シャアはシャリア・ブルと共に過ごす時、彼の木星船団時代の話を聞くことを好んだ。
地球と月そしてラグランジュポイントに設置されたサイドのスペースコロニーの間では頻繁な往来が可能になったあとでも、他の太陽系の惑星しかも木星に行くことはものめずらしいことだった。正確に言うならば、それが可能な宇宙船を用意するのは未だ人類には簡単ではなかったのだ。
「木星に行ける人間は人類の中でも選ばれた存在ということにならないか?」
シャアはシャリアに語った。シャリアは面映ゆい思いでそれを聞いていた。自分はそんなえらそうな
存在ではないのだ。
「誰にでも行ける場所ではないだろう」
「そんなことはありません」
「そうかな」
シャリアは少し考えこんだ。自分の考えがどうやれば
相手に伝わるのかを考えていた。
「木星行きの切符を得るのはさほど難しいとは思えません。『親しい人たちとももう二度と会えないかもしれない』ということを受け入れながら生活することさえできればいいのです」
シャリアのその言葉にシャアは驚きを隠さずに答えた。
「それは普通の人間には難しいよ、シャリア」
シャアにそう言われて、シャリアはまた上手く伝わらなかったのだと分かった。
「そうでしょうか。たとえコロニーにいたとしても、誰の近くにも死はあります。木星に行かなければそれを免れるというものではありますまい」
この男の死生観は普通のものではない。シャアはそう思った。『木星帰り』とはそういうものなのか
――
「たとえば大佐、あなたもそうでしょう。死は常に横にある。二度と会えない大切な人もいる」
「
……それは」
シャリアに言われるまでもなかった。確かにシャアは親しい人たちとの死別や生別を繰り返し、今ここにいる。
「そういうことなんです」
「いやいや、今丸め込まれるところだったが、やはり君の考え方は普通じゃないぞ」
「では、そういうことにしておきましょう」
了
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.