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紅子
2025-06-13 01:26:18
802文字
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「最大公約ストロベリー vol.IF」
最大公約ストロベリーってなんなんですか スクリプトの実装はいつなんですか 早くオタクを助けてください
長いこと、言葉は交わされなかった。先ほどまで激しく争っていたとは思えない静寂が、そこに漂っていた。
「俺たち、もう戻れないかもしれないな」
* * *
まるで捨てぜりふのような言葉だけ残して部屋を出ていった鉉覇のことを、煤墨も追いかけなかった。追いかけてきてほしいのだろう、ということもわかっていたが、このタイミングで追いかけていけるほど、自分にも冷静さが戻っていない。
最後に吐かれた鉉覇の言葉が、煤墨の頭の中をぐるぐると巡っていた。
そこにはもはや先ほどまでの口論の内容など残っておらず、ただ、彼の言った言葉の意味を考える。
「戻れない "かも" 、ね。
……
わかってるくせに、よく言うよ」
自嘲気味に言い、煤墨はラジオをつけた。静寂に耐えきれずつけたそれからは明日の計画雨天についての続報が流れ、部屋に残る静寂の隙間を、無機質な音で埋めてくれる。
が、明日は雨か、と思った次の瞬間には、彼の傘の持ち忘れについて心配している自分がいることにも気づいてしまい、煤墨はまた少し、自分のことが嫌になった。
──明日になれば、と、煤墨は思う。
明日一日を予定されているらしい計画雨天の雨が終わり、空に晴れ間が覗くころには、今は離れた場所にある二人の形も、また「同じ」ものに戻るのだろう、と。
だって、煤墨の居場所はそこにしかない。鉉覇の隣が、あの太陽に照らしてもらえる場所だけが煤墨の居場所なのだと、鉉覇もわかっているから、ああも残酷な言葉を煤墨に向かって吐けるのだ。
けれど──
「
……
戻りたいよ、僕だって」
──戻りたい、と。
そう願ってしまうこと自体が、二人がもう決して以前と「同じ」二人ではないのだと示す証明になるということを、煤墨ももう、ずっと昔に理解している。
(
――
『最大公約ストロベリー vol.IF』より抜粋)
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