三毛田
2025-06-20 22:13:26
1065文字
Public 1000字4
 

29 029. きっとこの先、一生

29日目
君には敵わない

 好きな人を越えられる気がしない。
 まだまだ成長の余地はあるのだろう。だが、勝てない。と感じる部分は多々あって。
 貪欲に知識を求める、学者モードの彼を見てしまうと、特にそう思う。
「Dr.レイシオの話は、聴いていて飽きないな」
「それは光栄だ。僕も、君のように熱心な生徒がいると、教鞭を振るっている甲斐があるものだ」
 二人なりにわかり合えるものがあるのだろう。俺となの、どうしてか列車に訪問していたアベンチュリンまでもを置いてけぼりにして彼らはずっと話している。
 内容? 訳がわからなくて、右から左だ。
「なんでいるんだよ」
「その言い方はさすがにひどくないか?」
「カンパニーの幹部って暇なの?」
 なのの言葉に、アベンチュリンの頬が引きつる。
「違うよ。目的地の途中に、君たちの列車がいたからね。急ぎじゃないからとホテルもまだ決めてなかったからちょうどよかった」
「姫子とパムには断ったのか?」
「姫子とパムがいいって言ったなら、ウチらは文句言わないけど」
 ね~? と、顔を見合わせる。
「なんていうかさ、俺、丹恒には一生敵わない気がするんだ」
 口へクッキーを入れながら告げると、アベンチュリンは不思議そうにこちらを見て。
「君でもそんなことを思うんだね、マイフレンド」
「まあ、色々とね。丹恒の方が年上だし、知識豊富っていうのもあるけど」
 それにだって。
 恋ってさ、惚れた方が負けじゃん。
 丹恒にベタ惚れの俺が、勝てるわけじゃないんだって。
「惚れた弱み。かな?」
 そう言うと、なのから痛い子を見るような視線を向けられた。なんだよ。
 ついでにウインクしてみたら、ドン引きされた。
「お前たち、何の話をしているんだ」
「丹恒。レイシオはいいのか?」
「これから休憩だ。僕は風呂に入らせてもらう」
「いいよ~。あ。俺の部屋の風呂を好きに使って。広いから」
「ああ。借りることにしよう」
 パーティー車両の二回だと告げると、そちらへと向かって。
 ちゃんと掃除をしたから、大丈夫だろう。
「丹恒、ぎゅ~して」
「お前……仕方ないな」
 アベンチュリンを横目に、ちょっとだけ躊躇いがあった。でも、結局抱きしめてくれて。
 ヒュー! って口笛。そこには、揶揄う音。でも、口にはしない。
「Dr.レイシオが風呂から出たら、アーカイブの案内をする予定だ。だから、今晩は一人で寝てくれ」
「えー」
「え。二人は、いつも一緒に寝ているのかい?」
 驚いた声が聞こえるけど、無視。
「終わるまで起きてる」
「無理だ」