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ぐるさん
2025-06-07 19:54:34
1440文字
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6.7 ふみりかワンドロ【傘】【幸せ】
ふみりかワンドロライ(@ fmrk_1draw)さんの2025.6.7 お題をお借りしました。
「暑っつ
……
」
まだ梅雨入り前だと言うのに、まるで夏のような気温と太陽が、ジリジリと俺の気力を蝕む。
玄関の扉を開けた時、曇り空で風も冷たかったから、普通にいつもの上着を羽織って出てきたのが間違いだった。
最近SNSでバズったカフェで思う存分スイーツを堪能して外に出たらこの陽気、いやむしろ熱気だ。
せっかく羽織った上着は、結局片手で抱える羽目になって邪魔だし、黒いズボンは何だか直射日光を吸収してる気がして余計に暑い。
「はぁ
……
」
こういう時に限って電車は架線トラブルで止まるし、そのせいでバス停には長蛇の列。そこに加わるのは面倒だと家まで歩き始めたのか間違いだった。
「やっぱ今から戻るか
……
いやでも面倒だな
……
」
「あれ、ふみやさん?」
聞き慣れた声に呼ばれて振り返ると、後ろに理解が立っていた。
「あ、汗が
……
理解お兄さんが拭いてあげますね」
いつの間にか顔を伝っていた汗を、理解がポケットから取り出したハンカチで軽く拭う。
「
……
これで良し!」
何だか子供扱いされたような気恥しさと、至近距離で満面の笑みを浴びてしまったせいで、余計に顔に熱が集中していく。
「って、めちゃくちゃ顔真っ赤じゃないですか!?えぇっと、とりあえずこっち寄って下さい!」
理解が俺の身体をグイッと引き寄せる。その大胆とも言える珍しい行動に驚いたのも束の間、俺の周囲のある変化に気がつく。
「
……
あれ?涼しい?」
「えぇ、日傘を差していますから!」
また自信満々の笑みを浮かべる理解の手元には、確かに黒い布地がピンと張った、傘の手持ち部分が握られている。
「とりあえず、一旦ふみやさんにこの日傘をお貸しするので、このまま近くの公園に入って休みましょう」
俺の手に傘を握らせ、理解は影の中から出ていこうとする。確かに、こう暑い時にピッタリと寄り添っては逆効果だ。
「
……
ん?ふみやさん?」
しかし気づけば、隣から離れていく理解の腕を掴んでしまっていた。暑さで頭がやられたとしか思えない。完全に無意識だった。理解もそんな俺をポカンと見つめている。こうなっては仕方がない。
「
……
傘、一緒じゃダメ?」
「え?」
「俺に日傘貸したらさ、理解が暑くなっちゃうじゃん」
バクバクと騒がしく跳ねる鼓動を誤魔化すように、わざらとらしく理解の腕に手を回してこちら側に引き寄せると、理解の白い肌はあっという間に真っ赤に染まる。
「ええっ!?ちょっ、道端で何してるんですか!?駄目ですよ!!」
「駄目?何で?せっかくなら二人とも日陰に入ってた方が涼しいよ」
「いや、でも
……
」
「ほら、早く公園行こう。それでさ、自販機で何か冷たくて甘い飲み物買おうよ」
「うぅ
……
まぁ、公園まで、なら
………
?」
「よし決まり。行こう」
「でもせめて腕は離して!」
「やだ」
季節を先取りし過ぎた太陽が照りつける中、二人で一つの日陰を分け合いながら歩いて行く。
時折肩がぶつかったり、手が触れたり、その度に騒がれたり、笛を持つ手を止めたり。目的の公園までそう遠くないのに、ずっと大騒ぎの連続だ。
でも、色々言いつつ理解は俺が組んだ腕を自ら振りほどかない。きっと、自分の中で何だかんだと理由をつけて、許してくれているのだろう。
「
……
幸せだ」
思わず呟いた言葉は、季節を先取りした熱気の中に、人知れず吸い込まれて行った。
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