ろころころ
2025-06-10 16:58:57
2041文字
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みらいよち/pk擬 フロツヴァ





その日、ツヴァイはご機嫌だった。



理由の1つは、2日でツヴァイに初めての後輩が出来るから。


みんなの後輩として可愛がられてきたツヴァイは、別に今の環境が気に入っていなかったわけでは無い。けれど、後輩が出来るということはツヴァイも教えられることがあるということ。期待と不安で胸を膨らませた後輩に寄り添ってあげることが出来るのは、そのドキドキをまだ覚えている新参のツヴァイだけなのだ。

2つ目の理由は、もうすぐ夏がやってくるから。雨が降り続けどんよりとした空気に嫌気がさしてくる梅雨が明れば、カラッと晴れた気持ちの良い季節がやって来る。

夏といえば海。
海といえばサーフィン。

「サーフィンといえばアロライ!いえーい☆」

というわけで、ご機嫌にもお得意の空中サーフィンでスタジアムの廊下を走っていたツヴァイは、曲がり角で誰かとぶつかった。

「わわっ!ごめん!大丈夫かい!」
ええ、大丈夫よ。ふふふ、なんだかご機嫌だったわね」

顔を上げれば、穏やかに笑う女性。

「あ!ユピテルちゃん!こんにちは!」
「ええ、こんにちは」

サーナイトのユピテルは、同じエスパータイプのアタック型としてツヴァイも面識があった。穏やかで心優しい彼女は、初めての事ばかりで戸惑うツヴァイにも率先して手を貸してくれた。

「えへへ〜!ユピテルちゃんも知ってるでしょー?新しい子が来るの!」
「あら、ルチェちゃんのことかしら?もちろん聞いているわ。ピンクが大好きな女の子だとか」
「そうそう〜!ようやくボクも先輩になるのさ!ルチェちゃんが来た時はユピテルちゃんみたいに良い先輩になってみせるよ☆」
……ふふふ、そうね。ありがとう」

彼女はいつだって穏やかだ。役割上、色々と言われることも多い彼女だが、そのような輩に腹を立てることもない。強くて優しいポケモン。

………あら?」
「んぇ?どーしたの?」
ふふふ、なんでもないわ。私はもう行くわね」
「えぇっ!?行っちゃうのー!?もっとお話しようよ〜!」

踵を返そうとする彼女を止める。ユピテルはそんなツヴァイを微笑ましげに眺めると、

「人気者な貴方をずっと独占するのは申し訳ないもの。他にもお喋りしたい子が、順番を待ってるみたいだから」

そう言って、ふわりと姿を眩ませた。

「えー?順番を待ってる?うーんどういうことだろ

辺りを見渡しても誰も待っている人なんていなかった。彼女の気のせいではないだろうか?もしくは

「うーんユピテルちゃんは見えないものとかこととかを感じ取るのが得意……ってことは、姿が見えてない!あ!わかったよー!」

姿を消すことが出来てツヴァイがよく話すポケモンといえばただ1匹。

「フロウ〜!ふろーーーーう!!!!どこー!!!!」
……………
「ふろーーーーーーーー!!!!!」
「だーっ!うるせぇ!!!!」

まるでもう我慢出来ないとでもいうように、影の中から1人の青年が姿を表した。

「あ!やっぱりフロウいた!探したよー!」
「探した、だぁ?ケッ、叫んでたの間違いだろ」
「ねねね!フロウはボクとお喋りするの待ってたのー?ユピテルちゃんが言ってたんだ!あっ、ユピテルちゃんっていうのはサーナイトの選手でね?」
…………はーーーーー

開幕からまくし立てるツヴァイを、青年は呆れたような様子で見た。もちろんツヴァイはそんな青年の様子など一切気にとめず、青年の周りを楽しげにくるくると回っていた。

「お前と話すために待ってたんじゃねぇ。アイツがいなくなるのを待ってたんだ」
「ええと、アイツって?」
「ケケッ。あと数秒ですっ転げるような奴には教えらんねーなぁ?」
「えっ?うわぁっ!」

彼の周りをくるくると回っていた彼女のしっぽはいつの間にか彼に巻き付き、引っ張られたことで急ブレーキの掛かったサーフィンは大きく揺れる。転げ落ちそうになったところを、青年に抱きとめられた。

「あ、危なかったー!フロウ、ありがと!」


青年は溜息を吐く。同時に思い出していた。彼がツヴァイに姿を表す前─────ここにいたサーナイトのこと。

おそらく彼女は青年の存在にも、青年が意図的に自身を避けていることも気づいている。何せ、サーナイトとは他者の感情と未来を読み取るのが得意なポケモンなので。

そんな彼女がサイコパワーで先程送ってきたメッセージ。


『彼女を付け狙う人がいるわ。どうか気をつけて』


…………ったく、サーナイトってのはお人好ししかいねえのか?」
「フロウ、何か言った〜?」
「ケッ、お間抜けなどこぞの誰かさんのせいで俺の仕事が増えたって言ったんだよ!」
「えーっ!?それってボクのこと!?」


酷いよ〜〜〜!!!とポコポコ叩いてくるツヴァイと、ツヴァイを担いだ青年はその場を立ち去った。エオス島のほんのひと時の話である。



Fin