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溶けかけ。
2025-06-15 13:47:32
1778文字
Public
ほぼ日刊
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ふわふわ もこもこ まっしろけ
ふわふわなヌヴィレットとフリーナとメリュジーヌのお話
星願終わったので日刊再開致します。
ストックは大事。
※なお、会場で暇に任せて書いていた模様
色とりどりの服が並ぶ。
ブティックと見紛うほどに並べられたトルソーは、しかし、相応しくない渋面とセットであった。
「これは何かね?」
ヌヴィレットがフリーナに問いかける。
そう。ここはブティックでもなければ衣装室でもなく、フォンテーヌの中枢であるパレ・メルモニアの一室──それも最高審判官の執務室であった。
「何って
……
僕が特注した服だけど?」
「それはわかっている」
はぁ
……
とヌヴィレットはこれ見よがし溜息をつくと額を押えた。
「私が言いたいのは、何故ここにあるのかということだ」
「ここにある衣装たちはキミや僕、フォンテーヌ人が愛して止まないメリュジーヌたちのために用意したものだからね。メリュジーヌの理想のパパであるキミに精査してもらうのは当然のことだろう? 勿論、彼女たちの意思も大切だけどね」
フリーナが言い終わると同時に扉を叩く音がする。「噂をすれば、というやつだね」とフリーナがヌヴィレットにウィンクをした。
「みんな、いらっしゃい」
家主を差し置いてフリーナが扉を開けた。
「これ可愛い〜」
「私はこれが好きです!」
メリュジーヌたちが気に入った服をそれぞれ手にとった。服のサイズは全て彼女たちに合わせてあるようだ。
「うんうん。みんな好きな物を選んでくれ。費用は全て僕が負担しよう!」
ヌヴィレットは眉を顰める。いくら装飾が少ない普段着とはいえ、この量だ。プレタポルテよりは値が張ることだろう。
「
……
大丈夫なのかね?」
フリーナに耳打ちをする。
フォンテーヌに住むメリュジーヌたちの衣食住の問題は深刻ではあるがわざわざフリーナが個人の資産でやるものではない。
「大丈夫だよ。このくらい、散財のうちにも入らない。ねぇ? シュヴァルマラン婦人」
フリーナが傍らのアワアワタツノコに声をかける。シュヴァルマラン婦人は頷く代わりにシャボン玉を吹きかけた。
「ほらね! 彼女もこう言っている」
自慢気に胸を張ったフリーナにヌヴィレットはそこはかとない不安に襲われるのだった。
「フリーナ様、これ大きいです!」
メリュジーヌが大きな毛皮の塊を三人がかりで運んできた。
「な、なんだって!?」
フリーナが手元の目録に目を通す。数、色、種類
……
その中でサイズの項目を見つけて悲鳴を上げた。
「この最後の衣服だけメリュジーヌのサイズじゃないぞ!?」
どこで間違えたんだ
……
。
フリーナは力なくソファにもたれ掛かる。
ヌヴィレットはフリーナが投げ出した目録を手に取るとさっと目を通した。
「ふむ。確かに」
品目は帽子とケープ。冬用の物らしくナタのモコモコ駄獣の毛を贅沢に使ったものだ。
「こんなに大きいものどうしろって言うのさ
……
」
ケープと帽子を身につけながらフリーナが嘆く。ケープは付属のリボンで留めても肩からずり落ち、帽子は折り返しすぎて見栄えが悪い。
「そうだ! ヌヴィレットなら着られるだろう!?」
藁にも縋る思い
……
最早、自暴自棄になったフリーナがヌヴィレットの手首を掴んだ。
「いや、私は
……
」
「ヌヴィレット様ならきっとお似合いになります!」
きらきら、きらきら。
たくさんの期待に満ちた瞳がヌヴィレットを見つめた。
「これでいいのか?」
白いケープを纏い、三角耳が可愛らしい帽子を被ったヌヴィレットはそれだけで三ヶ月ほど不眠不休で働いたかと思うほどに疲れて見えた。
メリュジーヌとフリーナが目をまん丸にして口を開ける。それからぱっと顔を輝かせた。
「似合ってるよ!」
「よくお似合いです!」
「そうだろうか
……
?」
ヌヴィレットの知る常識では成人男性と可愛らしいもふもふしたものはイコールで繋がらない。
複雑な気持ちを抱きつつ、ヌヴィレットは口元に笑みを浮かべた。
「少しばかり複雑な気分だが
……
君たちが似合っているというのならそうなのだろう」
当代の龍は寛大で、それでいて単純であった。
その年の冬。
フォンテーヌ廷のあちらこちらで可愛らしい猫耳帽子とケープでもふもふになった最高審判官が目撃されることになる。
すわ、最高審判官ご乱心かっ!? と数多のフォンテーヌ人たちの間に激震が走ったが当の本人の幸せそうな表情にたちまち噂は立ち消えていった。
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