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ながとぅ
2025-06-15 19:41:47
4389文字
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ZZZ/ビリイト1W
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ZZZ【ビリイト1W/早々、赤いマフラーより】
ビリイトワンウィーク!!第五弾!毎度お馴染み遅刻野郎です…!!(スライディング土下座)
ちゃんと伏線は拾います!!!!大丈夫、ハピエンです!!!!(まだ終わってない)
お題①: 雨宿り
お題②: 『 』が二人を別つまで
――
雨に、降られた。
初めてパイセンの部屋に泊まる事になった、あの日を彷彿とさせるくらいに強い雨。
またしても天気予報に、加えて郊外の気候に、二重で裏切られた。
今日は楽しい楽しいドライブではなく、所用という名の領土巡視のようなもので、郊外の
――
そのまた郊外まで出ていた。当然、一人だ。
夕暮れ前にぽつぽつと雨粒が当たった段階で気付いた上、雨宿り出来そうな場所が最寄りにあった事だけは幸いだった。おかげで、ずぶ濡れにならなかった。
もし降られて濡れたとしても拠点に帰るには距離があり過ぎるし、かと言って着替えなんて持っている訳もなく、激しい雨に長時間晒されれば風邪を引く気しかしない。
そんな訳でホロウの程近く、遺棄されて久しい廃倉庫で愛車と共に本格的に降り始めた雨を凌ぐ。壁は崩れ、屋根は腐り落ち、窓は軒並みガラスを失ってサッシしか残っていない、基幹倉庫だったであろう建物は見る影もない。
そこここにある雨漏りを避けつつ、倉庫内を散策し、風雨の避けられそうな場所を探す。
「よっ
…
」
二階への階段を上がった先にあった部屋の扉。鍵がかかっていたが、簡単に蹴破る事が出来た。
天井に取り付けられたクレーンらしき重機の操作盤が鎮座しているからか、比較的綺麗だ。加えて、雨風の心配もなく、外の様子も愛車の姿も確認出来る。
朽ちかけたソファの埃を払い、横になった所で雨足が強まっているのか、屋根を叩く音が大きくなっている事に気付く。
――
どうやらこの雨はあの日と同じで暫く止みそうにない。
【早々、赤いマフラーより】
俺以外の生き物の気配がない。
そんな中、雨音だけが聞こえ、暗闇が徐々に世界を、視界を吞み込んでいく。
――
寂寥、空虚、それとも悲歎か。
何とも言えない感情が内側からこみ上げてくる中、シャボン玉のように浮かんで来たのは、以前パイセンから映画に誘われた時の記憶。
パイセンが恋愛モノを選ぶなんて珍しい、そう思っていた。
あくまで“珍しい”
……
俺としてはその程度の認識だったが、今思えばあの人はずっと俺の事ばかり気にしてくれていた。
自分は食べないのに律儀なまでメシに付き合ってくれる。
誘う前に必ず俺がオフかどうか確認してくれる。
パイセン自身も何をしたいと主張しつつも、俺にも何をしたいか聞いてくれる。
思い当たる節はこんなにもあったのに気づかなかったのは俺の落ち度だ。
そういえば、あの時の観た映画、クライマックスで機械人は何と言っていたんだっけか。
「『 』が二人を別つまで
……
」
あれやこれやといくらか候補が挙がり、映画館を彷彿とさせる真っ暗闇の中で何度か口に出してみるものの、どれもこれも決定打にはならない。
出てきそうで、出てこない。上手く思い出せない事がもどかしい。
そもそも、あの時、俺は映画を観ながら何を考えていたんだったか。
まぁ、重要そうなセリフを思い出せない時点で映画ではなく、別の何かを考えていたのは間違いないだろう。
その別の何か自体も思い出せないんだが。
「やれやれ
…
」
口にしようと思っている言葉と、口から出た言葉の相違。
伝えようとしている表情と、実際に顔へ出る感情の相違。
まるで心と身体が分離したかのような現象。
問題は、この現象を直接他人に伝える術がないと言う事。
とはいえ、突然特定の記憶を失う、あるいはすり替わるという事態は、侵蝕症状の延長
――
つまり、後遺症なので時間が解決してくれるから大丈夫だろうというのが医者の見立て。
表向きである身体に戸惑っている様子がないせいで、心としての俺が戸惑っていても関係なく退院する事になった挙句、そうこうしているうちにパイセンから愛の告白を受けた。
そして、後遺症によりあまりにも淡々とした
――
他人行儀の返事を返す有様。
まるで初対面に戻ったかのようなやり取りだった。
パイセンも今よりだいぶ
…
いや、もっとずっと尖っていたから初対面と全く同じにはならなかった訳だが。
――
しかもこの間、一日しか経っていない。
あまりにも一瞬の出来事だった。
加えて、あの日押し付けられた袋を開けると、入っていたのは飴だけじゃなかった。
ずっと欲しいと言っていたシークレットステッカーが入っていた。
パイセンが手放すはずのない、スターライトナイトのステッカー。
ホログラムの入った綺麗なステッカーは、俺の心を曇らせるだけだった。
「
――
なぁ、ライト」
――
不意に暗闇から俺を呼ぶ声が聞こえた。
紛れもなく、これはパイセンの声。
ただ漠然と、何となく。本当に確証はない。けれど、どことなく響きが違うような気がする。
一先ず、呼び返そうと口を開くが声が出ない。
原因は不明。後遺症による可能性が真っ先に浮かぶ。
「俺、ある時ポックリ死んじまってさ」
どうにか返事をしようとしていたものの、告げられた内容に瞠目する。
どうあってもパイセンは死んでいない。
一体どういう事だ。
「あいつとずっと一緒にいるって約束したのに。『死』が二人を別つ“とも”って約束したせいか、あいつがずーっと俺の事引きずって、次に踏み出せなくしたの、後悔してんだよ」
――
待て。
そもそも、ここはどこだ。
真っ暗闇ではあるが、さっきまでいた廃墟だとは思えない。
語られる内容に実感も記憶もない。しかし、他人事とも思えない。
「あぁ、あいつを置いていくんじゃなかった
…
ってな」
懺悔のように聞こえる言葉に対し、あべこべになっている身体が勝手に声のする方へ手を伸ばし始める。
同時に自分から“何か”が離れていくような、違和感を味わっている。
「なぁ、ライト」
再度の呼びかけは、自分から“何か”が離れて、残された“モノ”
――
間違いなく心としての“俺”に向けられている。
「お前にはお前の“ビリー・キッド”
…
いや、パイセンがいる。別のお前に、俺の後悔に引きずられるな」
別のお前。
パイセンの後悔。
一体、何を言われているのか分からない。
けれど、何となく言わんとしている事は分かる。
「それを自分に教えてやれよ。自分の感情をありのまま受け入れて、お前を想っているビリー・キッドを思い出せ、ってぶちのめしてやれ」
暗闇に一瞬、光が射した。
それに照らされたのは、分離していった俺の“身体”と、背を向ける一人の男の背中
――
否、相違を生じていた時に口にした男の姿。
紛れもない、人間である“ビリー・キッド”の姿。
「簡単だろ?任せたぜ、無敗のチャンピオン
――
」
ひらり、と手を振って光の中に消えていく背中。
――
そうだ。
自分が自分に屈するなどあってはならない。
誰にも負ける事は許されない。
俺は無敗のチャンピオンで、赤いマフラーなのだから。
『置いて行かれるのは嫌だ』
決意を新たにする俺の目の前に立ちはだかるのは、光によってしっかりと視認出来るようになった黒い俺。
『独りに戻るくらいならこのまま
――
』
ついさっき俺から分離した、“身体”とも言うべき俺。
さしずめ、シャドウ・ライトと言った所か。
「
――
それはお前が決め付けていい話じゃない。決めるのはパイセンだ」
――
今更自分と闘う事になるなんてな。
▽△▽△▽△
「ライト!!」
綺麗にアッパーカットが決まって影が仰け反り、闇に溶けた瞬間。
俺を呼ぶパイセンの声が聞こえた。
大丈夫だ、今度こそ
――
。
「あ
……
?」
目を開けると、目の前に機械人としてのパイセンの顔がそこにあった。
「大丈夫か!?」
「
……
な、んで
…
」
「マジで冷や冷やさせんなよなー
…
」
待て、状況が整理出来ない。
さっきまでのは現実じゃないのは理解していたが、どうしてパイセンがここにいるんだ。
くたびれたソファも機械室も、場所は何一つ変わっていない。
「あの、」
ぐるぐると堂々巡りする思考を何とか切り離して声をかける。
「ん?」
「何で、ここが分かったんすか
…
」
「んー
…
勘!こう、ビビビッ!とSOSを受信したっつーか」
――
SOS。
発した記憶は
――
いや、間違いなく俺は夢の世界でこの人を呼んでいた。
それが助けを求めるものだったかは、覚えていないが。
「じゃ、俺は帰るからお前も気を付けてかえ
――
」
去ろうとするパイセンを追いかけ、その手を思わず掴んでいた。
しっとりと濡れたジャケット。湿気を帯びて垂れ下がったヒートシンク。
――
嗚呼、あの雨の中であるにも関わらず、この人は来てくれたのか。
「
……
おいおい、お前まで濡れちまうって」
「っ、実は
――
」
――
今だ。
乖離はなくなったはず。
伝えるなら今しかない。
乖離が治っていない可能性に怯えているらしく、声が震える。
「俺、アンタがどうしようもなく
……
好きなんです
…
」
渇いて掠れた声を喉から捻り出した。
自分の言葉にこんなにも安堵するとは思わなかったが、とにかく相違していない。
全て伝えるならば、今だ。
「パイセンの言葉を借りるなら、っ
……
ぞっこんラブって奴です
…
」
「
――
は?」
渾身の告白を捻り出した。顔が熱いし、パイセンの顔を見る事も出来ず、俯いたまま返事を待とうとしたが、パイセンの一言に共鳴したかのように、突然雨が止んだ。
そして、日差しが射し込む事で邪魔だった雨漏りの穴があっという間に天使の梯子になっていく。
幻想的でムード一杯な景色の中で、俺達はしばらく見つめ合った末
――
。
「ん
…
?」
ふとシューシューと、湯が沸いた時のような音が聞こえた。
一体何事だろうか。ゆっくりと顔を上げ、パイセンを見つめる。
雫が垂れていたはずのヒートシンクが瞬時に乾き、湯気が立ち昇っていく。
テープが早巻きされていくようなキュルキュル音。
目が赤と黄色が交互に明滅している。そのうち赤と暗転だけが繰り返されるようになっていっている。
「パイセン
…
?」
もう誰の目から見ても明らかだ。様子がおかしい。
思わず声をかけた瞬間、キュゥゥ
…
と尻すぼまりになっていく音が聞こえた。
いや、この音はどこかで聞いた事がある。
――
アレだ。パソコンがシャットダウンされる時に耳にする、排熱ファンが止まる時の音。
つまり
――
。
「パイセン!?」
重力は俺の思考よりもずっと早く作用して、パイセンは俺の手を掴んだまま卒倒しようとしている。
「ッ
…
!!」
支えようと、せめてもの抵抗として踏ん張った。
しかし、足元が濡れていて思うようにいかず、パイセンの背後にあった一際大きな水溜りへ二人揃ってダイブした。
そして、目覚めたパイセンの上に俺が乗っているという状態によって、再度アイモジュールが明滅あるいは暗転する事になるまで、あと一時間
――
。
END?
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