kanaco
2025-06-08 09:19:33
1256文字
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【十二信】箱入りの子

1000文字以下でお話を書く練習中…だったけど3回目も失敗。1200文字。十二信。
十二信と言うのに、信一と四仔しか出てこない。

「抱かれたい!」
昼休憩のための「診療時間外」という札を無視した信一が、不躾に部屋へ押し入りそう言い放った。

「は?」
普段であれば問答無用で追い出す四仔だが、今回ばかりはその言葉に耳を疑い、聞き間違いかと顔を向ける。

「もーう!レスレスレス!」
そんな四仔を無視した信一は診療ベッドにダイブすると、子供じみた仕草でシーツをポカポカと叩き始めた。信一の恋人といえば当人の幼馴染でもある十二だが、何かあっただろうかと四仔は記憶を辿る。当然だが何も思い浮かばない。砦住人の中では親しい2人とはいえ四六時中彼らといるわけではない。

「ケンカか?」
「そんなことしてない」
「じゃぁ何だ」
「抱かれたい」

聞き間違いではなかったその言葉に、四仔はうんざりした表情を浮かべた。
信一は再びベッド上でジタバタし始める。

「もう1ヵ月もしてないっ」
「欲求不満がすごい。ムチャクチャ抱かれたいっ」
「乱暴でもいいから嚙み痕いっぱいつけられたいっ」

ぴゃーっと喚く友人に、わぁと遠い目をした四仔は呆れ過ぎて好きにさせることにしたらしい。信一には目をくれず、自分はデスクに向かうと書きものを始めた。それでも話相手になる気はあるらしく、ため息交じりに声をかける。

「そういうことは本人に言え」
「あいつ、忙しくて砦に来ねぇんだもん」
信一が動きを止めてチラリと四仔を見た。何に忙しいかは言えません、とその顔に書いてある。
「先週、砦に来ただろう」
「あの日は砦がトラブル続きで俺が疲れてたからくっついて寝ただけ」
「先々週は?」
「十二が抗争で暴れた後だったから性欲ゼロ」
あいつ、血が流れると興奮して性欲も一緒に発散されるんだよな。
「黒社会め」
友人のそんな事情、聞きたくもないのだが。
「時々は暴動に興奮しすぎて発散間に合わなくて、性欲に直結してギラギラする時あるんだけどそういう時は俺に指一本触れてこねぇの」
「?」
「理性を最初からぶっ飛ばした状態で俺を抱きたくないんだってさ。危ないからって」
獣人扱いされている割には紳士なんだな」
「返すんだって」
「返す?」
「本人曰く子供の頃の苦しい時期に俺に大事に大事にされたから、それを返すんだって」
「ふぅん」
「俺、龍兄貴の箱入りだけど十二の箱入りよ」

そこも好き、と信一は呟く。

「だが?お前の今の気分は?」
「ハードセックス、ばちこい!」
若い娘に向ければ黄色い悲鳴が上がりそうなウィンクとスマイルを、悲鳴が霧散しそうなセリフと放って四仔にキメた信一は、もちろん無視を決め込む友人に「んん?」と首を傾げる。

「さっきからずーっと何書いてんの?」
眠そうな熊のように緩慢な動きをした四仔は、表情筋が真顔の割には好奇心を秘めた目をして返事した。
「精力アップに効く食べ物と漢方を煎じて十二の食事に混ぜ込もうかと食材と案をリストアップしてる」

「俺、お前のそういうとこダイスキ♥」
信一は目と口を三日月のように弧にしてニンマリと笑った。