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j
2025-06-11 02:16:07
3900文字
Public
楓応+恒刃
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仔猫と仔龍の戯れが
・謎現パロ
・深くは考えないでください
・猫と龍の赤子がもちゃもちゃしてるのが書きたかっただけ
・ほんのり楓応。恒→刃
「弟連れてきたぞ」
学校から家に帰宅して直ぐにベビーバッグに必要なものを詰め、疲労困憊な母親に断りを入れて友人宅に遊びに来た応星が、意気揚々と黒猫を模した着ぐるみロンパースを着た一歳の弟、刃の脇を抱えながら掲げて見せる。
「こちらも今機嫌がいいから会わせるなら今の内だ」
友人である丹楓に誘導されるまま、大きな音を立てないよう、だたっぴろい玄関と廊下を抜けてベビールームに通される。
そこには刃が着ているものと同じメーカーで、龍を模した着ぐるみロンパースを着た赤子が小さな球を壁に投げる独り遊びをしていた。
「おー、ちっちゃー」
応星の声に反応して振り向いた龍の赤子、丹恒は見知らぬ人間が現れた事に驚いて凝視する。それでも、案外肝が据わっているのか泣きはしない。
「お友達連れてきたんだ。仲良くしてくれると嬉しいなー」
「んー
……
」
知らない場所へ連れて来られ、不快も顕わに周囲を見回していた刃を床に置き、丹恒と対面させる。
学校は違えど、奇妙な縁で知り合い、親友となった丹楓と応星。
同じ時期に弟が出来、外出しても問題ない時期に会わせてみたいと密かに計画を立てていた。自分達と同じような、仲のいい友人になれれば、きっと楽しい。妄想ばかりが捗って、あぁでもない、こうでもない。と、話し合った決行日が今日である。
互いにどんな反応を見せるのか、兄達は心を躍らせながら見守る。
「にゃー
……
」
床に座り込み、不安そうに室内を見回す刃を見て、丹恒が可笑しな鳴き声と共に首を傾げたかと思えば、次の瞬間には床に手をつき、四つん這いで勢い良く刃へ近づく。
「ぎゃ!」
丹恒の勢いが良すぎて頭突かれた刃が悲鳴を上げる。
「あっぶね。お前の弟、はいはい早すぎないか?」
「あぁ、凄いぞ。人の足の間や家具の下に潜り込んで逃げ回る。彼奴がここから逃げ出せば、総出で追いかけっこだ」
「元気いいなぁ
……
」
丹恒に頭突かれて倒れそうになった刃の頭を支え、活発な丹恒に応星が感嘆の声を上げる。
個性の違いと言えばそうだが、刃は大人しい赤子で、泣く声も大きくはない。
年齢的に掴まり立ちを初めていい筈なのに、ぼんやりと何処を見てるのか解らない様子で座っているばかり。母親は発達に問題があるのでは。と、方々の病院、児童施設に相談したりと精神的に追い詰められてしまっていた。
今回の試みも、元気な丹恒と会わせる事が、ぼんやりとした刃の刺激になれば。との思惑がある。
「にゃー、にゃー」
丹恒が刃にしがみつき、撫でているのか叩いているのか、際どい手つきで頭に触れている。
「あれさ、刃を人間と認識してない奴?」
「うちに黒猫が居るから、それが大きくなったとでも思っているのかもしれん」
丹恒は興奮気味に刃へと顔を押しつけて、ふかふかした感触を楽しんでいるのか頬ずりが止まらない。刃が嫌がって手で追いやろうとして突っぱねても、ものともせずにしがみつく。
「丹恒君、猫好きなんだなぁ」
「そうだな、かなりしつこく追いかけ回すぞ」
応星の言葉に丹楓が頷き、その間にも丹恒の勢いは止まらず、押し倒してまで撫で回している。
「い゛ー!」
「にゃんにゃー」
押し倒された刃が、怒りを表すように足を蛙のように動かして入るが、宙を蹴ったところで抵抗にはなっていない。
「ん゛い゛い゛い゛ぃぃぃー!」
丹恒が刃の腹に顔を埋め、猫吸い宜しく刃吸いをしている。
「いつもあれやってんの?」
「やっている。猫も赤子相手には抵抗を諦めているらしくてな、そのストレスは私か家具に向けられる」
「猫に苛められてんのか。うける」
「殴るぞ」
「きゃ、怖い」
拳を握る丹楓に対し、応星がわざとらしく体を縮込ませて怯えてみせる。こちらは戯れの範疇ではあれど、刃はただいま多大な心労を与えられている事だろう。
「いーやー、もー!やっ
……
!」
刃が腹にある丹恒の頭を強く叩き、驚いて飛び起きた隙に傍に居た応星へと飛びつく。
「刃が自己主張を
……
!しかも今、立った?まじ?」
「嫌な対象から逃げるために全力を出したという事か
……
」
「にゃー
……
!」
刃を抱いて立ち上がった応星の履いたスラックスの裾を丹恒が掴んで引く。俺の可愛い猫を返せ。とでも言いたいのか。頬は膨らんで不満げだ。叩かれた衝撃は、龍の被り物が吸収してしまったらしい。
「脱がせてみるか
……
」
一旦廊下に出て、刃の着ぐるみを脱がせるとTシャツを着せて再び対面させる。着ぐるみに興味が湧いただけで、こうすれば、また違った反応を見せるだろう。と、考えていたが、丹恒は着替えた刃にもべったりとしがみつき、すりすりと頬ずりをする。
「単純に、刃が気に入ったのではないか?」
「なにぃ、一目惚れ?まじかよ丹恒君。あ
……
」
応星が声を上げ、表情が動く事が少ない丹楓ですら呆気にとられた様子に変わる。丹恒が、刃に口づけたからだ。
言っても頬ではあるが、何度も何度も繰り返しやっているため刃の頬は丹恒の涎でべとべとである。
「お前の弟って情熱的だな」
刃が体を反らして嫌がっているため応星が救出すれば、矢張り丹恒は返せと手足をばたつかせて癇癪を起こす。
「ふ、気持ちは解らんではないが
……
」
丹楓が苦笑すれば、応星が刃を腕の中に庇いながら表情を険しくする。
「お前がショタコンとは知らなかった
……
」
「誰が刃を好いとると言った」
丹楓がわざとらしい盛大な溜息を吐き、呆れたような態度を取る。
彼の真意に応星は微塵も気付かず、『ショタコン怖いでちゅねー』などと刃を出汁に煽って遊んでいた。
赤子が主であるため、この日は直ぐに解散したが、その後も機会を作って会わせていれば刃も気心が知れたのか相応に仲良く遊ぶようになった。丹恒と居れば呆けている時間が無いため言葉が増え、走り回るようになり、母親の心労も減ったとあって兄達の目論み通りに進み、大変満足な結果であった。
▇◇ー◈ー◇▇
「何を見てるんだお前等
……
」
休日の昼間から酒とビール缶を机に並べ、居間のソファーで寛ぎながら、テレビで動画を見ていた兄達を咎めるような口ぶりで丹恒が声をかけた。テレビに映るのは、着ぐるみを着て、室内をもちもちちょろちょろと動き回る物体。赤子の刃と丹恒である。
「何でそんなものを
……
」
隣に居る刃も、眉間に深い皺を寄せながらテレビを凝視し、疑問符をつけながらも嫌そうにしている。
「見守りカメラで撮った動画を保存したSSDが出てきてな、懐かしくて鑑賞会をしていたところだ」
「画質いいし、どうせなら大画面で見ようってなったんだよー」
兄達は既に社会人、弟たちは高校生となり、当時を振り返りながら懐かしむ程度には時間が経っていた。テレビの中では幼気な丹恒と刃がきゃあきゃあと声を上げながらボールプールの中で遊んでいる。
「や、止めてくれ
……
」
「この頃の丹恒君って刃にべったりだったよな、事あるごとにちゅっちゅしちゃったりさー、可愛かったなー」
「もの知らずな幼児のやる事ですから
……
」
丹恒の小さな制止は応星の声に掻き消され、刃は面倒そうに肩を落としてあらぬ方向を見ていた。既に酒臭い酔っ払いに何を言っても無駄なのだ。
「今日は揃ってどうした?」
「お互いに苦手なところの復習
……
」
丹楓が水を向ければ、ぽつ。と、刃が答える。
「助け合っているようで何よりだ」
満足気に頷き、丹楓は酒を口にする。
休日であるため、どこで何をしようと本人達の自由ではあるものの、弟達の動画を肴に酒を嗜むとは些か趣味が悪いようにも思える。
「お前も、この頃は刃に対して積極的だったが、今は腑抜けになったな」
刃への口調は優しいが、己が弟へは嘲るような様相である。
「大きくなってまで、べたべたしてたら可笑しいだろ」
丹恒が丹楓に対し、口を尖らせて反抗するも、弟の気持ちを知っている兄は鼻で笑う。べたべたしなくなったのではなく、出来なくなっただけだと。
理由は様々である。
同世代の子供に仲がいい事を揶揄られた。
大人から同性で手を繋ぐのは可笑しいと窘められた。
丹恒も成長して気持ちを自覚すると気恥ずかしさが出てしまい、側に寄れなくなった。
思春期にありがちではある。
刃が相変わらず何を考えているか解らないような、どこかぼんやりとした気質であり、余りに気にしていない様子である事と、『大事な友人を下らん感情で避けるのは阿呆のする事』などと丹楓に注意された経緯から友人関係は続いていた。
「精々頑張るがいい。学力が落ちれば下らん輩が煩いぞ」
「言われなくてもそうする。行こう
……
」
「ん、あぁ
……
」
丹恒が刃の手を引き、自室へと籠もる。
昔の己を見ているようで、歯痒くもあり、かと言って背中を押されても煩わしいだけだと理解しているため、丹楓は過剰に干渉はしない。
丹楓が応星と知り合い、親しみだした頃は周囲が随分と煩かった。それを、昔も現在も、結果を出す事で黙らせてきた。同じ苦労が丹恒に降りかかるだろうが、打開できるかどうかは本人の努力次第である。
「あ、この並んで寝てるの、おれずっとスマホのロック画面にしてる」
酔った応星が、丹楓の肩を叩き、見慣れたスマートフォンの画面を見せてくる。
「知っている」
「んあ、そりゃそうか」
何が面白かったのか、だはは。と、大口を開けて膝を叩きながら笑う応星を眺め、丹楓は幸せを噛み締めるのだった。
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