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溶けかけ。
2025-06-18 23:03:43
4451文字
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ほぼ日刊
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雨音はやがて
なろうによくある獣人×番の人間パロディです。
※フリーナへの奴隷、強カン・暴力描写などを含みます。
倫理観はゼロです。
R-18
この世界には獣人と呼ばれる人たちがいる。彼らは弱い僕ら人間とは違って、強く賢く気高い種族だ。
では、人間とはなんだろう?
答えは簡単だ。獣人の足元にも及ばない、弱く愚かで卑しい種族だ。少なくとも、僕はずっとそう言われて生きてきた。だから、きっと正しいのだろう。
「フリーナ」
今のご主人様が僕の名前を呼んだ。
ああ
……
また、暗くて、怖くて、痛いだけの夜が始まる。
「ゔっ
……
うぇ
……
」
「いつになったら上手くなるんだ」
喉の奥に無理矢理押し込まれていた男根が抜かれる。胃の中に流し込まれたものと胃液が混ざりあったものがこみ上げてきて気持ちが悪い。
「ちっ
……
静かにしてくれ。萎えるだろう」
嘔吐いていれば、口を塞がれ、上に伸し掛かられた。先程まで喉の奥にあったものが今度は僕の腹の中に押し込まれる。
「ああああっ
……
」
ご主人様のものは太く長い。僕の腹を突き破らんばかりに大きくなったものが動くたび、内臓が押し上げられて苦しくなる。
「良い声で鳴くようになった。それでこそ、私のフリーナだ」
ご主人様はにんまりと笑みを浮かべると僕の唇にキスを落とす。教えられた通りに口を開けば長いねっとりとした舌が腔内を犯していく。
「お前はどこにも逃げられない。私に縋って生きる以外に人間にまともな生き方が出来るとは思わないことだ
……
」
ご主人様の言う通りだ。人間は人間同士で争い合い、その数を極端に減らした。一時は隆盛を極めた種族であっても一人が人間の兵士十人に値すると言われる獣人には全くと言っていいほど歯が立たなかったという。僕はそんな希少な種族、人間の数少ない生き残り、もしくは末裔ということだ。
数少ない人間は獣人の間では高値で取引されている。一応、人間を保護する法律というものもあるらしいが碌なものではないのだろう。
「
……
何を考えている」
「──何も
……
あっ、ぐっ
……
!」
抽送が更に激しさを増す。ご主人様は僕とするのは気持ちがいいと言っているがこんなのはただの地獄だ。いや、終わりがあるだけ地獄の方がマシかもしれない。
「出るっ
……
!」
「っ
……
!」
小さな体がベッドの上で圧し潰される。熱い迸りがフリーナの中に波となって押し寄せてきた。
フリーナにとって、人間が獣人との間に子供を作りにくいというのは幸運であり、不幸でもあった。
「逃げられるわけがないだろう?」
目を覚ましたフリーナは自身の首に巻かれた首輪から繋がる無骨な鎖を手に取って歪な笑みを浮かべた。結局、フリーナが解放されたのは朝になってからだった。行為中は外される鎖と首輪も行為が終わればいつも元通りになっている。
フリーナの存在は愛玩動物と同じものであった。飼い主の気まぐれで餌を貰い、服を与えられ、芸を仕込まれる──フリーナはそこまで考えて頭を振った。餌を毎日三食貰えて、夜伽もない愛玩動物の方がよほど愛されている。
「────痛いなぁ
……
」
昨夜交わった場所は勿論のことだが、今の飼い主はフリーナの苦痛に歪む顔が好きらしい。おかげで体中傷だらけだ。
「痛い
……
」
フリーナが寝返りを打つ。何度か折られた足では寝返りすらまともに打つことが出来ない。
「
……
でも生きている」
フリーナは胸の前で両手を抱くと小さく丸くなった。繊細なレースから見え隠れする変色した腕を見て小さく笑みを溢した。次から次へと増える傷はきっと消えることはないのだろう。
「おやすみ、フリーナ」
体がベッドに沈み込む感覚に襲われる。ああ、このまま目が覚めなければいいのに──そんな叶わぬ願いを抱きながらフリーナは眠りについた。
「な、なにごとだい!?」
フリーナは突然の爆音に飛び起きる。ドォン、ドォン、と地響きのように鳴り続ける音は遠く離れたフリーナの部屋にまで届いてきて窓をビリビリと震わせた。
「何が
……
」
おそるおそる窓に近づき、外の様子を窺う。未だ鳴り止まぬ爆音の中には人の怒号や悲鳴が混ざり合い、耳が痛くなるほどだ。
「取り敢えず、逃げなきゃ
……
」
フリーナは窓から離れ、壁を頼りに扉を目指す。
────ドン!
一際大きな爆音が鳴り響き、部屋全体が大きく揺れた。
「うわぁ
……
!?」
揺れた拍子にフリーナは床へと転がる。重い鎖がじゃらりと音を立てた。
「いっ
……
!」
フリーナはその場に蹲る。立ち上がろうにも折られた骨が軋むように痛みを訴え、立つことすらままならない。
人々の足音が聞こえてくる。
何があったのかは分からないが一つだけフリーナでも理解出来ることがあった。
「また、棄てられたんだね
……
僕
……
」
別に珍しいことではない。獣人にとって、人間の奴隷は都合の良い玩具でしかないのだから。そもそも人間を飼っている獣人が真っ当なはずもなく。彼らは何か都合が悪くなればすぐにフリーナを切り捨てた。前の主もその前も──そのもっともっと前も。賭けの景品であったり、違法な行為を見逃すための賄賂であったりと
……
理由は様々だ。
「ハハハッ
……
! アッハハハ
……
!」
ああ、おかしい。おかしくて堪らない。
身体は恐怖で震えているのに、古傷は痛むのに、それなのに頭だけは気持ちが悪いくらい冷静で。
笑うフリーナの耳に足音が届く。どうやっても開かなかった扉が勢いよく開いた。
──さあ、笑え。新しいキミの主の登場だ。
「初めまして、ご主人様。僕はフリーナ。夜伽も演技も誘惑も
……
一通りは熟せるよ。殺しはまだしたことはないけれど、キミがお望みとあらば、王様だって殺してみせよう。──キミは僕に何を望む?」
昨夜引き裂かれたままのネグリジェの端を摘み、片足を斜め後ろに引いてお辞儀を一つ。
不思議なもので、幼い頃から叩き込まれた動きは有事の際にも出来るらしい。その証拠に痛みを訴え、立ち上がりすら出来なかったはずの足はこうして機能している。
「君は
……
」
入ってきた男性が息を呑む。頭を垂れる前の僅かな間に盗み見た顔は僕の見てきたなかでも一番美しかった。きっと、それだけ力の強い獣人なのだろう。今のご主人様も整った顔立ちをしていたが彼の足元にも及ばない。肉食系の獣人──そのなかでも上位となると貴族でも王族の直系や傍系になるのではないだろうか。
「頭を上げてくれ
……
」
震える声で男性は僕にそう言った。言われた通り頭を上げれば温かなものに包まれた。
「帰ろう
……
フリーナ──私の番」
──どこか懐かしい声。枯れたと思っていた涙が溢れ出す。
「キミは
……
だれ
……
?」
僕がそう問いかければ彼は悲痛な面持ちで僕の頭を撫でた。
「私は──」
男性が口を開きかけたとき、遠くから人の声がした。僕には聞き取れない音の羅列も彼にはちゃんと言葉として聞こえたらしい。
「
……
呼ばれてるみたいだよ」
「もう少しだけこうしていては駄目だろうか?」
「僕に決定権はないよ。キミが主人なら僕はキミの命に従うまで。──だって、人間はキミたちの愛玩動物だからね。ペットの機嫌を伺う飼い主がどこにいるって言うのさ」
笑ってみせたつもりだが、どうにも上手くいかなかったらしい。彼は更に表情を曇らせた。
「共に行かないか? 私ならば君を自由にしてやれる」
僕の眼前に大きな手のひらが差し出された。
──自由?
フリーナのなかで疑問が鎌首を擡げた。
「
………………
」
手を差し出せば、凍りついたように立ち尽くすフリーナを見て、ヌヴィレットは内心で溜息をついた。
やはり、時期尚早であったのだろうか。
違う雄の香りを色濃く残す彼女の瞳には何の感情も浮かんでいないように見えた。
「フリーナ」
ヌヴィレットが名を呼べば青い色違いの瞳がこちらを見つめる。首に繋がれた鎖が耳障りな音を立てた。
──あぁ
……
不愉快だ。
ヌヴィレットはフリーナの首元で存在を主張する鎖を水の刃で一太刀のもと斬り捨てた。本来ならば、首輪も引き千切ってやりたいところだが力加減を間違えて彼女を傷つけたくはない。こちらは安全な場所で外す方がいいだろう。
「
…………
」
「
…………
」
待てど暮らせどフリーナからの返事はなく。流石のヌヴィレットもこれには焦れた。
「ひとまず、君を保護しよう。今の君に必要なのは自由より安心安全な寝床と温かな食事のようだ」
フリーナから体を離し、僅かに手を上げる。
「
……
っ」
頭に手を置けばフリーナの様子が僅かに変わった。顔は青ざめ、呼吸が浅くなり、涙の膜が瞳を覆う。──だが、それも瞬きの間のことでフリーナは元の無表情に戻っていた。
「昔は
……
もっと笑っていたのだがね
……
」
「
……
?」
首を傾げるフリーナに首を左右に振って何でもない、と返す。華奢な体を抱き上げれば、羽根のように軽かった。
「私の名はヌヴィレットという。君の
……
君の後見人とでも言っておこう」
ヌヴィレットは言葉を飲み込む。彼女が自身の番であることは終ぞ言うことが出来なかった。
何処に行くの? ──フリーナは浮かんだ疑問を口にはせずにじっとヌヴィレットを見つめた。端正な顔は目が合うたびに優しく微笑んで「何か?」と尋ねてくる。
「ううん。何でもない」
さっと目を逸らし、それから顔を青くさせる。主を不躾に見ること、主の話を遮ること、どちらも礼を欠いた行いだからだ。
怒られてしまうかもしれない──恐怖が身体に絡みつく。体を硬直させたフリーナの背を温かな手が撫でた。
「大丈夫だ、フリーナ殿」
根拠のない大丈夫。きっと彼はフリーナが何を恐れているのか怯えているのかなんて少しも知りはしないはずだ。
──それなのに。
(なんでこんなに安心するんだろう
……
?)
ぽん、ぽん、とあやされるように添えられた手や一定のリズムを刻む心臓の音が妙に心地良い。
(だめ、なのに
……
)
目蓋がずっしりと重みを増す。フリーナはゆっくりと意識を手放した。
「
……
眠ったか」
少しだけ重さを増した体にヌヴィレットは安堵する。目の下に色濃く居座る隈は睡眠がとれていない証拠だろう。軽い身体もまともな物が与えられていなかったことは明白だ。そして何より──引き裂かれた衣服と咽るほど濃い雄の匂いに治療された形跡のない傷。
「どうやら
……
法を軽視している者が多いらしい」
ヌヴィレットの口の端が吊り上がる。
人間保護法が布かれて早五年。未だ、違法な人間の売買は後を絶たず、それに伴い、獣人に良いように扱われ心を壊す人間も少なくない。
「遅くなってしまってすまない」
ぼろぼろの体を抱きしめる。
これは一生、償っていかなくてはならない罪なのだと刻み込む。──赦されようなど思うことすら烏滸がましい。
「すまない
……
フリーナ
……
」
掠れた声でヌヴィレットは謝罪を繰り返す。
降り止まぬ雨が二人を濡らした。
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