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roku
2025-06-10 20:54:41
2424文字
Public
松エジ
好きな人いるんですか?【松エジ】
・同室者が部屋に恋人を呼んだことで追い出された沢北が松本の部屋に行く話
松エジの日後夜祭をしたくて書いたわちゃわちゃしてるだけの話
「松本さん!松本さ〜ん!!」
廊下の向こうから名を呼ぶ声。近づく足音が部屋の前で消え、代わりにドンドンとノックというにはいささか乱暴に叩かれたドア。中にいる松本が返事をするより先にガチャリと開いたそこから顔を覗かせたのは後輩である沢北だ。
「お前なぁ
…
もうちょっと静かにやって来い」
来るなとは言わないあたり、松本は沢北に甘い。
「さーせん」
「で、こんな時間に何の用だ?」
時計は22時半を指している。あと30分もすれば就寝時間だ。
「とりあえずお邪魔しまーす!」
「おいっ!」
沢北は部屋に入るなり松本のベッドに腰を下ろす。静かにドアを閉めた松本は溜息をつき沢北の隣に座った。
「松本さんって好きな人います?」
「
………
」
突拍子がないのはいつものことだが、頭の中はバスケ一色だと言っても過言ではない沢北の口からそういう類の話が出てくるとは思わなかった松本は返事に時を要してしまった。
「松本さん?聞いてます?」
「お、おう。好きなやつな。いるぞ」
「えぇー!松本さんはオレの仲間だと思ったのに〜!」
その口振りから他のやつらにも同じ質問をしたことが想像できた。そして沢北にはそういった人はおらず、松本もまたそうだと思われていたようだ。
「ははっ!何だよそれ。まぁ別にいてもいなくてもよくねぇか?」
どのみち意中の相手がいようがいまいが、ここにいる間はバスケ漬けの毎日に変わりなく、何かが起こる可能性は万に一つもないのだから。
「ダメです!松本さんに好きな人がいるのは納得できません!!」
「あ?何でだよ?」
「オレが嫌だからです!!」
はっきりそう言った沢北。それは暗に沢北が松本のことを好きだと言っているようなものだった。松本は呆れながらもそもそも事の発端は何なのか。なぜそんな話になってるのか。と訊ねた。
「あー。オレの同室のヤツなんすけど、付き合ってるヤツがいるんですって」
「ふーん」
「聞いてきたのに興味なさすぎ!」
「高校生なんだからそういうこともあるだろ」
誰もがみんなバスケ部のように部活に全てを賭けてるわけじゃない。いうなればバスケ部が特殊なのだ。
「それはわかんないっすけど。で、今日部屋に呼んだから就寝時間までの間先輩んとこ行ってって追い出されたんす」
ひどくないですか?と唇を突き出し拗ねている。突然部屋から放り出された沢北は談話室で他のヤツらにさっきの質問をしたのちここに来たのだろう。可哀想ではあるが松本にとっては棚からぼた餅であった。
「わざわざここに来なくても時間まで談話室にいればよかったんじゃねぇか?」
「松本さんにも聞いて来いってイチノさんが!」
万に一つの何かが起こる可能性が高まり口元が緩む。「貸しひとつだよ」と一之倉が笑う姿が見えた気がした。
「で、お前は好きなヤツいねぇのかよ」
「いないっすよ。あ、先輩たちのことは好きっすけど、それとは違うやつですよね?」
「そうだな」
「松本さんの好きな人ってどんな人ですか?」
「気になるのか?」
「まぁ
…
」
気にはなるが聞きたくない。そんな気持ちが込められた返事。もちろん松本はその理由に気づいている。
「
……
同級生っすか?」
「ん?後輩」
「
……
そうなんだ」
「背が高くてスラッとしてる」
それだけで美人ぽいんだけど
…
と不服そうだ。
「どちらかといえば美人というより目がくりっとしてて可愛い方だな。初めはツンとしてたけど、一緒に過ごす時間が増えて今では随分懐いてくれてるぞ」
「
………
は?そんなの向こうも好きじゃん!!絶対そうじゃん!!マジで意味わかんねー!!何なの!?」
「そうなのか?」
「そうでしょ!そんなの経験ないオレでもわかるっすよ!!」
松本と相手の仲が良いことに腹を立てているのか、そこまでわかりやすいのだから気づけよ、ということなのかはわからなかったが、どちらにせよ松本は上がっていく口角を隠すために口元を押さえた。
「そうか。なら沢北はオレのことが好きなのか?」
「
………………
え?」
「だから、沢北はオレのことが好きなのかって」
軽く腰を上げて沢北の方へ寄りその顔を覗き込む。大きな瞳をさらに大きく開いて瞬きを繰り返している。
「えっ、と
……
それは、
……
どういう
…
??」
「“向こうも好き”なんだろ?」
「それは、その後輩が
…………
って、え?もしかしてオレ!?」
「ははっ、そうだぞ」
肩を抱き寄せるとビクッと身体を強張らせた沢北の顔は一気に赤色に変わる。
「ほら。美人というより可愛い」
そのまま顔を近づければ俯ききゅうっと閉じられた瞳。松本はその瞼に軽く唇で触れた。
「ちょ、ま、松本、さん!!」
「どうした?」
「待ってください!!」
「待たねぇ」
「無理!!心臓持たないってば!!!」
力強く押し返すも、そこは日頃から沢北と同じように鍛えている松本である。当たり前だがビクともしない。
「好きか嫌いかって言われたら好きですけど!!でも!!!」
沢北は自分の気持ちは恋情ではないと言いたいようだ。だが思いの度合いは違っても、種類が同じであることを松本は知っていた。
「ならオレがお前以外の誰かと付き合っても問題はないってことだよな?」
「
……
いや、それは
……
問題、しかない
…
気が、します」
考えながら口にする言葉は普段と違ってたどたどしい。
「ならオレとお前が付き合うことに何の問題があるんだ?」
不敵に笑う松本はじわじわと沢北を追い詰める。
「問題は
…
ない、ですね」
答えを聞くや否や沢北を抱きしめそのままベッドへ雪崩込んだ。
「え
…
え?えぇ!!??いや、待って!待ってってば!!」
「散々待った。もう待てねぇよ」
松本は沢北の上に覆い被さるようにして、その騒がしい口を己の口で塞いだ。
就寝時間まで残り5分。
熱を上げた沢北が目を腫らし「ここで寝るんで!」と、松本のTシャツを掴んで離さなくなるまで残り5分。
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