wawan78
2025-06-10 10:14:30
3002文字
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ジャングルピンク大作戦

ドルネド 👁√主人公
召喚のくだりは捏造です

名前名前名前名前名前名前名前名前名前名前 唐突に「あっ」と言うので、ドルネドは銃の中に詰まった焦げカスを広げた紙の上に落としてから振り返った。名前はのんびりおやつタイムだったはずである。

「呼ばれてしまいました」
「何にだ?」
「ちょっと行って参りますね」
「どこに……

 そして名前は消えた。そういうこともあるのかと素直に驚いている。ドルネドは分解した銃にパーツを戻しながら、名前の行き先を考えた。
 あれは神として振る舞っていたことがある。あの種族は召喚の儀式があり、呼ばれたら行かねばならないのが習わしだとか。別に義務でも何でもなく「約束した以上はやらなければ」という程度なのが面白い。さて、そういった召喚するタイプの神を求める者は大抵がカルト教団である。そして何を要求するかといえば、大いなる力を授けよとか、世界を滅ぼせとか、大概そんなものである。であれば。
 ドルネドは特に焦ることもなく名前が残したスナックをつまみ、弾薬と火薬の在庫を確認した。充分に貯め込んである。これくらいあれば大きめの組織ひとつ潰すのには満足だろう。
 それから数日が過ぎた。そろそろ情報を仕入れるかという頃合いになって、いつもの情報屋から依頼が届いた。

「とあるジャングルの奥地にカルト教団が住み着いているんだが、そいつらがどうも邪神を呼び出したらしい。今回の依頼はその邪神の撃退だ」
……撃退」
「さすがのお前も神を殺すのは骨が折れるだろ?」
「その場からいなくなれば良いんだな?」
「ああ、まあ、そうだな。あんなよくわからん集団に全能の神なんか置いたらよくない」
「いいだろう。契約成立だ」

 というわけで草木生い茂り大樹そびえるジャングルにやってきた。湿気でフードがしっとりと湿っている。このジャングルはかつて古代文明が栄えたらしく、石造りの遺跡や今も稼働する絡繰などが潜んでいて、好奇心で潜入した愚か者を容易に排除していくダンジョンだ。ドルネドはたまにわざとトラップを起動させて神殿を崩落させたり、住み着いた怪物を捌いて食べてみたり(あまり美味くなかった。スパイスがないと臭い)、そうして進んだ先にひときわそびえ立つ大神殿に到達する。樹上で小虫を潰しながら観察してみると、カルト教団であろう人影が何人も頻繁に出入りしているのがよく見えた。どうやらここが彼らの生活拠点らしい。……のだが。

 なんでピンクなんだろう。
 しかもあの……なんだ、あの、頭の。

 カルト教団というのは大抵が暗い色のローブやフードを身に纏い、いかにも謎めいた存在であることを主張するものである。あんな蛍光ピンクのミニスカートワンピースなんてまあまあ着ない。しかも頭には、白いレースの飾りをつけている。なんといったか、そう、ヘッドドレスとかそういうやつだ。これにはさすがに経験豊富なドルネドもちょっと思考が停止した。老若男女揃いも揃って蛍光ピンクのミニスカートワンピースにヘッドドレスである。威厳たっぷりな幹部らしき信者も軒並み蛍光ピンクのミニスカートワンピースにヘッドドレスである。
 しかしここに名前が呼び出されているのなら、なんかそういうことでも指示したのかと適当に納得できた。ラスボスがわかっているのは楽でいい。刺激はないがこういうパターンは珍しい。最近あいつはそういえばピンクとかレースとかフリルに興味を示していた。ちょうどいい機会だと信者を着せ替えて試しているのだろう。

 よくそんな無茶ぶりに従うものだと呆れるのはあとにしておく。

 さて、普段ならカルト教団などさっさと撃ち抜いていくのだが、もし仮に名前がこいつらを気に入っていたら、ショックを与えるだろう。ここは皆殺しにしない方のフルステルスで進むことにする。光学迷彩を起動して大樹から飛び降り、物陰にかくれて迷宮のような大神殿を進んだ。道中蛍光ピンクの……面倒だからもうピンクと呼称する。道中、ピンクの信者が迷って事切れている亡骸を度々目撃した。生活拠点で迷って死ぬんじゃない。
 そんなダンジョンだからだろうか。奥に進むにつれ人影はなくなり、光学迷彩の意味も無くなった。そして最奥の祭壇に到達すると、石造りの玉座に思い切り不服そうに寝転がる名前の姿があった。

……何をしている」
「遅いですよ貴方。自分の元を離れるなら連れ戻すとか断言しておいて何ですかこの体たらく」
「すまないな、あまりに情報が少なくて待ちの時間があった。それより何だ、このピンクは」

 問うと名前は不機嫌そうな顔をくしゃっと歪めて泣き出した。

「だって……だって呼び出しておいて言うことが『我らをお導きください』だけなんですもの」
「またそれは随分と漠然とした依頼だな」
「でしょう? 普通もっと何かありません? 全能の知識を授けよとか大いなる力を与えよとか世界を滅ぼせとか支配せよとか! 何にもないんです何にも! どうしろと言うのですか! あっフルーツは美味しいですどうぞ」
「ほう。……うん、美味いな。いくつか持って帰ろう」

 香りと強い甘みはドルネドの好みではないが、果汁を酒に入れたら良いカクテルになるのではないか。赤い殻に覆われた果実をいくつか懐に入れて名前が泣き止むのを待った。つまりやることがなくて適当に啓示したらみんな有難がって馬鹿正直に従っているというだけらしい。信仰とは盲目である。

……で? どうする」
「そもそも貴方何しにいらしたんです?」
「依頼でな。邪神を撃退しろという」
「いいなあ具体的な依頼内容で」
「契約前に交渉して内容を詰めておくことが大切だ。ふたつ返事で請け負うものではない」
「学びました。それで? 私を撃退します?」

 依頼内容は「邪神がその場からいなくなれば良い」だ。連れて帰ればそれで目的は達成できる。しかしそれではつまらない。用意した火薬と弾薬がもったいない。
 ドルネドは確認を取ることにした。

「お前はここの連中を気に入っているか?」
「え、別に……

 であれば。

 翌日ドルネドは大神殿の正面を爆破してその爆炎とともに撃ち込みを開始、あらゆる場所を破壊してまわり教団は混乱と怒りで慌てふためいた。呼び出した神に祈りを捧げるもあえなく瓦礫の下に沈み、最奥から顕現した「神」は触手を振り乱して応戦、ふたりは戦いながらジャングルの奥へ消えていった。
 あとには、我に返りヘッドドレスを炎に投げ捨ててピンクを脱ぎ土に埋めた、全裸教団員の成れの果てが残るばかりであった。

 * * *

 ジャングルから持ち帰ったフルーツは思ったとおり酒によく合い、エキゾチックな雰囲気のカクテルとして塩気のつよいものとマッチする。ほろ酔いになった名前は殻を剥いたフルーツをそのまま齧っていた。

「召喚の儀式なんて覚えている人たちがまだいたなんて、驚きです。最後に使われたの何年も前ですよ」
「ということはこれからもこういうことが起き得るということか?」
「そうですね。ないとは言えないかと」
「ふむ」

 やけに視覚センサーに残っている鮮明なピンクは面白かった。しかしなんの戦闘もないのはつまらない。
 ドルネドはグラスを置いた。

「次に呼ばれたら完全武装させろ」




(もっと腕にダイナマイト巻いたりさ)