三毛田
2025-06-10 21:41:28
1063文字
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19 019. 優しさは嘘つきの常套手段

19日目
必要な嘘もあることは知っている

「何か用?」
 足を止めて振り返ると、不満そうな顔。
「何で気づいたの? 花火、気づかれない自信があったんだけどなぁ」
「用がないなら、帰れよ。俺はさっさと帰りたいの」
「芦毛ちゃんは、優しさってなんだと思う?」
「さあ? でも、優しさと甘さと、相手を見捨ててるは同時に成立するのは知ってる」
「ふうん。嘘つきの常套手段だったとしても?」
 何が言いたいのかわからず睨みつけるも、彼女は飄々としていて。
 関わるとろくなことにならないから、さっさと帰りたいんだけどな。
「優しいイコール、嘘つきなのはお前たちだけだろ。優しいから、嘘をついていることにはならない」
 そう。本当のことを言わないから、嘘つきになるわけではないと知っている。
 話したいけれど、話せない。
 少し前の丹恒はそうであった。
 だからといって、彼の優しさがまやかしだとか嘘であるわけでもなく。
「優しさを盾に色々するのは、詐欺師かお前たちだけだろ」
 俺の言葉が気に入ったのかどうなのかよくわからないけど、花火はニコニコ笑っているだけ。
「じゃあな」
「葦毛ちゃん、またね~」
 こいつがあっさりと見逃すとかありえない。って気持ちが強くて、しばらく警戒しながら歩く。
 しかし、何もなかったので安心して部屋へ。
「ただいまー」
「おかえり。今日は思ったより遅かったな」
 ソファーでくつろいだように本を読んでいた丹恒は、俺をの姿を見ると微笑んで。
「お風呂入ってくるから、待ってて」
「ああ。飲み物は用意しておく」
「ありがとう」
 不安がまだ胸のうちで渦巻いているので、抱き着きたかったけれど。でも、我慢してお風呂で埃を落として、髪の毛を乾かして出てくる。
「おいで」
 頭に乗せたタオルを落としながら、丹恒の胸に飛び込む。
「お疲れ様。何か不安なことがあるか?」
「ちょっとだけ。でも、丹恒の顔を見たらどうでもよくなってきちゃった」
 嘘じゃない。
 丹恒の顔を見て、こうやって胸に顔を埋めて。甘やかしてもらうと、その不安はゆっくりと溶けていく。
「少しでも、お前の不安が消えたのならば俺は嬉しい」
 そっと、慰めるかのように頭を撫でてくれて。
「丹恒、大好き」
「ああ。俺も好きだ」
 視線が絡み合って、どちらともなく口づけを交わし。
「嘘ってさ、必要な嘘もあるし、優しい嘘もあるよな」
「ああ。時に必要な嘘は、己を守るために口から出すこともある」
「うん。わかってる。丹恒、出来るだけ俺と一緒にいて」
「お前が望むなら、出来るだけいよう」