ortensia
2025-06-21 02:12:16
753文字
Public その他
 

おそらくガデ


 すっかり片付けと次の準備を済ませたそこは、酒の香り芳しい、閉店後のエンジェルズシェアだ。開店中の賑やかさも幕を閉じ、夜の静けさに紛れたそこでは、天使の囁きも筒抜けそうだ。実際そこで密談しているのは、天使と呼ぶには血の気が多そうな二人だったが。
 今は酒のグラスでは無く、何かのリストの書類が数枚並んだカウンターでは、それを挟んだ二人の男、赤と青が兄弟のように顔を突き合わせていた。
「敵の特徴は掴んだ。次に奴らが動くタイミングで、僕も出よう。」
「相変わらず流石だぜ。毎度ながら結果的に騎士団の人手不足を補う形を取らせて、悪いな。」
 にこやかに悪びれて見せる姿が、本当に悪いと思っているのかは、もはやどうでも良かった。それも毎度のことなので。だから、よく言う、と返す気も、赤の男には起きない。
 真紅の瞳が紺碧のそれを見詰めているのに対し、青の男はこの場を俯瞰していた。
「お前とこうしているのが俺じゃなくて旅人だったら、二人だけのお前の望んだ騎士団だな。」
 いや、小さな白い彼女を入れれば三人かな、そうしないと機嫌を損ねてしまうだろう。しかし真紅の瞳は不可解そうに瞬いた。それがここ数年ではめっきり見なくなった、あどけない仕草だったので、逆に紺碧の瞳のほうが驚いたほどだ。
……僕はもっと、騎士団にいた頃よりも前の、ワイナリーでその日の遊びを考えていた頃のほうが近い気がするけれどね。」
 紺碧は更に驚いた。騎士団としての赤い男をすぐさま思い出してしまう青い男のほうがよっぽど、もう本当に騎士団に未練がないらしいこの男よりも、こだわっているようだと気付かされた。
 赤い英雄の目的、モンドを守るためならば、何も騎士団にこだわる必要はないのだと、真紅の瞳は、もうとっくに気付いているのだから。


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