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nogirota
2025-06-12 12:44:23
1888文字
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【自機小話】英雄の姉【蒼天後】
蒼天後に故郷の様子を見に帰ったシフロストが去った後の話。
ゲーム内に居ないNPCしか居ない。
(前提> シ・フロストの故郷設定【含/蒼天】
https://privatter.me/page/679b761c4662d)
皇都イシュガルドを小さく下方に望む、雪深い山間にシ・フロストの生まれ育った集落がある。
外界との接触は香辛料を毛皮を替えてもらいに近くの村を訪ねる程度の隔絶された場所。
そんな場所にも群れの末っ子がイシュガルドを救い竜詩戦争を終わらせた英雄になっていた話は伝わってきていた。
「あの、冒険物語が大好きだったちびっ子が、物語に語られる英雄になるとはね」
母、シ・レハが、剥がし終えた獲物の革を広げながら感慨深そうに呟いた。
「あいつ、数年も経てば帰ってくるかと思ってたのに。これじゃ一生、外なんじゃないの」
同じ作業をしていた英雄の双子の姉、シ・フォグは母の呟きに返してぼやく。
20年余り共に暮らした半身のように思っていた弟が、遥か遠くに行ってしまったように感じ、寂しさが不満となって眉間に皺を寄せさせる。
「英雄なんて似合わない事しちゃってさ。押し付けられてるだけなんじゃない?あいつ頼まれたら断り切れないじゃん」
手を止め、集落の入り口を守る仲間へと目線をやる。彼女たちは強く逞しい。戦争は集落には大した影響もないというのに傭兵として戦争に加わりに行って無事帰ってきた。
昔から憧れの彼女らの方が、フォグにはよっぽど英雄として相応しいように思えた。
フロストは彼女たちのような強い人じゃないのに。
戦争後のある日、フロストはふらっと一泊だけ顔を出してきた。英雄だなんて、どれだけ格好良くなってしまったのかと思ったのに。集落にいた時と何も変わらない雰囲気だった。
そのくせ、鈍感なフォグにも彼がこの度で何度も傷ついてきたのは分かるほどには、1人になった時にはぼんやりと遠くを見ていて
…
なんだか話しかけ辛かった。
そうだ、昔から弱虫だった。あんなのがこの先も英雄なんてやっていけるとは思えない。
手先へ目線を戻して作業を再開しつつ、そんなことがブツブツ文句として垂れる。
その様子を見ていた母が、ふ、と笑った。
「
…
やる気はあるんでしょ。だってあの子”僕”って言うの辞めてなかったんだから」
「え?」
フォグにはよく分からない根拠に再び目線を上げると、母は遠くに見えるイシュガルドを眺めていた。
「子どもに聞かせる物語って柔らかい言葉を使うだろう。あの子が好きだった冒険譚でも、主人公は自分のこと僕って言うんだ。集落のもんは粗野なのばっかりだってのに、あの子だけ物語に憧れて。いつの間にか、僕とか言って柔らかい言葉使うようになってったんだ」
思い返して、確かに。と思い至る。
小さい頃は口調は大して変わらなかった。いつのまにか尚更ふわふわしたのはそのせいか。
物語に興味が薄かったフォグはそんな理由があったのかとようやく知った。
「その物語ってのは、主人公が大切な人を助けるために怪物を倒したっていう個人的な話だったから
……
国を救ったフロストの方がそのうち偉大に語られるだろうね。すっかり憧れていたものより大きな話になったようだけど。それでも続ける気だから、故郷に残りたくなっちゃう前に出てったのさ」
遠くを見る母と同じようにイシュガルドを眺める。フロストが眺めていたのもこの方向だった。自分が救った場所を眺めていたのだろうか。
「このまま帰ってこいって言えばよかった」
「断られるに決まってんじゃないか」
「
…
なら、連れてけって」
「長旅できないでしょ、身体弱いんだから」
「
………
だって
…
フロストには向いてない」
小さい頃は、初めて狩った獲物の死体が怖くて泣いて、しばらく狩りができなくなっては族長に叱られて泣いていたし。
成人を控えた第七霊災の後ですら、仲良くしていたエレゼンの老人の遺体を見つけて目も当てられなくなってたのはどこのどいつだと言いたい。
「向いてなかったとして、帰りたくなったら帰ってくればいいんだ。本当に嫌になった時か
…
ふんばって全部をやり遂げた時か。満足するまでやらせりゃいいんだ、家族はそのための場所だろう」
視界の端で、母が手を拭っているのが見える。もう遠くを見ているのはフォグだけだった。
「
……
その時が来る前に死んじゃうよ」
結局心配で寂しいだけだったのを、ようやく口からこぼしたのを見計ったように、母が頭を撫でた。
「死なないように、安心させてやんだよ。あたしたちが強いから、安心して挑戦できんのさ」
母だって心配なくせに、微塵もそれを見せないんだから。そんな強い人の肩にもたれかかって目を閉じる。
「
……
フロストは、甘えてやがる」
優しい悪態に、母は微笑み以外何も返さなかった。
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