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A4
2025-06-18 23:12:16
4082文字
Public
助手2号のお兄ちゃんのイトアキ
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魔法を解くには/ 助手2号のお兄ちゃんのイトアキ
ご都合侵蝕による12cmのサイズになったチャンピオンと助手2号のお兄ちゃんのラブコメ。
ホロウでのエーテル侵蝕による状態異常でライトが大変なことになったらしい。
いつものRandom PlayのバックヤードでFairyとリンの帰りを待っていたアキラは、リンの知らせを受けて、バイクで郊外に向かった。車はリンが使っていたから足がこれしかなかった。
数時間かけて到着すると、チートピアに呼ばれた。店内には他の客はおらず、カリュドーンの子のメンバーが座ってアキラを待ち受けていた。
「もう一人のプロキシ〜、待ってたぜぃ」
いつものけだるげな調子でパイパーが言う。
アキラは軽く会釈しながら近づいた。
そこにはライトの姿はなかった。
「お兄ちゃん、ごめんね、急がせちゃって」
「構わないよ、リン。それで、ライトさんは?」
「あのね、びっくりしないで」
「うん」
「すごく驚くと思うけど」
「一体、なんの前振りなんだい。驚けばいいのか、どっちなのかな」
アキラは顔をしかめた。緊急事態だというから飛んできたのに、なんとなく、ここにいるアキラ以外の面々は期待に満ちた目でこちらを見ている。
「もう一人のプロキシちゃん、はい、ライトだよ〜!」
バーニスが自分の胸をばーんと張った。アキラはそこを見るのはどうかと思い目をそらそうとしたが、すぐに視線を戻した。バーニスの形の良い胸に釘付けになったのではない。胸の谷間であぐらをかいている小さなライトを目に留め、言葉を失った。
こういうときのアキラの理解力は早かった。
エーテル侵蝕による状態異常。
つまり、小型化。
これまでフィクションの多くで扱われてきた題材だ。
「あれ、あんま驚いてねえな」
シーザーが怪訝な顔で言う。
「いや、驚いてるよ。とても。すごく」
「もっと、声を上げたり、転んだりしてほしかったかも」
「もう一人のプロキシさんは冷静ですわね」
「だから、驚いてるって」
アキラはいいながら顔をほころばせた。
ライトは手のひらサイズになっていた。そして、いつもと違う服を着ていた。
「それはわたくしの幼少期の頃に遊んでいたお人形さんのものですわ。急遽、実家から取り寄せましたの」
「グラサンは俺のだ」
「靴はさすがにサイズが合うのがなかったから裸足なんだよ」
リンによると、エーテリアスの攻撃から皆をかばって、規定量をオーバーしたエーテルを一時的に浴びてしまい、中和剤を打たないうちに、ぽんっと魔法のように服だけを残してライトが姿を消したらしい。そのときホロウに入っていたルーシー、シーザー、リンは慌てたが、か細い声を頼りに探してみると、赤いマフラーにくるまった小さなライトがいたというわけだ。
「さすがにお人形扱いしちゃかわいそうだろ。だから、男のあんたに来てもらったってわけだ」
プルクラがため息をついて言った。
「お兄ちゃん、数時間で戻るらしいから、それまでライトさんの側にいてあげて」
「よし、これで肩の荷が下りたってもんだ、みんなアイアンタスクで一杯飲もうぜぃ」
「じゃ、よろしくな!」
バーニスがライトの体をそっとつまんで、テーブルの上に移動させた。
そして、アキラとライトを残して、シーザーたちはどやどやとチートピアを出て向かいのアイアンタスクに向かった。
「
…………
」
アキラは席に座ると、テーブルに頬杖をついて、腕組みをして立っているライトを見つめた。
いつもの赤いマフラー、革ジャンではなく、白いシャツにスラックスという、都会のビジネスマンといった装いは新鮮だった。小さくなっても筋肉は健在なのか、シャツは少しばかりきつそうだった。
「災難だったね、ライトさん」
アキラは小さな声でささやいた。ふつうに喋っても、ライトにはうるさいだろうと思ったのだ。
「まったくな」
「早く戻れるといいね」
「よくある状態異常らしい」
「そうなのかい? フィクションの中だけだと思っていた」
「明日には元に戻る」
「じゃあ、それまで僕にお世話させてくれるかな」
「あんたには面倒ごとだろう」
「そうでもない。リンに付き合っておままごとはよくやった」
「俺の世話はおままごとか」
「ああ、違うよ、いつものお礼を込めて、スペシャルサービスをしよう」
「なんだそれ」
「いつものあなたには僕が絶対にできないことだよ」
言って、アキラはライトの足下に自分の手のひらを指しだした。
「どうぞ、乗って」
「
…………
」
ライトは肩をすくめて手のひらの上に足を乗せた。ハムスターのような重みに、思わず顔をほころばせてしまう。アキラはそうっと手を動かしてジャケットの胸ポケットにライトをおさめた。
「バーニスの胸よりは居心地がよくないかも」
「やめてくれ。あれだってセクハラだ」
「きわどかったよね」
「あいつはいつもああいう感じなんだ」
「ライトさんはカリュドーンの子に弱い」
「まったくな」
アキラは歩くときも注意した。上下に揺れが激しいと気分が悪くなってしまうだろう、そう考えたのだ。ライトは胸ポケットから顔をのぞかせていたが、ブレイズウッドの住人の姿を見つけると、ポケットの中に隠れてしまった。
アイアンタスクからは楽しそうな笑い声が聞こえてきたが、アキラはそちらには足を向けず、ライトの住まいに行った。コンテナを改造した部屋で、これは最近、ライトが寝床にしているところだ。常にブレイズウッドにいるわけではないので、カリュドーンの子は仮住まいをよく変えている。
一度だけここに泊まったことがあり、アキラは後付けのポストの裏側に手を差し込み鍵を取り出した。不用心だと思うが、ライト曰く、何も財産を置いていないので、誰が入ろうと構わないのだという。
ドアを開くと、蝶番が軋んだ音を立てた。家具は木製のテーブルと椅子、簡易ベッド、それに小さな冷蔵庫だけ。最低限のものしか置かれていない。アキラはベッドに腰掛けた。スプリングがへたっているのか、体が沈んでしまう。ライトはこんなマットレスで寝ているらしい。腰を悪くするのでは、とやや心配になる。
「ライトさん?」
アキラは指でポケットの口を広げ、中をのぞき込んだ。
ライトは膝を抱えて丸まり、眠っていた。
アキラは思わず息を呑む。
こんな無防備な姿を見るのは初めてだ。
なんとかカメラにおさめたかったが、かなわなかった。
すうすう小さな寝息を立てているライトを起こすなど、アキラにはできなかった。
明くる朝もライトは小さな体のままだった。
アキラはおはようの挨拶とともに慰めの言葉をかけ、パンくずをライトの口に持って行った。ライトは顔をしかめて「小鳥じゃない」と言った。
「体の具合はどう?」
「悪くない。よく寝たからすっきりしてるな。あんたのことを放っておいて悪かった」
「構うもんか。体に異変があったんだから疲れていて当然だよ」
「しかし、これはいただけんな」
しぶしぶパンくずを頬張りながら、ライトはむすっとしていた。
アキラは、昔のことを思い出す。へーリオス研究所の部屋になら、リンのドールハウスが残っているのに。今や跡形もなくなっているだろう。
プルクラが持ってきてくれた朝食のバスケットから牛乳瓶を取り出す。指ですくってライトの口元に差し出すと、ライトは首を背けた。
「やめてくれ」
「何か飲まないと」
「この方法は嫌だ」
ライトの均整の取れた体は人形サイズになっても遜色なかったが、やはり迫力には欠けていた。何をしてもかわいく見えてしまう。
「どうにかして、元に戻るのを加速できないかなあ」
「できたらとっくに昨日のうちにやってるだろう」
観念してライトはアキラの指先をぺろぺろ舐めたが、よほど屈辱だったらしく、肩を落としている。
アキラは思案する。
「古典的な方法だけど、試してみよう」
「何があるんだ?」
「うん、ライトさん、目をつむっていて」
アキラはライトをテーブルの上に立たせた。ライトは素直にまぶたを閉じた。
古今東西、魔法を解くにはこの方法と決まっている。
アキラはそうっと顔を近づけて、唇でライトの顔に触れた。あまりにサイズが違うのでどこが彼の唇だか、わかりはしなかった。
エーテルの波が動く。虹色の光が放たれて、アキラは驚いた。
彼を慰めるための方便だったが、タイミングがよかったようだ。
テーブルから落ちたライトは墜落することもなくきれいに着地して、元の姿に戻った。
「ライトさん、痛いところはない? 何か異常を感じる?」
「いや、ふつうだ」
「早く医者に行こう。あと、みんなに戻ったよって知らせなきゃ」
「慌てなくていい」
「そうはいかない」
「アキラ」
プレハブハウスを飛び出そうとするアキラの手首を掴んでライトが呼び止める。
「あんたの魔法が効いたみたいだ」
にやりと笑われて、アキラはばつが悪くなった。顔も熱くなる。
こうして戻った今となっては、キザな物言いだったと恥ずかしくなった。
「たまたまだよ」
「そうか?」
「ライトさん、服を着て」
「ルーシーお嬢様の大切な服が粉々だな」
「仕方ないよ
……
」
ライトはアキラを引き寄せ、覆い被さってきた。おとがいを掴まれて口づけされる。乾いた唇が何度も触れて、アキラはくすぐったくなった。そして同時におかしくなる。フィクションの世界ではうまい具合にシーンを変えていたが、現実だとこうなのだろう。全裸で戻る羽目になる。
「ライトさん、後でちゃんと、相手するから」
「本当だな?」
「あなたが欲求不満なのはわかった」
「待て、そうじゃない」
「じゃないとこんなにがっつかないだろう」
「あのな、俺は嬉しくて
……
」
「はいはい。さあ、本当に服を着て。まずは医者。その間に僕はみんなに伝えてくるから。健康状態をチェックして異常がないかわかるまで、僕には近づかないでほしい」
「昨日のやさしさはなんだったんだ?」
ライトが睨んでくるが、アキラは肩をすくめて返した。
魔法がかかっている間は、ああいう風に接するものなのだ。
そうして、とりあえずライトの機嫌をなおすために、もう一度、キスをした。
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