呪里
2025-05-27 18:23:42
1017文字
Public Code_Abyss 本編
 

episode:??  〈幕間〉


 いつからだろうか

 物心ついた時には真っ暗な場所にいた

 閉じ込められて出ることは出来ない

 自分が誰かも分からない

 時々くる自分より大きな人達は

 私を殴り

 私を蹴り

 何かを吐き出すように怒鳴っていた

 あの頃は言葉が理解できずにいた

 言葉を知らないから話す事も不可能で

 でも

 今になったら分かる

 確かに彼らは言っていた

 「みにくい赤毛の子」

 「灰白色かいはくしょくの瞳よ気味が悪いわ」

 「けがらわしい」

 「お前なんて産まれて来なければよかったったんだ」
 
 「早く死ね」

 毎日毎日そんな言葉を浴びせられた

 どれだけ泣き喚いてもやめてはもらえず

 食事は一日にコップ一杯の水とパンが一個もらえるだけでご馳走の様に感じた








 ある時急に抵抗する事がバカらしくなって

 糸が切れたかのように何をされても反応しなくなった

 大きな人達から暴力を受けても

 どれだけ汚い言葉をかけられても

 泣く事も 笑う事もしなくなった

 ロボットの様に常に無表情の子供

 そんな子供を不気味に思ったのか

 大きな人達は食事を持ってくる時以外来なくなった

 広く 暗い 闇のなか

 朝も夜も知らない

 目の前はどこを見てもずぅっと黒かった

 体は痩せこけ

 立ち上がることさえ出来ない

 視力も衰え ほとんど見えなかった





 光が見たい




 唯一知る光は 大きな人達が持っていた

 ゆらゆら揺れる小さな光

 あれ以上の光はきっと見れないんだろうと

 あの時までは思っていた



 あの子が来るまでは










 いつの日だったか

 あの子は突然やって来た

 大きな人達の目を盗んで

 小さな足ででこぼこな地面を駆け

 横たわる子供のいる檻の前にしゃがみこみ

 ポケットからクッキーを一枚差し出して

 「おねぇちゃん れんとあそんで?」
 
 にっこりと笑いかけた





 あぁ 眩しいな

 きらきらしていて 見ただけで目が潰れてしまいそうだった

 れん

 憐

 私の可愛い可愛い

 たった一人の妹

 たった一人の血の繋がった家族

 あの時見つけてくれて ありがとう

 私を姉と呼んでくれるから

 私のそばに今もいてくれるから

 きっと私は私でいられるのかもしれない