
(困ってる人の愚痴を聞いて、その心を助けてあげる
……
それが俺の務め
……
あぁ、じゃぁ、僕が仏様になればいいのか
……
)
童の姿のまま
磨き上げ仏と
……
なるんだ。
幼子の干からびた体のどこにそのような水分があるというのか
瞳から涙が零れた
「このたわけ者が」
突然幼子の耳に、やさしく 慈愛に満ちた
父のような
温かい声が聞こえた
「お前は、我が身が可哀想と思わぬのか。大人にもなれぬまま仏だと?このとんま」
(おじさんだぁれ?神様?)
「神というものが本当にいるのなら、何故お前はこんな目にあっている。だが
……
鬼の私なら
……
お前を大人にできるやもしれぬぞ。なんでも出来る大人になりたくはないか。子どもだから非力なのだ。私がお前を大人にしてやる」
(うーん
……
大人
……
?じゃあ
……
二十歳でお願いします)
「大人といえば二十歳か
……
このとんま。まあいい」
頭に血が注がれた
乾いた体躯に大量の血が染み込んでいく。
みるみる吸い付くし、もらった物は残らず飲み干し
すくすく体が成長し
二十歳の時の姿で止まった
ボーイズソプラノだった声はアルトに変じていた。
「感謝いたします。我が主
……
無惨様」
恭しく頭を垂れ鬼の首魁の足の甲に口付けた。
鬼とは素晴らしい。
なれないと思っていた大人になれた。
俺は賢いから、大人になったら
二十歳になったら
なんでも出来る。
───俺は、二十歳の時に鬼にしてもらった───
鬼になって
吉原で
たくさん女の子と鬼ごっこした
投扇興や金毘羅船船などなどをした。
大人の真似っ子だ。
でも
大人って
これ
……
楽しいのかな?
たくさん遊んであげたのに
『子供みたい』なんだって
大人が言ってた恋ってやつをしていたつもりなんだけど
……
違うの?
大人(鬼)になって
お酒が飲めなくなったのはちょっと残念かな
え?しのぶちゃん知らない?
俺の生まれた時代
子どもでも、飲んでたんだよ。
そのせいで、酒毒に中って二十歳にならずに死んじゃう人もいたらしいね
しょうがないじゃない
そういう時代と地域だもん
─────────
「十にも満たない歳で即身仏となりかけていた童
……
鬼の始祖の血を大量に貰い
……
大人に
……
」
「そうだよぉ。子どもだから、父上や母上の望みを叶えられない。じゃあ大人になればいい」
「あなたにとって大人とは二十歳だったんですね」
「うーん
……
おじさん過ぎたかなぁ?」
「いいえ
……
そうではありません」
しのぶは言葉を失った。
中身は子どもの大人が必死に大人ぶろうとしていた。
母性を求めた子どもが、必死で
そういう地域だった
こんな子どもも何人もいたんだろう
可哀想?いや、違う
憐れで、醜く
……
無様
でも
あなたの生まれた時代には、地域では、どうすることも出来なかった。
誰にも
でも、次生まれ変わったら
その時には
その時代には
きっと
もう少しマシな時代になっているでしょう。
嘘の姿形ではない。本当の大人になれるでしょう。
その時には本当の二歳差で
それからの事は、その時代の自分たちが決めるでしょう。
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