三毛田
2025-06-17 22:03:10
1080文字
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26 026. どんな言葉なら、君に届くのだろう

26日目
早く届いて欲しい。願うことしか出来ない

 下手な慰めも、心を込めた愛の言葉も、きっと彼には届かない。
 どうしてか、それだけはわかってしまって。
 触れようと、抱きしめようと伸ばした手は途中で止まってしまう。
 彼はそれを望んでいないと、気づいてしまうから。
「丹恒〜」
 きちんと、彼が何も持っていないとか作業をしていないか確認してから、抱きつく。
 こういう時は、手を伸ばして触れたり、抱きついても大丈夫。
 経験で分かっている。
「どうしたんだ。甘えたいのか?」
 優しく、俺を甘やかすような声色。
 本当は、俺が丹恒にそうしたいのに。それを許してくれない。
「少しだけ。駄目?」
「駄目なら、突き放している。俺も少しリラックスしたかった。ほら」
 振り返り、腕を広げて。だから、そっと抱きつき直す。
「丹恒、大好き」
「お前はいつもそれだな。だが、悪くない」
 少しだけ、好意を伝えることだけ許してくれて。受け入れてくれて。
 でも、それだけ。
 丹恒への好意は、隠していないからみんなが知ってる。
 応援してくれる時もあるし、ちょっと呆れてる時もあるけど。でも、結局二人きりになる機会を作ってくれたり。
「丹恒の胸、今日も最高です」
「胸だけか?」
「ううん! 頭のてっぺんから爪先まで、全部大好き!」
 ああ、まただ。
 こういう風に好意を伝えると、困ったような哀しそうな、何かを諦めたような。そんな表情。
「丹恒?」
「何でもない」
 首を振って否定するけれど、辛そうなのが、俺でもわかってしまう。
「俺じゃ、頼りない?」
 思わずそんな声が出てしまった。
「そんなことない。そんなことないが……これは、俺の心の問題だ」
 そっと左胸に手を添えて、首を横に振って。
「丹恒が、俺が伝える好意に耐えられるようになるまで、ずっと伝えるから」
「穹」
「覚悟しておいて」
 体を離し、左胸に当てていた手を取って指先にキスをする。
 それから、宣言通りに一日一回彼へ好意を伝える日々が始まった。
 列車のみんなには、こういうことをするけど気にしないでくれと伝え。
 そしたら、皆に生温かい目を向けられた。
 皆、俺が丹恒を好きだと知っているから、結構積極的に手伝ってくれて。
「ありがとう」
「どういたしまして。はい。デザート頂戴ね」
「うぐぐぐ……
 今日もなのに手伝ってもらったので、歯ぎしりしながらデザートを渡す。
「ほら」
 その様子を見た丹恒が、俺にデザートをくれて。
「たんこ~!」
 抱き着くと、肩が跳ね。でも、今日は拒絶しないでくれた。
 暫くしたら受け入れてくれそう。