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春野ツバサ
2025-06-20 22:32:10
4128文字
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遠足に行こうっ【ゴジュウの小話】
というわけで、ゴジュウ虹の投下でございます。
おかしい……まだゴジュウに手をつける予定じゃなかったのに。
それも全て遠野吠って奴のせいなんだ(待たんかい
いやだって、最新話で運動会はもちろん学校行事なんかしたことないだなんて言われたらっ。よっしゃあっ、経験させたらぁっ、ってなるでしょ!? 少なくとも私はなりましたっ故にこの小話ですっ。
短い期間で書いたものになるのでクオリティの方はお察しで。人物の解像度もまだまだの為口調も完全迷子です(主にゴッドネスさんが)。ので、生暖かい目で見てください。
そもそも、誰の1人称やねん、と思われたましたら、現在支部にて投稿中の拙作をご覧いただけますようお願い致します。と宣伝しときます(止めんか
無断転載及びAI学習は御遠慮くださいますよう、よろしくお願い致します。
ばんっ、と音がなる勢いでテガソードの里の扉を開く。
「吠くんっ、遠足に行くよっ」
空腹を紛らわすためか、はたまたほんとにご飯代わりなのか、今日も今日とて店に飾られた花の蜜をひたすらに吸いまくる地上に舞い降りた天使(や、現状は妖精さんかな)、もといはぐれ狼こと遠野吠にそう宣言する。
「
…………
は?」
やってくるなり謎の宣告をされたことにわけがわからなかったらしい吠くんの口から、吸っていた花がぽとり、と落ちた。
呆ける吠くんとは対照的に満面の笑顔を浮かべるわたくし。もう、笑顔ゼンカイ、キラッキランランであります。
「だから、遠足」
「いきなりなんでそんなことになるんだよ?」
訝しがる吠くんに、はた、と気付く。そーいえば、理由を言ってない。こいつぁ、うっかりだ。
「ほら、この前運動会ノーワンが来たときに言ってたでしょ。
学校行事的なのをしたことがないって」
「言ったけど
――
って、なんで知ってんだよ!? 地獄耳かお前っ陸王かよ!?」
最初から知ってたからだよ
――
とはもちろん言いません。
「それはおいといて」
「おいとくな!?」
「運動会やったことないってことは、他の行事的なものも未経験なのかなーと」
指摘すれば、視線をふいっと外されました。図星です。
「ならいい機会だし他の行事も体験してみませんか、というお誘いです」
「
………………
別に。き、興味ねぇし」
ぶっきらぼうにそう言って視線を逸らされてしまいました。まぁ、予想通りではある。10年の間、こことは異なる世界で己を押し殺して生きてきたこの子は自分の願望を口にすることはめったにない。簡単に頷いてくれるわけはないと踏んでおりましたとも。
しかぁしっ、既にバッチリ対策済みっ。
「お弁当含め費用はこちら持ちです
――
って言っても?」
「行くっ。しゃーねぇから行ってやるっ」
ふっ。かかった。やっぱり食べ物が絡むとチョロいな。この子を釣るならこの方法が簡単確実手っ取り早いっ。餌付けとか言っちゃあいけません。
「おやつは300円までね」
「バナナはおやつに入んのか?」
「私は入らない派です」
あれはデザートでしょ。
というわけでやってきた遠足でございます。
その場所は
――
「なんでまた動物園に」
色んな動物のモニュメントがお出迎えする入口をぽけーっと見た吠くんが口を開いた。
「遠足の定番といえばここじゃない?」
水族館でも良かったけどやっぱりザ・定番のがいいじゃない。
「そういう、もんか?」
学校行事ほぼ未経験の吠くんはあまり確信が持てないのかやや曖昧だった。まぁ、社会科見学であれば工場見学とかでもいいんだけど少人数だと受け入れてもらえなそうだし。
「そういうものです。
ほらほらせっかく来たんだから楽しまないと損だよー」
「
……
それもそうか」
「そいじゃーレッツラゴー♪」
「おーって、押すな押すなっ」
その後はもうただひたすらにはしゃぎまわった。
キリンやゾウへの餌やり用の野菜や果物を吠くんがこっそりつまみ食いしようとするのを止めたり、狼と何故か張り合おうとするのを宥めたり。
はじめはあまり乗り気じゃなさそうだった吠くんだけど徐々にテンションが上がってきたの気が付けば先に先に駆けていってしまう吠くんを私が追いかけるという構図が出来上がりました。気分は完全にお散歩にはしゃいだ飼い犬にリードに引っ張られる飼い主です。まぁ、楽しんでくれているのならなによりですけどね。
そうして園内を散策していた時だった。とある場所で吠くんの足が止まったのは。
「
……
しろくまか」
ポツリ、と零した吠くんの視線の先へと目を向ける。
そこには、白熊が氷を浮かべたプールの中を悠々と泳いでいた。
白熊
――
その姿に思う所があるんだろう。吠くんはしばらくその姿をじっと見つめていた。
まぁ、色々と強烈な登場の仕方だったし。無理もないか。
何か声をかけた方がいいかと口を開きかけたタイミングで
――
「俺様を呼んだかっ!?」
「呼んでねぇ」
「呼んでません」
突然、なんの前触れもなく降って沸いてきたゴッドネスに奇跡的に私と吠くんの声がハモりました。
「確かに真白さまと呼ぶ声が聞こえたのだがな」
「どんな耳してるんだよお前
……
」
ふむ、と唸る自称神様(未定)に呆れた様子の吠くん。その傍らで私はというと、苦笑いが止まりません。や、マジでどっから湧いてきたし。
「そういうお前達は何をしている。デートというわけではなさそうだが」
「でっ
……
!」
「違いますよ。今日の私は引率の先生のようなものです」
自称神があらん方向に邪推されたので、スパン、と速攻で否定しました。すると、何故かがっくりしてる吠くんとそんな吠くんのことを残念な目で見るゴッドネスさん。
「うるせぇっ。そんな目で見んなっ」
はて、なにか可笑しなことでも言っただろうか? まぁ、それはさておき。
「それより、貴方はここで何をなさっておいでなのですか?」
「世直しが必要な場所に熊手真白様ありだっ」
「なら、あちらで泣いているお子さんと困っているお母さんをお助けしてきては如何です?」
私の指摘に世直し(金儲け)のチャンスと踏んだのか、相方であるべアックマがびゅーんと勢い良く飛んでいく。
止めに行ったのか便乗したのかわからんけど、自称神様もその後を追っていった。
世直し終了を待つ理由もないんで吠くんに行こっか、と短く声をかけて歩き出す。背を向けてしまったから、吠くんが何やら考え込んでいることに気付かなかった。
なぁ、と呼び止められて足を止める。
「なに?」
「
……
思い出した。小さかった頃に家族でここに来た」
振り向きざまにいきなりそんなことを言われてきょとり、とする。
「もしかして、知ってたのか。俺が。家族でここに来たことあるって」
真剣な様子でじっと見てくる吠くんに、小さく笑う。
「まさか。君の思い出は君だけのものでしょ。
私が知ってるわけない」
そう告げれば。何故だかちょっと残念な顔をされた。
いくら私がちょいと特殊な存在であっても人の思い出全てまで知ってるわけじゃない。そこまでいったらそれこそ神の領域だろう。
吠くん、と。短く呼ぶ。
「まだ、自分の命に価値はないって、思ってる?」
続けた問いに吠くんは目を見開いた。
「
……
あぁ。思ってる」
その答えにちょっとだけ眉を下げる。まぁ、10年もその考えを持って生きてきたからそう簡単には変わるわけもない。
そう思っていたのだけれども。吠くんのでも、という言葉に続きがあるらしいと悟って聞く姿勢を見せる。
「ここで生きてくのも、悪くねぇのかも、とも、思ってる」
「
…………
そっか」
驚きで目を見開いてそのままちょっと伏せた。
お金も夢もなくても困るものじゃないけど(や、お金は大事ですよ誤解なきよう)、生きることだけは諦めないでほしい。そう思っていた。少しでも、そう思ってくれているのなら。
「
……
それなら良かった」
顔を上げてにんまりと笑えば。照れくさかったのか、吠くんはぷいっとそっぽ向いてしまいました。うーん、かわいい。
「休憩しよっか。ちょうどご飯時だし」
「弁当っ」
ご飯の話題になった瞬間、耳としっぽをぶんぶか振ってる幻想が見えました。やっぱりわんこだなぁ、と思ってしまうの、しょうがないと思います。
休憩スペースを見つけてテーブルの上に容易してきたお弁当をずらりと並べました。
おにぎりに卵焼きに唐揚げにウィンナー、と。お弁当メニューのザ・定番をラインナップしてみました。
出した瞬間に吠くんから、おぉぉぉっ、と感嘆が漏れたのでこちらとしても頑張った甲斐があるというものですっ。約得っ。
「
……
美味そう
……
」
「好きなだけ食べてどうぞ?」
今にも涎が零れ落ちそうな勢いでガン見する吠くんに苦笑しながらそう告げれば、吠くんの瞳がもう、これでもか、というくらいキラッキランランに輝きました。普段はパンの耳がメインでロクに栄養とれてなさそうだし。こんな時はしゃんと食べてもらいたいですしね。
そう思っていた矢先
――
「弁当にははちみつだっっ」
「ちょおぃと待ちなぁ自称神様ぁ?」
今まさに、はちみつを大量投下しようとしやがりました自称神様の頭をぐわし、と掴みました。だから、どっから湧いてきたのよっ。
「自称じゃねぇ。正真正銘神だっ」
「まだ今回のチャンピオンじゃないでしょう。自称が妥当です」
それより、と口火を切る。
「自称神様、はちみつはフランス料理が至高だったのではありませんか?」
「全ての料理にはちみつがけは至高だっ」
どやぁっ、と胸を張る自称神様に思わずにこーっと笑顔を浮かべます。その、瞬間、何故だか吠くんがびくっとしたように見えた気がしたけど、気の所為ですねうん。
えぇえぇ。人の嗜好にとやかく言うつもりはありませんよ? だがしかしっ。その嗜好を他の人にも強要するのは如何なものかと思いますっ。
これはどうやらオハナシアイが必要と判じた私は自称神様にとびっきりの笑顔で詰め寄ります。それに対して、全く怯むことなく応戦してくる自称神様。神を目指してるだけあって折れる気配ゼロでございます。えぇい厄介なっ。
「
……
なぁ、食っていいのかこれ?」
私と神様のガチバトルが繰り広げられる真ん中で、お預けを食らったわんこ、もとい吠くんが独り涎を零しながらお弁当をじっと見ていたのでありました。
その後。
いやさかさんに遠出するなら前もって伝えなさいっ、とどやされたり。
元アイドルさんになんだか生暖かい目で見られたり。
パリピのお爺ちゃんには何故自分を誘わなかったのかと若干拗ねられたり。
ハイクラス探偵さんからはどうせ行くならお化け屋敷でしょっ、と突っ込まれたり。
挙げ句にはどっから嗅ぎつけてきたのか、ぼくの吠と遊びに行くとはいい度胸だねぇ、と奇襲をかけられたりとしたのだけれども。
それは全て余談であります。
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