ミリメートル
2025-06-11 22:14:48
1374文字
Public スケ荼
 

スケ荼SS🧩

セフレ期のスケ荼です。

 都合のいいセックスフレンドだと思う。荼毘という男の肉体は火傷によりあちこち爛れていて、まともに動いている臓器は多くないという。生殖器もその内の一つで、女を抱いて得られる快楽より、アナルセックスで身体の内側から与えられる刺激の方が気持ちいいらしい。
 突然押し倒されて、あれよあれよという間に挿入させられたときは「こういう強姦もあるのか」と思った。不快感より、好奇心とか自分自身の快楽とか、そういう俗っぽい気持ちが勝ったのは、スケプティックにとって意外だった。全然悪くない。男を抱く趣味などないが、動くのは荼毘だから目をつぶっていれば問題ない。
 一つ面白くないことがあるとしたら、荼毘のパーソナリティだった。父親に鬱屈とした劣等感を抱えている彼が年上の男に抱かれる趣味を持っているなど、十中八九父親の代替にされているに決まっている。別に、彼の唯一の男になりたいだとか薄ら寒いことを思っているわけではない。ただ、半ば自傷のようなセックスの相手をさせられるのは面倒なだけ。
「私は貴様のパパではないぞ」
 身体を重ねる、と表現するには乱暴すぎるセックスのあとに、ずっと思っていた一言を投げかける。すぐに後悔した。行為のあとで疲れているとはいえ、相手は荼毘である。機嫌を損なったら少し焦がされるくらいの覚悟が必要だ。
……え、何だ。俺に言った?」
 拍子抜けする。荼毘は驚くほどスケプティックの悪意に鈍感で、二人きりの部屋で言葉を投げかけられたことにも気付かなかったらしい。
「怒らないのか」
「意味分かんねーこと言ってんな、とは思ってるけど」
……皮肉を、言ったつもりだったが」
「皮肉? お前が、俺のお父さんじゃないって当たり前のことが、皮肉なのか?」
 彼の言葉に強がりの気配は感じない。どうやら本当に意味が通じていないらしい。
「お父さんとはセックスしないだろ」
「貴様に一般的な感性があることには驚かされたな」
「あぁ、おまえのそういうのが皮肉って言うんだろう。何、もしかして俺がお父さんの代わりにおまえと寝てると思ってるのか?」
「違うのか?」
「違うし、妙な発想だ。近親相姦に興味があるのか?」
「ないわ」
 荼毘の、どこに逆鱗が潜んでいるか分からない。機嫌を損ねるどころか軽口を叩かれてしまった。かなり酷いことを言ったつもりだったのに、言われた男が平気そうなことを、いっそ気味が悪いと思った。
「お父さんは、俺なんかに簡単に押し倒されてちんこ貸すようなやつじゃない。おまえだって楽しんでるんだろ。じゃあ、お父さんと間違えるわけないよな」
……難解だな、貴様のパパと私が似ていないということか?」
「っていうか、俺は別にお父さんに抱かれたいわけじゃないし」
「どうだかな」
「あは、何、おまえそんなこと気にしてたのか?」
 可愛いやつ、と目を細める荼毘はいよいよ異質なものに見えた。でもいい。この違和感の正体を探る元気が、セックスのあとに残っているわけがなかった。荼毘は怒らなかったし、どうやら誰かの代わりにスケプティックと寝ているわけでもないらしい。
 眠たくなってきた頭にはわずかに芽生えた優越感を自覚するリソースなどなく、珍しく無邪気に笑う荼毘を年相応で可愛いだとか、そういうらしくないことを考えることしか出来なかった。


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