たくとろ
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ワンライ「ヘアスタイル」

フライング作成
二人旅中
ちょうどこういう話浮かんでたので、お題見てよし!と思いました。

とある日の朝、テントから出たロイが体を伸ばすと、岩の上にリコが座り込んでいた。髪を持ち上げて後ろでいつも通りお団子を作ろうとしているみたいだ。旅立ってからしばらく、リコの髪型の変化にも慣れて降ろしている状態の方が逆にドキッとするようになった。歩いていくと、リコがロイに気づいた。

「あ、ロイ、おはよう」
「おはようリコ。髪のセット中?」
「うん。でも今日は中々上手くいかなくて

リコがそう言うと、ロイは彼女の指先を見つめた。確かになんだか手間取っている様子だ。リコはんーと唸りながらそれを続けた後、髪から両手を離した。支えが無くなった髪は解け、ストレートに流れてリコははあと息を吐いた。

「やっぱり今日はダメかも」
「じゃあ別の髪型にしてみたら?リコならなんでも似合いそう」
「ありがとう。でもなんか今日は手先の感覚が悪くてロイ、手伝ってもらってもいい?」
「いいけど何するの?」
「やり方は言うから、ロイに髪整えてほしいの」
分かった」

お願いと言われて、ロイはリコの後ろに回り込んだ。さらさらの黒髪がまだ弱い朝の日差しに照らされてうっすらと輝いている。こんなに綺麗な髪に触っていいのかなと思い、緊張で息を飲む。
一方リコはスマホロトムを眺めながらどんな髪型がいいか検討中だ。悩んだ彼女は画面をロイに見せた。

「ねえ、どれがいいと思う?」
「うーん女の子の髪型って多いんだね」
「うん。だから迷っちゃうんだ」
「んーでもリコなんでも似合いそうだし

結局ロイも悩んでしまう。彼の頭には写真に映る女性をリコに置き換えたイメージが浮かんでいる。かわいい、かわいい、かっこいい、きれい、かっこいい、かわいい、きれい。ローテーションするように流れてくる色んな髪型のリコに一つ一つ感想を述べる。すっかり口に出ているが、ロイは気づいていない。
リコの目にはロイがただスマホの画面にいる色んな髪型の女性にロイがぶつぶつと褒めているように見えている。しかも、普段ロイから言われたことのないかわいいやきれいという言葉に、リコはムッとした。

「ロイ」
「あ、ごめん。まだ悩んでて
じゃあ、私がその髪型になったときにロイが一番かわいくてきれいだと思うのにして」
「か、かわいくてきれいなの!?」

そんなものそれこそ選べない。かっこいいのを抜いたとしても、リコならどれだってかわいくなるし、きれいにもなるじゃないか。ロイはまた大いに悩む。こうなったらもう勘だ。ロイは目を瞑って画面をスクロールさせ、適当なところで止めた。その髪型を確認してリコに見せる。

「ハーフアップだね。ロイはこれが一番かわいくてきれいだと思ったってこと?」
「う、うん。あ、もちろんいつもの髪型も今の状態も素敵だけどね!?」
「ふふ、ありがとう。じゃあロイ、お願いね」

リコはカバンからゴムを一つ出してロイに渡した。やり方の指示も同時に始める。まずは耳の上の髪を引っ張り上げる。ロイはドキドキしながらリコの髪に触れた。やわらかくてサラサラな髪。ロイの鼓動はまた早くなった。できるだけ優しく、リコの髪を掻き上げていく。リコはロイの様子と自分の髪を鏡を持って確認している。

「こう?」
「うん。じゃあそこで結んで」

ロイは指示に従ってリコの髪をゴムで結んだ。リコがニコニコとしたまま次の指示を出そうとしたところ、ロイが口を開いた。

「リコ、痛くない?」
「大丈夫だよ。このまま上の方の毛と横の方をちょっと引っ張り出してくれる?」
「こうかな?」
「そうそう。ロイ、よく工作とかしてたからかな女の子の髪触るの上手だね」
「そ、そう?ありがと」

しばらく調整を続け、リコは満足の笑みを浮かべた。ロイはようやくドキドキから解放されたと安堵したが、立ち上がり振り向いたリコを見て心臓がまたうるさくなってしまった。

「どうかな?」
かわいいきれい
「えへへ、よかった」
リコ、今日はゆっくり歩こっか。髪が乱れたらよくないし」
「うん」

この日リコとロイはゆったりと歩いて近くの街に入り、軽く観光して一日を過ごした。普段とはまた雰囲気の違うリコがずっと隣にいて、ロイの鼓動が休まることはなかった。