雪華
2025-06-08 19:57:16
2071文字
Public テリサイ
 

【テリサイ】好きなところ

先生がテリに、自分のどこが好きなのか聞く話です。服着てるけどめちゃくちゃ事後です。

「キミは、私のどこが好きなの」

唐突にサイラスがこぼした言葉に目を瞬かせる。あまりにも突然だったせいか、浮かんできた文句がそのまま口から出ていた。

「今言うことか? それ」

月明かりが差し込むだけの薄暗闇の中でも、向かい合って同じ毛布に包まるサイラスの眼は煌めいているようによく見える。二つの寝台の内の片方は、先程散々シーツを掻き乱してめちゃくちゃにしてしまっていた。片付けは明日に回すことにして、きれいな方の寝台に入って蝋燭を消したところだった。
テリオンとしては、その行為の最中に示したつもりだったのだ。どれだけサイラスのことが好きで、傍にいられることを幸福に思っているか。ところがこの様子だと、さっぱり伝わっていないらしい。――俺が好きでもない相手に欲情した挙げ句に、間抜けに腰を振っていたとでも思っているのか、とまでは流石に口に出す気はなかった。

……聞きたいのか?」
「ぜひ、ご教授願いたいね」
「はあ……

思わず吐いてしまったため息は、どうして伝わらないものかという嘆きだ。しかしサイラスは別の意味と受け取ったらしく、取り繕うような笑みを見せながら、毛布をかけ直すふりをした。

「寝入り端にする話ではなかったね。疲れているだろうにつまらないことを言ってすまない、もう休もうか」
「そうじゃない。……態度で示していたつもりだが、あんたが聞きたいんなら聞かせてやる」

そう言って目の上に口付けると、彼は反射で瞼を閉じた。不意打ちのキスにはいつも目を瞑ってしまうところが可愛い。

「まずはあんたの眼。宝石のように輝いていて、いつも真っ直ぐに俺を見てくれる」
「ん」
「次はここだ。特に、新しい知見を得たとか言ってはしゃいで笑っているのが好きだ」

なめらかな頬に口付けて、次は高い鼻先に。柔らかな唇に自分のそれを重ねた時には、彼も予見できていたのか、水面のような瞳にテリオンの顔が映り込んでいた。

「ここも……柔らかくて、噛み付きたくなるくらいだ。あんたが語ることは小難しいが、付き合うのは嫌いじゃない。それから、あんたの声を聞いていると落ち着く……

痕が付かない程度に喉元に軽く吸い付くと、細い体がひくりと跳ねた。その動揺をなだめるように、寝間着越しに背中を撫でる。背骨の形を確かめながらゆっくりと撫で下ろして柳腰をさすると、彼は恥じらうように目を伏せて身じろいだ。

……そういう、うぶなところも可愛いもんだな」
「か、からかわないでくれ」
「自分から聞かせろって言ったんだろ。……あんたはいつも理屈っぽいが、俺はそういうのは門外漢だ。だからこうして行動で示してる」

毛布の中に顔を埋めて、薄い胸板に頬を付ける。少し速い鼓動を確かめて、胸の中心に服の上から唇を寄せた。

「て、テリオン……
「あんたは……自分に自信がある癖に、肝心なところがやけに鈍くてずれている」
「それは悪口では……?」
「そういうところも全部含めて好きだ」

テリオンの頭を胸に抱くように、優しく髪を撫でてくれる手付きも好ましい。サイラスこそが、こういう温かな触れ方を教えてくれた。傷一つない指先が額を掠め、くすぐったくて視線を上げる。普段はぶれることのない眼差しが、夜の闇に包まれて揺らいでいた。

……面倒だと思わないかい?」
「別に。あんたがそういうことをするのは、俺だけだろ」
「そうだね……キミだけだ。キミが好きだから、困らせてはいけないと思うのに……どうしてだろうね」
「構わないだろ。恋人に甘えて何が悪い?」

すると長い睫毛がぱちぱちと短い間隔で瞬く。自分の胸の内にある感情と、言葉が結びついたときの表情だ。知識と体験が重なり合った瞬間のひらめきを間近で見るのは楽しい。きっと、テリオンも似たような顔をしていることがあるだろう。そうして、サイラスは穏やかな笑みを浮かべた。

……ふふ、キミの言う通りだね。教えてくれてありがとう」
「ああ……不安になったらいつでも言ってやるよ」

毛布から頭を出して、サイラスの背中に手を回して抱き寄せる。こうして寝転がっていると、同じ視線の高さで彼と抱き合えるから、テリオンは気に入っている。同じように背中に回された手が温かく、眠気を誘う。
わずかに微睡んでいたからか、普段なら素面では言えないような言葉もぽろりとこぼれた。

……挙げればきりがないが、本当は理由なんてないのかもな」
「どういう意味だい?」
「魂が惹かれているんだ。あんたの外見が変わっても、器用になって部屋の片付けが得意になったとしても、変わらずサイラスを愛し続けると思う」
……すごい口説き文句だ。キミって、意外とロマンチストだよね……

照れ隠しの言葉なんて、言われても痛くも痒くもない。返事の代わりに口付けて、彼の鼓動が落ち着くように背中を擦ってやる。――そうしている内にいつしか二人とも眠りに就いていたらしく、翌朝目が覚めた時には、それぞれ妙に気恥ずかしくなってしまったのだった。




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