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常盤
2025-06-13 23:00:43
7966文字
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邂逅
うちの子たちとやまちさんのアベル君(@MplJJDFxqZvQiKW)との交流小話です。
いきなり始まって突然終わる。
すごく楽しかったです!お貸しくださりありがとうございました!
フェイがその青年を認識したのは、禁足地調査へ駆り出されてからすぐのことであった。調査がある程度ひと段落し、しかしてゾ・シアという不確定要素が残る禁足地への緊急時のハンター補給として白羽の矢が立ってから幾数日。相方のガンナーと禁足地へ降り立って日が浅い。
その中で鳥の隊のアベルは容姿でも噂でも目を引いた。
見上げるほど身長が高くガタイも良い。褐色の肌に映える薄緑色の瞳は鋭いが剣呑ではない。身のこなしからしてもハンターらしいハンター、というのがフェイの第一印象だ。不思議と印象に残ったのは、同じ太刀使いというのも興味を引いたのかもしれない。
「ねぇねぇディラス。あの男の人知ってる? 鳥の隊のハンター」
「あぁ、たしかアベルだな。ゾ・シアの討伐の功労者だと聞いている。なんだ、興味があるのか?」
「太刀使いなんだって。せっかくこんな辺境の地で出会えたんだし、お願いしたら手合わせしてもらえないかな?」
「おまえは出会った太刀使いとすぐ手合わせしたがる癖をやめろ」
「あいたっ」
アベルに引けを取らない身長とガタイの良さを持つ相方に軽い拳骨を一つくらう。
痛いよと文句をこぼしつつフェイは再度アベルへ視線を向けた。
どこかの隊の加工屋と話す青年の表情は穏やかだ。和らいでいる場にずかずかと見知らぬ女が近づいていきなり声をかけるのはいささか無粋だろう。
いつか話してみたい太刀使い談義をしてみたい、あわよくば手合わせを
——
なんて相方の説教ガン無視の野心を抱きつつ、フェイも自身に課せられた任務のためベースキャンプを発った。
そんなフェイの願いは、存外日が経たずに、思わぬ形で叶うことになった。
その日、フェイたちは竜の跡形にて現地調査を行っていた。今までに見たこともない構造物や環境生物たちを前に、二人の目が好奇心で輝く。
「ねぇねぇ、これすごくない?このピンク色ののっぺりした生き物。きもかわいいよね」
「少なくともかわいくないだろ
……
なんだそいつ」
「ぎょむどん」
「だれだそんな名前にしたやつ」
わいわい きゃいきゃい
新大陸には生息しない環境生物たちと戯れながら、フィールドの調査をコツコツと続けていた時だった。
先に気付いたのはフェイだった。うなじにピリピリとした寒気がさす。そこから背筋へと嫌な寒気が走った。
「
——
、ディラス!」
相方の名を叫び、背負う武器に手を伸ばしつつ振り返った瞬間、二人の眼前の漆黒の濁流が流れ込んできた。咄嗟に口元を覆い、避けるように飛び下がる。
わずかに吸い込んでしまった粒子にせき込みつつ、周囲へ鋭く視線を走らせた。数秒前までフェイたちが立っていた場所をのみ込みながら、暗黒色が鈍色の世界を蝕んでいく。
いまだその姿を見せないが、この漆黒の濁流を起こした主に心当たりのあるフェイは盛大に顔を顰めた。
「この地域にゴアマガラが出るなんて報告、聞いてないんだけど」
「どっか散歩に行って道を間違えたとかじゃないか?」
「迷子とか笑えないんですけど?」
禁足地違いかこの野郎。
内心でそう吐き捨てながら、相方と背合わせになりフェイは神経を研ぎ澄ませ始めた。
ゴアマガラ。最近研究が進み、亜龍種という唯一にして無二の分類となっている古龍目のモンスター。近年発見されたこの種は古龍目に分類されるに相応しい生命力、影響力を持ち、その生態系は他の生態系を脅かす存在だ。
何より厄介なのは、狂竜ウィルスと呼ばれる、下手すれば他の生態系を一気に崩壊させかねない凶悪なウィルスをまき散らすことだ。このことから、ゴアマガラに遭遇したハンターは基本的に狩猟、もしくは撃退を義務付けられている。
とはいえ亜龍種、並大抵なハンターに狩猟できる相手でもない。その場合は救難信号を打ち上げ、他ハンターの合流を待ち狩猟するか
——
この災厄を人里に向けないための尊い犠牲になるかを迫られる。救難信号を打ち上げたとして、その周辺にゴアマガラを狩猟できるほどのハンターがいるかはわからないのだ。
逆に言えばゴアマガラを狩れるハンターは、死力を尽くして狩猟を成さねばならないのだ。
——
たとえば、フェイたちのような禁足地への招集がかかるハンターは。
さてどう立ち回ろうかとフェイが逡巡する。
ふいに黒色の粒子が濃くなる。二対の視線が、その中心へ投げられた。
ズズズ、と。音にするならこんな感じだろうか。そう思うほど重たげな音を響かせながら、それは黒色の渦の中から姿を現した。
赤黒い鉤爪のついた巨大な一対の翼脚。のぺりとした目のない頭部をもち、しかして大きな口からのぞくおびただしい牙はいともたやすく他の生物を食いちぎる。巨体を支える4本の脚は太く、脚力は断壁をも駆け上がる。聴覚を補うために周囲にまき散らされる暗黒色の粒子をまとう姿は、まさにという黒蝕竜の呼称がふさわしい。
フェイたちの知る、ゴアマガラがそこにいた。
一気に場の空気が重くなる。
圧倒的な強者の場を制圧するようなプレッシャーに、呼吸が浅くなり全身から冷汗が噴き出すのをフェイは感じた。
だが、気圧されてばかりもいられない。先ほどフェイは微量だが粒子を取り込んでしまった。それはすなわち、ゴアマガラの探知に引っかかってしまっているということだ。距離を置くのも、眼前にあの巨体が迫った今は難しいだろう。存在を捕捉されてしまっている。
——
ならば、すべきことは一つだ。
浅くなりそうな呼吸を抑え、丹田を意識して大きく一つ呼吸をする。そうすれば長年の鍛錬の賜物で、先ほどまで脈打っていた鼓動が落ち着き始めた。自然と冷汗も引いていく。
フェイが隣を見遣れば、切れ長の瞳と視線がぶつかる。相方はどうやらとっくに息を整えていたらしい。相変わらずだとフェイは内心で苦笑をこぼす。
「ディラス」
「あぁ」
翡翠色の瞳と濃紺色の瞳の視線が一瞬交差した。
音もなく、二人同時に背負った武器を抜き放つ。フェイは太刀を、ディラスはライトボウガンを。
大きな足音を響かせながら近づいてきていた巨体が、不意に臨戦態勢をとる。どうやら完全に捕捉されたらしい。
ふと、光をも飲み込んでしまいそうな黒い体に無数の傷跡が走っているのが見えた。
「あの傷
……
歴戦固体か」
「あ~、聞きたくなかったその情報。ただでさえ面倒極まりないのに、より一層絶望じゃん」
「間違いないな。逃げるか? 今ならまだ間に合うぞ」
「冗談。私たちなら余裕だから」
くすくすと笑いながら軽口を叩きつつ、しかしその穏やかさと裏腹に鋭く細められたフェイたちの瞳には煌々と闘志の光が宿っていた。
——
さぁ狩りをしよう。
そうフェイたちが自身の武器を構えなおした時だった。
唐突に二つの大きな影がフェイたちとゴアマガラの間に躍り出る。一見鳥竜種に見えるそれを駆る人影を見遣り、フェイは目を丸くした。
ひとりは丸い眼鏡をかけ橙色のローブを羽織る女性。もう一人は、褐色の肌に映える銀髪を持ち、背には太刀を背負う青年。
話したことこそないが、フェイは誰かを知っていた。
「鳥の隊の
——
アベル!?」
「無事か!?」
鞍を蹴り、軽やかに着地するアベルを、目を白黒させてフェイたちは見る。救難信号も上げてないのに、鳥の隊が何故
——
。
状況を呑み込めていない二人を尻目に、アベルが音もなく背負う太刀を抜き放つ。アルマ、と後方で待機する女性へと声をかければ、勝手知ったるていで女性もうなずいた。
「生態系保護のため、ギルドはハンターへゴアマガラの狩猟を要請します」
朗々と、力強ささえ感じる宣言に、なるほど彼女は編纂者かとフェイは納得する。宣言後素早くセクレトと共に場を離れ、しかしてこちらをしっかりと観察できる位置で様子をうかがう彼女は中々に優秀な編纂者なのだろう。
それに、と次いでフェイはアベルが抜き放った太刀の刀身へ視線を移す。
見たこともない造形の太刀は白銀の光を放っており、刀身に纏う練気は黄色だ。一瞬この太刀のまとう特色なのかもと考えもしたが、長年太刀を使い続けているフェイの直感はそれを否定した。ではなぜ、すでに練気がそれなりに溜まっているのか。
「
……
どこかですでに狩猟をしてきたんだね」
「あぁ。狂竜症を発症したネルスキュラとリオレウスを討伐してきた」
「リオレウスはともかく、ネルスキュラ
……
事前に目を通した報告書では竜の跡形に生息しないモンスターだな
……
気まぐれにこいつが移動でもしてきたか」
ゴアマガラから視線を逸らさず、ディラスがつぶやく。
そうだ、と色素の薄いシルバーグレーの瞳が瞬いた。
「氷霧の断崖で狂竜症を発症したモンスターが相当数発生している。各小隊が討伐任務を受け対応し、自分はゴアマガラ討伐の任を受けている。貴方たちは
……
」
「あっはっは! な~にもそこらへんの話を聞いてないね! なんなら環境調査の任務を推奨されたんだけど~」
「そうなのか
……
あ~、なんというか
……
」
「あぁ、まぁ気にするな。まだ俺たちが派遣されてから日が浅い。信用度の問題だろうさ」
「わざわざ禁足地くんだりまで呼び出しといて信用度がないといわれるのも意味が分からないよね!?」
がるがると犬歯を剥きだしつつ、否、とフェイは自分のこぼした言葉を内心で否定した。
わざわざ環境生物調査という危険度の低い任務を、竜の跡形指定で任された。それはつまり、ゴアマガラが氷霧の断崖を抜け、竜の跡形に来てしまった際の保険的なことだろう。何事もなければそれでよし、万が一ゴアマガラが出現しても鳥の隊と共に討伐すればよし、と。
なんともあの生物学者が考えそうな手堅い盤石だ、と脳裏にひげを蓄えた知古のランス使いを思い浮かべフェイは苦笑をこぼす。
唐突に、咆哮が空を裂いた。本能に突き刺す轟音に身体が竦む。
巨体が、その翼脚を広げ宙に飛び上がっていた。しかし飛び去るわけでもなく身体中に叩きつけられる殺気を鑑みるに、一向に何もしてこないハンターたちにしびれを切らしたらしい。
油断をしたつもりはないが、悠長にもしすぎたようだ。
フェイの表情が引き締まる。柄を握り直すのと同時に、ディラスが動いた。
ガタイの良い長躯で軽やかに鈍色の地を駆け、適正距離まで近づくや否や躊躇なくライトボウガンの引き金を引き銃弾を嵐のごとく浴びせる。ゴアマガラも反撃するように鉤爪を振り回すが、ちょこまかと避けるディラスを捉えることはできていない。
フェイたちにとっては『いつも通り』の初動が始まった。
——
さて、あとは私が切り込むのみ
……
だけど。
ゴアマガラから視線を外さず、隣で同じように太刀を構える青年へフェイは静かに問いを投げかける。
「突発で申し訳ないんだけど、私たちの動きに合わせてもらっても大丈夫?」
「問題ない。合わせてみせるさ」
「頼もしいね。ディラスは私の動きに合わせて動いてくれる。だから、貴方にも私と同じ動きをしてほしい」
「心得た」
「間違うと、もしかしたらディラスの弾が撃ち込まれるかもしれないから、気を付けてね」
「
……
それはどうなんだ?」
「気合いだよ、気合い。ほら
……
きたよ!」
「!」
けらけらと笑いながら、しかしゴアマガラの凶腕が振るわれた瞬間、視線が鋭くなる。軽やかに半身を転身させ、戻りざまに見切り斬りを叩き込んだ。
あまりの変わりようにアベルの目が丸くなるが、襲ってきた凶腕を辛うじて避け、慌てて体制を整えた。次いで頬すれすれを掠っていった銃弾に冷汗が垂れる。どうやらライトボウガンの弾に被弾するかもしれないというのは冗談じゃないらしい。
ゴアマガラから距離を取っていた黒い長髪を持つ男へと視線を向ければ、ひょいとひとつ肩をすくめられた。そういうことらしい。
一つ後ろに飛んで巨体と距離を取る。合わせるように距離を取り隣に立った少女へアベルは胡乱な瞳を向けた。
「とんでもないな、貴方たちは」
「はは、よく言われる~。で、合わせられそう?」
余裕綽々と笑う瞳の奥に、こちらを光が灯っているのをアベルは感じ取った。負けていられるか、と負けん気の強さが顔を出す。
「あぁ、もちろんだ」
ゴアマガラへ視線を戻せば、ターゲットを再度こちらに合わせたようで、暗黒色の巨体が翼脚を広げながら突っ込んでくるところだった。
今度こそとアベルはフェイの動きに合わせるように太刀を構えた。
流れるように、刃を動かす。ゴアマガラの動きを見切り僅かな隙へ連撃をたたき込む、大抜刀居合切り。
不意に視界の端で、同じ深紅の光が走るのが見えた。見ずとも分かる、アベルの太刀筋だ。
先ほどのフェイの忠告を守り、フェイと同じ太刀筋で動いている。
納刀するスピードも、抜刀時に踏み込んだ角度もほぼ同じ。狙った部位はわざとずらして、しかして斬り終えた先は同じにして。
鋭い斬撃を浴びたゴアマガラが、重々しい悲鳴を上げる。次いで鼓膜を破らんばかりに叩きつけられた咆哮は、再度紙一重の見切りの妙技で反撃の一撃となる。一拍を置いて、アベルの見切り斬りも叩き込まれた。
お互い初見とは思えぬ、見事なまでの追随。
フェイは自分の口角がつり上がるのが分かった。狩猟の興奮と、久しくなかった腕利きの太刀使いとの邂逅に笑みが抑えられない。
興奮もそのままに、フェイは高らかに笑う。
「すごいすごい! 貴方の太刀筋、すごく良い! 私、すごく好きだ!」
「そりゃどうも! 口説くなら別のタイミングにしてくれないか!」
「あはは、なら後でしっかり口説かせてほしい! 是非手合わせをしてほしいんだ!」
「おいこらフェイ! 馬鹿やってないで真面目にやれ!」
銃口が火を噴き続けるライトボウガンの爆音に負けじと、ディラスの怒号が轟く。
ぺろりと小さく舌を出し、しかして反省の色は見せず、フェイは翡翠色の瞳を興奮で輝かせる。
そんなフェイが何かを発する前に、二度目の怒気を多分にはらんだ咆哮が空気を震わせた。間を置かず、巨体がフェイとアベルに向かってとびかかった。
ひゅう、と息を吐き、太刀を薙ぐようにして後方に二人同時に下がる。二人の残影を裂いた前腕に向かって、練気が満ちる2つの刃が襲い掛かった。
前腕に刃が叩きつけられた瞬間、腕に走る大きな抵抗にフェイの表情が歪む。しかし前腕に食い込んだ刃の勢いを殺さず、そのまま思い切り振り抜いた。
振り返りざま、フェイの斬撃がゴアマガラの外郭に傷をつけたのが見えた。
にやりとフェイが笑う。
「外さないでよ、鳥の隊!」
「無論だ!」
ゴアマガラが体制を整える寸前、アベルが飛び込んできた。勢いよく振るわれた刃は寸分の違いもなく、フェイが作った傷口へと叩き込まれる。
気合一発、アベルが大きくゴアマガラの懐へと踏み込んだ。
——
幾重もの斬撃が見えた。
多方向から繰り出された斬撃は、同じ傷口へ叩き込まれる。最後の一撃を切り終え納刀した瞬間、たまらないとばかりに悲鳴を上げながらゴアマガラの巨体が倒れた。間髪入れずフェイが躍り出し、ディラスの集中砲火も加わる。
「さっすが鳥の隊! 噂でしか知らなかったけど、すごい腕前だね! 技術というよりかは力強さに目が行くけど、そこが貴方らしさというかなんというか!」
口は止まらず、しかし太刀をさばく腕も止めず。時折縦横無尽に駆け回るディラスとアイコンタクトを取り、躊躇なくゴアマガラの懐へ踏み込む。
見事の一言に尽きる連携の取れた動きに舌を巻きつつ、アベルも必死にフェイの動きに合わせて立ち回る。
どうにか動きに合わせているうちに、不思議と被弾をしていないことに気付き、アベルを内心で舌を巻いた。ふざけているように見えて、その実、動き一つに無駄がなく女性と思えぬほど一撃が重い。禁足地調査隊に招集される以上の実力だとアベルは感じ取った。
それからどれだけ時間が経っただろうか。斬撃と銃撃、鉤爪と砂埃が舞う世界。ハンターとモンスター、お互いの動きに慣れ始め、少しずつハンター側の被弾が増えてきた頃だった。
「あ、そういえば」
狂竜ウイルスを多分に含んだブレスを躱しながらフェイがアベルを見遣る。前転して躱しきったアベルは何事かと顔を上げた。
「私たちまだお互いの名前を知らないね。あとでしっかり自己紹介をしよう。そして、色々話そう。私はすごく貴方に興味がある」
今更だけど、とフェイは頬に傷を作りながらコロコロと笑う。亜龍種と対峙し、なおかつ命を懸けて狩猟をしているというのに、その気負いを感じさせない穏やかな笑み。そして決して今ではない会話の内容。
なんともアンバランスなフェイの存在に、ふっとアベルの肩から力が抜けた。次いで小さな苦笑がこぼれる。
「あぁ、自分でよければ」
「え、ほんと?言ったからね! ディラスー! 聞いたー!? あとで色々話してくれるってーー!」
「おまえの馬鹿デカい声しか聞こえてねぇよ! お前マジであとで覚えてろよ!」
ゴアマガラの咆哮に負けじとディラスの怒りに満ちた怒号が飛んでくる。なかなかの立腹具合にフェイの頬がひきつった。この男はやると言ったらやる男なのだ。
狩猟後が怖いと内心で冷や汗を流しつつ、それはそれとしてとフェイは気持ちを切り替える。視線を向ける先は、未だ闘志が衰えず暴れまわる黒蝕竜だ。紫に輝く角を顕現させてから、猛攻に拍車がかかった黒蝕竜の一撃は恐ろしいほどに重たい。気絶するなら御の字、下手に食らえば命さえ危ういだろう。
少しだけ怖気づく心を、今なお前線で注意をひきつけてくれている相方と興味を十二分に抱いた青年の存在で鼓舞する。
——
相棒を悲しませたくない、この青年のことをもっと知りたい。だから
——
死ねない。
「
……
よっし!」
気合一発。掛け声で気持ちを奮い立たせ、フェイは柄を握り直す。
一つ呼吸を整え、フェイは顔を上げた。
「みんなで生きて帰るよ! 今日の夕ご飯はポポのタンだ!!」
フェイの声に呼応するように二つの雄叫びが上がる。
気合十分。地を思い切り蹴りゴアマガラへと肉迫すると、フェイは太刀を思い切り振りかぶった。
「改めて自己紹介を。俺はディラス、こいつはフェイ。さっきは急だったのに俺たちの動きに合わせてもらい、感謝する」
「鳥の隊のアベルだ。いや、こちらこそ。貴方たちの助力があったからこそ被害も最小限に、迅速に狩猟ができた」
「いやー、無事に三人で五体満足で帰還できてよかったよ~。歴戦個体のゴアマガラなんて早々お目にかかれるものじゃないからね」
「そうだな。おかげで無事に今日も夕飯にありつけそうだ」
「ポポのタンだね。今日は豪勢にいこう!」
「異議なしだ。せっかくだ、あんたもいっしょにどうだ、アベル」
「あぁ、迷惑でなければご相伴にあずかろう」
「お、じゃあご飯のついでに私は太刀使いトークをしたいな。さっきは全然話せなかったし」
「狩猟中に話す内容じゃないだろうが、バカフェイ」
「バカバカ言わないでもらえる!?」
「ははは
……
自分でよければ話し相手になるさ」
「ありがとう! じゃあ、そうと決まればご飯を食べに行こう! 今夜は狩猟後の打ち上げだね」
「まったくこいつは
……
すまないな、アベル」
「気にしないでくれ。こんな夜もたまには良いものさ」
「ふたりともおそいよ~。早くきて~」
「
……
ほんっとこいつは
……
」
「ははは
……
」
了
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