ふみかぜ@壁打ち
2025-06-16 22:53:19
4575文字
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【読切ドラロナ】デイライト・タイムライン【無配再録】

6/15の読切ドラロナオンリーありがとうございました! こちらは無料配布本の再録です。
昼ふかしした読ドが読ロとトークする話。平和で仲良し。
いつもより改行多めでお送りします。web投稿するにあたって地の文と会話文を入れ替えていますが、文章自体はほぼそのままです。

『ロナルドくん
 起きてる?』
 ――スタンプを送信しました

 晴れ渡った青い空が広がるお昼時。自身の退治事務所でカップ焼きそばを食べ始めたロナルドは、机の上に置いたスマホからRINEのトーク画面を眺めていた。時折箸を焼きそばの容器に立てかけ、スマホをタップして返信する姿は、世間に見せる退治人ロナルドの姿と比べて俗っぽく、少々行儀も悪い。

『今何時だと思ってんだ』
『0時だね』
『正午のな
 なんで起きてんだよ吸血鬼例のクソゲーか?』
『攻めチャートの通し練習してたらこんなことに』
『アホか
 よく死んでないな』
『実はついさっきまで死んでいた
 復活してすぐ棺桶に入ったが、妙に目が冴えてて』
『寝ろ』
『そうする』

 スタンプを交えながら中々途切れず続いていく会話文。その向こうにいるのが完全夜行性の高等吸血鬼だと思うと、何だか不思議な気分だ。
 最近、またクソゲーのリアルタイムアタックに没頭している様子だったが、お天道様が昇りきるまで続けるとは。二人プレイ可能だからとロナルドも一度誘われたが、酷い操作性に多様なバグ、不快感を煽るキャラクターや不気味なノイズで精神をやられて五分も経たずにコントローラーをぶん投げた記憶がある。それでいてRTAの走者は片手以上の数は存在するそうだから、世の中ってのは不思議だ。
 ドラルクも奴なりに楽しんでいるなら結構だが……近いうちにまた退治に連れて行く予定なのだから、程々にして欲しいものである。

『今夜うち来る?』
『気が向いたら』
『昨日の夕方、シチューたくさん作ったんだよね
 食べにおいでよ』
『白いのか?』
『タンシチュー』
『茶色いのか』
『そういう覚え方しているの?』

 白いのでも茶色いのでも、ドラルクのシチューは美味い。どうにか食べに行く時間を作りたいところだ。

『お昼食べた?』
『寝ろって言ってんだろ
 いつまで起きてる気だてめぇ』
『うーむ、眠気はあるのだが寝ようって感じにならん
 あとロナルドくんって基本自炊しないだろう?
 昼間ちゃんと食事を摂っているのか気になってね』
『失礼だな』

 焼きそばが残り五分の一になるまで時間が経過したが、ドラルクからの返信は途切れる様子はなかった。どうやら中途半端なタイミングで長時間の死を経たせいで、寝入ることができずにいるらしい。
 人間に例えるなら、夜の少し早い時間に仮眠したせいで本来睡眠すべき時間に寝れなくなっている感じだろうか。ロナルドにも覚えがあり過ぎる感覚である。吸血鬼の振り見て我が振り直せってか。
 さて入眠失敗した吸血鬼は退治人の昼食が気になるそうなので、ちょうど今食べている超大盛りカップ焼きそばを写真に撮って送ってやる。

『ほらちゃんと食ってるぜ』
『うわ容器デッッッカ!』

 ……大ショックを表現したスタンプが連打され、驚きに満ちた文が返ってくる。別にそんなにビビるもんでもないだろ、激辛でもニンニクマックスでもないし。

『え、うそでしょ、これ何人前?』
『大げさな吸血鬼だな
 せいぜい2倍サイズだぜ』
『2人前かぁジョンには絶対食べさせられないな』

 確かにあの可愛いアルマジロに食べさせるには、塩分がキツすぎるかもしれないが、そもそもドラルクの手料理で舌が肥えているだろう使い魔はコンビニで手に入るようなインスタント食品を食べるのだろうか。チョコやネギ類等を普通に食べている辺り、NG食材はなさそうである。
 今度ドラルクが寝ている合間にカップ麺を差し入れしてみようか。喜んでくれるならよし。

『君もよくそんなに麺ばかり食べられるね』
『俺なんて大したことねーよ
 ギルドの退治人や吸対の副隊長はもっと食うぞ
 5倍サイズを秒で平らげる奴もいる』
『人間こわい
 野菜も食べなよ』
『ちゃんとキャベツ入ってる』
『それは無理がある』

 メシをちゃんと食っているかだの野菜もしっかり食べろだの、どこぞの身内を思い出させるような言葉が鬱陶しくなってきたので、会話を切り上げにかかる。
 実際、これから一時間後に勝手知ったる馴染みの記者が事務所にやって来てインタビューを始める予定だ。

『もう仕事だから付き合わねーぞ
 お前もいい加減にしとけ』
『残念
 今日は昼から仕事なんだ?』
『雑誌のインタビューと写真撮影
 日が沈む前には終わる予定』
『私が起きるのとどっちが早いかな』
『頼むから十分に寝て、死亡回数はリセットさせろよ
 いちいち待つの本当にめんどくさいんだからな』
『ならば君が来るまで眠っていようかな
 今夜はジョンもご近所さんにお呼ばれしているし』

 改めて、ドラルクにはしっかり寝るように念押しをしておく。折角来てやったのに速攻で死んで二、三時間も放置されるこちらの気持ちを考えて欲しい。城には暇つぶしに使えるゲームがいくらでもあるとはいえ、夜明け近くまで一人コントローラー握ってテレビ画面に向き合うのは、何のために訪れたのか分からなくなってしまう。

『ロナルド君、夜食のデザートに何か希望はあるかね?』
『あー
 ホットケーキとか』
『モチモチとフワフワどっちがいい?』
『強いていえばふわふわだが
 両方っていうのはアリか』
『もちろん!』

 こちらの気持ちを知ってか知らずか、一応睡眠の意思は示したドラルクが、今度はデザートのリクエストを尋ねてきた。いいからもう目を閉じろと送りたい気分を堪えて、浮かんだものの中から何となく手軽そうな奴を送る。即座にOKのスタンプが返ってきたかと思えば、今度は傾向の確認。ふわふわと答えてからもう片方の興味を捨てきれずに両方を食べたいと答えれば、あっさり快諾される。

『楽しみにしてくれたまえ
 では、また夜に』
『おやすみ』

 何だか拍子抜けした気分で会話を打ち切り、空になった焼きそばの容器をゴミ箱に放るロナルドであった。



『ドラルク
 起きてるか』

 稀にみる昼ふかしをした後の夜。
 ご近所の方々と天体観測に行くジョンを日が暮れる寸前の六時に見送ったドラルクは流石に二度寝して、次に目を覚ましたのは夜の九時を過ぎた頃だった。身体はそれなりに回復し、死亡回数もリセットされた感覚がある。
 スマホを見てみればロナルドから一時間ほど前に連絡が来ている。急いで棺桶から出て玄関ホールへ向かうも、彼の姿はなかった。何処かの部屋で寛いでいる様子もない。

『いま起きたところ
 ロナルドくん、まだ来ていない?
 もう夜の9時を回っているが』
『シンヨコでちょっと吸血クリオネが大量発生してな
 やっと撤収してそっちに向かってるところだ』
『お疲れさま』

 キッチンへ移動した後、血液を混ぜた温いホットミルクを飲みつつRINEに返信すると、間もなくロナルドから反応があった。どうやら服を溶かして吸血することで有名な下等吸血鬼の群れが、彼のホームである新横浜で暴れていたらしい。
 久しぶりの昼徹で長いこと寝ていたからか、元より戦力として期待できないからか、ドラルクを呼びつけることはしなかったようだ。下半身を食われ、下半身をハイレグ状にされながら死ぬことは回避できたようで何より。

『大丈夫だった?
 服とか服とか』
『ロナルド様がそんなヘマするかよ』

 ロナルドの衣装は無事だったのか聞いてみれば、一分も経たずに問題なさげな答えが返ってくる。

『おい、一応言っておくが
 一旦着替えに戻って遅くなったとかじゃないからな
 変な誤解すんなよ』

 かと思ったら、立て続けに言い訳めいたものが続くのは真偽の判定に迷うところだ。

『なるほど
 うむ、分かっているとも
 ご愁傷さま』
『全っ然分かってねーだろてめぇ!』
『誰かに写真撮られていないよう願っておくよ』
『だから溶かされてねーって!
 そういやお前、結局何時に寝たんだ?』
『流石に2時前には眠ったよ
 こっちには何時頃に着きそうかね?』

 こっちの就寝時間を聞いてくる辺りから苦し紛れの気配を感じたので、彼を慮って別の話題を振ってみる。実際、客人がどれくらいの時間に到着するかは料理を供する城主としては気になるところだ。

『さっき電車に乗ったばかりだからな
 あと1時間はかかると思う』
『ならばサラダを用意して
 まだ余裕あるからもう一品作ろうかな
 何か食べたいものはある?』
『また急に言われてもな』

 聞いてみればタンシチューを温めるだけでは時間が余りに余ってしまう案配だったので、付け合わせの野菜サラダともう一品を作ることにする。

『とりの唐揚げしか浮かばねぇ』
『君って疲れた時は大体唐揚げ食べたがるよねぇ
 または揚げドーナツ』
『文句あるか?』
『ぜんぜん』

 半ば予想していたが、熟考のスタンプを押してからやや間を置いてから返ってきたロナルドの希望は鶏の唐揚げ。
 揚げ物に油はねの危険が付き纏うのは事実。それでも、心身共に疲れただろうに、帰宅ではなくドラルクを選んだ彼をもてなし、存分に労うためなら安いものである。

『揚げたてを食べさせてあげよう』
『おー
 まあ、ありがとよ
 油はねで死ぬなよザコ吸血鬼』
『それなりに寝たから心配ないさ
 血も摂ったし
 ロナルド君こそ道中気をつけて』

 温めたタンシチューは、大きな器へ一杯盛って、唐揚げは皿の上に山盛りになるぐらい揚げよう。ホットケーキはモチモチとフワフワのものをそれぞれ三枚重ねにし、果物とチョコレートソースを添えようか。
 カップ焼きそば二倍サイズを軽く平らげる彼のことだ、気持ち多い程度で構わないだろう。もし余ることがあれば、朝か昼に食べてくれればいい。
 腕が鳴るなと笑い、吸血鬼は料理を始めたのである。



『今回の退治はどんな感じだったのかね』
『話すと長くなるぞ
 大したネタにもならねぇ』
『私は聞いてみたいなぁ』
『仕方ねぇな
 着いたら話してやるよ』
『楽しみだ』

 電車を乗り継ぎ、最寄り駅に着いたところでロナルドはタクシーを捕まえることに成功した。行き先を告げた後は黙り込み、今やすっかり馴染みとなったドラルク城へ到着するのを待つ。
 昼間より生き生きとした返しをしてくる吸血鬼と交わすスタンプと会話のお陰で、殆ど言葉を口にすることのない道中も全く退屈することはなかった。



『着いたぞ』
『えっ
 早くない?』
『タクシー使ったからな』
『ちょっと待って手が離せなくて
 合鍵渡してたよね?
 入っていいよ』

 二度揚げをする直前、到着を報されたドラルクは驚きの声を思わず上げた。予定より二〇分も早いではないか。
 今の状況を放置する訳にはいかないが、このまま門の前で待たせるのもなと迷ったところで、つい先日スペアキーを渡していたことを思い出す。
 既に棺桶の居所も知られてしまっているのだ。そのまま上がり込まれたって一向に構わないのである。



 スマホ越しではやはり物足りない。
「いらっしゃい、ロナルド君」
「おう、来たぞドラルク」
 この面白い男とは、直接顔を合わせてこそである。