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傘道
2025-06-13 21:31:37
2912文字
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ビリイト
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甘い夢を壊す者
たゆやさん(
https://x.com/zta_yuya?s=21
)の誕生日プレゼントです。
znzrの🔫🔦でミアズマによる幻覚の小説です。
ver2.0メインストーリーネタバレあります。
眩しさに目を細める。
視界に無邪気な犬が映った。
戯れるように飛びかかり、顔を舐められる。
ふわふわな塊に押し倒され、地面に仰向けに倒れた。
くすぐったいと笑っていると揶揄うような笑い声が聴こえた。
「デイン、笑ってないで助けろよ!」
デインが手を伸ばして犬をライトから離した。
お日様のような匂いがする苦しくない重みが離れる。
「サンキュー、デイン。」
犬を引き離した後、デインが再び手を伸ばしライトを立ち上がるようにサポートする。
柔らかな土の匂いとたんぽぽの鮮やかさから離れるのが名残惜しいが、ずっと突っ伏している場合じゃない。
何をやってるんだ?と心配してそうな顔のニックとラティーナが近寄ってくる。
温かくて優しい。
なぜかそう感じた。
「
…………
い!」
遠くで誰か叫ぶ声が聴こえた。
誰だろう?と振り向いても誰も居ない。
どうした、団長?とニックが声をかける。
「すまん、ただの空耳だ。」
なんでもないと軽く首を振ると怪訝そうな顔で覗き込まれた。
「本当になんでもないんだ。早くみんなのところへ行こう。」
今日はお祝いの日だ。
傭兵団結成の日なのだから。
主役がきたぞーとラティーナが満面の笑みでライトの背中を押す。
4杯のグラスにエール、小さなコップにジュースが注がれた。
「それでは傭兵団結成を祝して、乾杯!」
全員が笑顔でグラスやコップを持ち、乾杯する。
戦場に身を置くから明日のことなんてわからない。
それでもここに居る全員とはずっと一緒に居られる気がした。
「
……
戻ってこい!」
戻る?
どこに?
俺の居場所はここだ。
高い報酬の依頼が来て、みんなで作戦会議中だ。
団長も参加するだろ?と期待の目が向けられている。
もちろんとライトは笑みを浮かべて答えた。
みんなと一緒に行く。
みんなと一緒に死に行くんだ。
死ぬ?
「ライト、戻ってこい!」
今まで空耳かと思うくらい遠くに聴こえていた声が近くではっきり聴こえた。
戻ってこい?
だって俺の居場所は
…
ライトは胸元のドッグタグを握った。
ドッグタグは3枚あった。
なんで3枚あるんだ?
Lighterと刻まれた1枚だけじゃないのか?
「ライト!そっちへ行くな!」
違う。
仲間は死んでいない。
まだ俺が死んでいないじゃないか。
デイン、ニック、ラティーナ。
3人が俺を置いていくわけないだろう?
「ライト!!」
何か黒い影がライトを背後から抱きしめる。
鉄の塊のように重くて冷たい。
なのに嫌ではなかった。
むしろ懐かしくて温かいと思ってしまった。
「お願いだ、行かないでくれ!!」
なんで涙が溢れるんだろう?
なんで仲間の姿がどんどん曖昧になってしまうんだろう?
なんで立ち止まらないといけない、戻らないと行けないと思ってしまったんだろう?
「ライト!!パイセンの命令だ!戻ってこい!!」
パイセン?
あぁ、そうだ。
思い出した。
俺にはパイセンが居るんだ。
仲間を失って、地下闘技場に行って。
おやっさんに救われて、そこでカリュドーンの子とパイセンに会ったんだ。
大切なものを、もう失いたくないものを見つけたんだ。
仲間の姿がもう輪郭すら保っていない。
「ごめん、デイン、ニック、ラティーナ
…
まだそっちには行けないんだ。」
許してくれと涙を翡翠色の瞳からポロポロ流しながら告げる。
温かくて甘い夢だった。
でも現実に戻らなければならない。
「ちゃんとアンタ達のところに行くから
…
もう少しだけ待ってくれ。」
ライトは立ち止まり、背後を振り返る。
黒くて冷たい鉄が人間の形をしている。
「パイセン
…
」
愛しい先輩兼恋人をライトは抱きしめた。
「ライトさん!」
アキラの声でライトは目を覚ました。
翡翠色の瞳を見るとアキラは安堵のため息をついた。
ライトは衛非地区にある適当観のベッドに寝かされていた。
辺りを見渡し、自分がどうしてここに居るのかわからず困惑する。
「よかった。」
「なんで、俺は
…
それとパイセンは?」
「ライトさん、どこまで覚えているか教えてくれるかい?」
「どこまでって
…
確かプロキシとパイセンと一緒に調査に行って
…
あれ?アンタの師匠も居たか?」
「そうだ。」
アキラとライトの会話に凛とした女性の声が加わる。
アキラの師匠、雲嶽山の宗主である儀玄がアキラの横に立っていた。
「私が二人分浄化した。お前のパイセン?が止めていなかったら今頃お前はミアズマに飲み込まれていたぞ。」
ミアズマ。
触れたものに幻覚を見せるもの。
それは触れたものに幸せな記憶を見せる。
「じゃあ、あの夢は幻覚だったのか
…
ん?待ってくれ、二人と言ったか?俺以外にもミアズマに侵食された者が居たのか?」
「あぁ、お前のパイセンであるビリーだ。お前をミアズマに近づけすぎないようずっと引き留めていたから少し侵食してしまった。」
「
……
っ!そんな俺のせいで
…
!」
「そう自分を責めるな。きちんと浄化したと言っただろう。それにそもそもミアズマに近づくきっかけになったのはお前がビリーとやらを庇ったからだぞ。」
自分を責めるように顔を覆ったライトを儀玄が慰める。
「そうだよ、もうビリーは元気で今外に居るんだ。もしライトさんが大丈夫なら面会するかい?」
「まぁ、浄化は済んでいるから無理に身体を動かさなければ大丈夫だろう。面会くらいなら普通にしていいぞ。」
二人の言葉に覆っていた手を下ろし、ライトは俯く。
「
……
そうっすね。パイセンに会わせてください。できれば二人っきりで。」
ライトの言葉に二人は静かに頷き、部屋から出た。
「よう、ライト!調子はどうだ?」
数分後に陽気な声がライトの耳に届く。
部屋の入り口に愛しい機械人が立っていた。
「パイセン
…
」
「よかった、無事で。店長の師匠ってすげーな。あっという間に浄化しちまって
…
」
「なんで俺を助けたんですか?」
「なんでって変なこと聞くなぁ。ライトは俺の大切な後輩で恋人で
…
とにかく俺にとって大事な人だからだよ。そりゃ全力で助けに行くだろ?」
黄色のアイライトが真っ直ぐライトを見る。
嘘偽りのない。
夢ではなく現実で嬉しい言葉をもらった。
「パイセンだって、ミアズマの侵食受けたんだろ?あんな温かくてずっと居たい夢だったのに
…
どうして現実の俺を助けに行けたんですか?」
翡翠色の瞳から熱い液体が溢れた。
どうして自分のことより優先できたのだろう?
そんな価値が自分にはあるのだろうか?
「なんでだろうなぁ?確かにいい夢だったけど、お前を失うくらいだったら要らない夢だったな。」
鋼鉄の手がライトの涙を拭う。
夢の中で救ってくれた鋼鉄の身体だ。
「お前もうちょっと自覚しろよ。お前はビリー・キッド様に愛されまくってる超ハッピーなチャンピオンのライトなんだぜ?」
死の淵に行こうとしたら全力で止めてやるよ。
ビリーの力強い言葉にライトは声をあげて泣いた。
一瞬ビリーは大きく慌てるが、すぐにライトを鋼鉄の身体で抱きしめた。
甘い温かい夢。
それを壊してくれた機械人は素敵なヒーローでした。
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