Ai
2025-06-14 01:58:57
783文字
Public パラライ
 

目が覚めて笑うのよくね?

Ksy様が書かれていたcozmez小説『とある日の朝ごはんの話』の珂波汰視点SSを書かせてもらいました。
とても素敵なcozmezのお話だったので、つい…。
書かせてもらったというよりは衝動的に書いてしまった、が正しいです。
快く受けとってくださったKsy様、ありがとうございます。
リンクはお控えしてますが、pixivに投稿していらっしゃるのでぜひ!

 起きたらすげーいいにおいがした。ふとんの裾をつかんだままキッチンのほうを見ると、那由汰がすっげー真剣な顔でガリガリしていた。
 空気を吸いこむと、甘いにおいと焦げたにおいが鼻をくすぐった。その香りに誘われて、珂波汰はベッドに片手をついたが、まだ目覚めきってない頭は起きあがることなく、那由汰の枕に落ちた。もう一度息を吸うと、今度は那由汰のにおいがした。
 ……ムリ、ねみー。

「でもまー……いけるか」

 ふいに那由汰のひとり言が聞こえて、珂波汰の耳がピクリと静かにうごいた。
 那由汰の声――そこになにかを焼く音が加わって、ジュージュー……。朝のリズムを奏でている。
 音は何度も重なって、香りと重なりあって、珂波汰の空気をやさしく満たした。朝日の下にいるわけでもないのに、なぜか温かくてまぶしい。部屋の四方まで広がるまぶしさに、珂波汰はまつ毛をそっと下ろした。
 那由汰の枕を勝手に占領したまま、耳をすませると、白い鍵盤を弾いたときのような軽快な音がした。ピアノなんてものはどこにもないのに、頭のなかでひとつひとつ繋ぎあわさって響いていく。
 それは目的もテーマもないモザイク状のメロディで、あまりに歪で、どんなお世辞をもってしてもHIPHOPにはとけこめないのに。どこか愛しさを感じる。そんな音だった。
 cozmezの音にするには穏やかすぎんな、と珂波汰は薄白いぼんやりとした頭のなかでこっそりと笑った。
 ちゃんと目が覚めたとき、もしこの音を覚えてたら那由汰に聞かせてやろう。那由汰だけに贈るささやかなサプライズにしよう。
 そんなふうに心のなかで思って、珂波汰は枕に手をついてベッドから下りた。

……すげーいいにおいがする」
「あ、おはよー珂波汰。ちょうどできたとこ」
「はよ、那由汰」

 ボサボサの頭のまま、珂波汰は大きなあくびをした。