三毛田
2025-06-07 21:58:33
1075文字
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16 016. 指切りでからめた小指

16日目
君との幼い日の約束

『約束! 大きくなったら、俺のお嫁さんになって!』
 小指を出しながら、真っ赤な顔で告げた。
 俺の言葉に対して、あの子はなんて答えたんだっけ? 思い出せない。
……
 タオルケットと共に、床に落ちて。
 けたたましく鳴り響く目覚ましを止めるため、手を伸ばす。早くしないと、星がうるさいと乗り込んでくるから。
 自分だってうるさいくせに。
「穹、起きているか」
「はぁい。起きてまぁす」
 ノックとともに声がかけられ、それに応えるとドアが開く。
「おはよう。落ちるような音がしたが、大丈夫か?」
「おはよう、丹恒。落ちた」
 胡坐をかいて、それから大きく伸びをする。
 丹恒にしては珍しく、パジャマのままだ。
「今日の予定は?」
「どうしようかなって。丹恒は?」
「図書館へ行こうかと。ちょうど本を読み終えたのと、借りたいと思っていた本が入ったと連絡があったんだ」
 嬉しそうに口元に笑みを浮かべている。相当楽しみなのだろう。
「その後は?」
「多分、帰ってきて読書だ」
 そうしたら、夕飯だと呼ぶまで反応はないのだろう。それが丹恒だ。
 下手したら、夕飯でも反応がないかもしれない。
 そして、明日も休みだからと徹夜をする。
「そういえばさ」
「なんだ」
 タオルケットをベッドへ上げ、目覚まし時計をもとの位置に戻す。
「懐かしい夢を見たんだ」
「そうか」
「うん。幼稚園の頃だったか、小学生になる前だったかは忘れたんだけど、ある女の子に、大きくなったらお嫁さんになってって指切りした夢」
……
「丹恒?」
 眉を寄せ、ちょっとだけ不服そうな表情。
「そいつの事は、今でも好きなのか」
「うーん……十年は確実に前だし、顔も覚えてないもんなぁ。だって、それだけ経ってれば、顔もちょっとだけ変わってるだろうから。でも」
「でも?」
「綺麗な黒髪に、碧のインナーカラーが入ってたのだけは何となく覚えてるんだ」
 はく。と、唇が動いて。
「丹恒、大丈夫か?」
 と問いかけると、小指を差し出してくる。
「ん?」
「お前の嫁にしてくれるんだろう」
「ぇ」
 驚いて目を見開く俺の手を取って、小指を絡めて。
「あれは、俺だ。家の方針で、髪の毛を伸ばしていた。小学校に入る時に切ったが、お前と会った時は少女と間違えるほど長かった」
「じゃあ、俺の初恋って……
「俺だな」
「うっ」
「嫌だったか?」
「そんなことない! で、でも。びっくりして」
 小指を絡めたまま、胸を押さえていると心配そうに俺を見てくる。
「そうか」
「丹恒が初恋で、嬉しい」