三毛田
2025-06-12 22:35:12
1072文字
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21 021. もし、君がそこにいるなら

21日目
そう言ってもらえるなら

「その足音は、穹だな」
「見えてないのに分かるんだ」
「拗ねるな。数日療養すれば、治る。龍女の薬もあるんだ」
「そして俺は、その薬を塗りに来ました。飲み薬も追加を貰ってきたから、それも飲んで早く毒を排出しろってさ」
「すまない」
「気にするなよ。というか、庇われた俺のほうが落ち込みそうなんだけど」
 唇を曲げると、見えてないのに笑って。きっと、普段の俺の態度からそういう反応をするだろうって想定したのだろう。
 数日前。
 依頼された素材集めのために二人で鱗淵境へ。
 見慣れぬ敵からの攻撃から俺を庇った丹恒は、目元に毒を浴びた。
 それはじわじわと内部へ侵食し、彼を苦しめ。
 今は塗り薬と飲み薬による解毒で、起き上がるまでには回復している。でも、見えない。
「穹」
「ん?」
「薬を塗り終わってからでいい。手を、繋いでくれないか」
「うん。いいよ」
 じゃあ、塗るから。と、宣言して目の周りに優しく塗っていく。
「お前の体温は、心地よい」
「そう?」
「ああ。もっと、触れていたい」
「んぐっ」
 丹恒に触れている時じゃなくてよかった。
 むせ込んだ瞬間に、変な触れ方をしてしまうところだったよ。
「穹?」
「ううん、大丈夫。塗り始める前と比べて、どう?」
「実感はあまりない。が、外見はどうだろうか」
「攻撃を受けてすぐは、痕が残ってた。でも、今は残ってない」
「なるほど」
「ダメダメ。塗ったばかりだから触らない」
「そうだな」
 顔へと伸ばされた手首を掴む。
「お前が、そこにいるなら今は安心だ」
「そんなに信頼してくれてるってこと?」
「ああ。お前のことは信頼している」
 頬に手を添えると、頬ずりして。
 また呼吸が一瞬止まる。
 可愛すぎるだろ、この人!
 ああ、今すぐキスしたい。でも、一度してしまったら、我慢が出来なくなってしまう。
「治るまでは、なるべく傍に居るから。トイレにも付き添うし、お風呂だって入れるから」
「風呂は雲吟の術でどうにかするから、トイレへ向かう時に手を引いてくれればいい」
「えー。丹恒の世話したいのに」
「お前の世話は、少々乱暴だから遠慮したい」
 そんな言葉が聞こえ、頬を引っ張る代わりに胸を揉む。
「こらこら。治ったら、好きなだけ触れればいい」
「言質はとったから」
 胸から手を離してから、頬を寄せ心音を聞く。
 恐る恐る手が伸びてきて、頭に触れ。優しく撫でられる。
 そのしぐさですら、愛しく感じて。
 早く治ればいいのに。でも、治らなければいいのに。と。
 矛盾した気持ちが湧く。