紫輝
2025-06-07 09:47:05
15228文字
Public リオヌヴィ
 

専属園内特別ガイド

ご飯食べる時以外ずっと手を繋いでパーク内おデートする二人の話です。諸々都合よく解釈しているので言わぬが花を心に刻んでお読みいただけたら。園内全部制覇してもらおうと思ったら長くなっちゃった

 木の板を踏み鳴らす足音も軽く、ヌヴィレットさんが俺の半歩先を行く。その左手は俺の手を、右手はパンフレットのような何かを握っていた。
「ようこそ、シュヴァルマラン映影ランドへ」
 アーチ装飾を潜ったところで向けられた見返り笑顔に思わず手に力を込めてしまってから、どうもと小さく呟いて笑み返す。テーマパーク入園時のマナーはよく知らないのだ。
 ヌヴィレットさんから映影ランドへの同道を求められたのは、お粗末な密輸入事件が一応の収束を見た後だった。これから事件の因の一つであるギャンブル業界への本格的な調査が始まる。例えるなら今は嵐の前の静かな時だ。時間が取れなくなる前にと声を掛けてきたヌヴィレットさんの提案を断る選択肢が俺にあるはずもなく、今日この日、俺たちは揃ってこのテーマパークを訪れていた。ちなみに一発目のお誘いの文句が「一緒に視察に行って欲しい」だったのが心底ヌヴィレットさんらしいなと思った。デートの誘い方が下手くそすぎてあまりにも愛おしい。「仕事のお供なら別の人間を勧めるが、万が一それがデートのお誘いなら喜んで受けるよ」と答えた時の、前半の萎れ具合と後半の輝き方がそれはもう可愛くていや、やめよう。これは小一時間語れてしまう。今は目の前にいるヌヴィレットさんとの時間を楽しむべき時だ。
 実を言うと、『テーマパーク』に対する俺の記憶は少しばかり苦いものだ。まだ未来は明るいものだと信じきっていた少年のころ、今回のように一大イベントとしてテーマパークが開園したことがあった。モチーフがなんだったのかはもう忘れたが、手を繋ぎ、笑顔を浮かべて出入りする親子連れが羨ましくて、配られていたパンフレットを手に養父母にテーマパークの話をしたことがあった。その時は「みんなを連れて行くつもりだったが、チケットが取れなくて」――そんなようなことを言われたと思う。申し訳なさげな顔にすっかり騙されて、じゃあ仕方ないねと引き下がったのだった。その後のあれそれも相まってそれ以来、心の奥底で膝を抱えるあの頃の少年はその場所への憧れと苦味をずっと抱きしめている。ああくそ、嫌なことを思い出した。せっかくのヌヴィレットさんとのデートが台無しだ。
「リオセスリ殿?」
 賑やかで華やかな園内をぼんやりと視界に入れながら過去の幻影を追い払っていた俺にかかった声と、きょろと辺りを見回す夜明け色。足を止めたヌヴィレットさんに何か興味を惹かれるものがあっただろうかと首を傾げられて曖昧に笑う。
「いやこういうテーマパークってやつに入るのは初めてなんでね。興味だらけだよ。こんなふうになってるんだな」
 入口やアーチ装飾の前、その他写真映えしそうなスポットで写真を撮っている友人同士やカップルや家族連れ、賑わう土産物屋、彼らが生み出す人のさざめき、漂ってくるフードの匂い。なるほどこれが『テーマパーク』、なんて間の抜けたことを考えながら答えると、ヌヴィレットさんはまつ毛を羽ばたかせてからふわりと笑った。
「そうか。実は私もこのような催しに足を運ぶのは初めてなのだ。君ではないが、“興味だらけ”だ」
 うわあ、全部可愛い。あまりにも浮かれまくった心の声が外に飛び出すのを抑え込んで、“興味だらけ”が足取りに反映されたヌヴィレットさんに手を引かれて園内をゆっくりと歩く。俺はともかくヌヴィレットさんのこんな様子、普通なら大騒ぎになりそうなものだが俺たちに目を向ける人間は一人としていない。ヌヴィレットさんが『ちょっとした術』を使っているからだ。詳細は省くが、今の俺たちの上には水元素でできた薄い布が一枚被さっているような状態らしい。この布が光の反射やら屈折やら何やらに干渉して視覚を惑わすそうだ。一般の皆様には今の俺たちは「いちフォンテーヌ市民」に見えているらしい。そんな便利な能力があるならカメラを気にせず廷内を散歩することもできるだろうにとつい呟いた俺に「今までは然程興味がなかった」「君とそれができるのは非常に魅力的だが、この力を行使することに慣れてしまえば私は堕落してしまう」と返されて顔を覆ったのがつい今朝のことだ。
 翻せば普段は律しているヌヴィレットさんにその力を行使させるほど今回のデートをこのひとが望んでくれたと言うことで、もうその事実だけで十二分だ。誘いに乗ってよかった。急に休みを取っても実質影響がないのは普段から真面目に管理人業をこなしている俺のおかげだ。労いにとびきりの紅茶でも用意すべきだろう。
「『シュヴァルマラン映影ランド』は三つのアトラクションとスメール及びナタのエリア展示で構成されている。パーク内のレストランでは本テーマパーク限定の食事が楽しめるそうだ」
 普段よりワントーン高いヌヴィレットさんのテノールが澱みなく説明をくれる。のんびりガーデンの名が出たところでついおおと呟いてしまった。ヌヴィレットさんに「君はそこが一番気になるだろうと思っていた」と慈愛の比率高めの微笑みを頂いてしまってむず痒い。そういえば看護師長がそこの顧問として短期で手伝いをすることになったとウキウキ出かけていった事を、遅ればせながら思い出した。
「楽しみは最後に取っておくものだとフリーナが言っていた。まずは他の場所から見て回ろうと思うのだがどうだろうか」
「その手のパンフレット、ここについて予習してきてると見た。ヌヴィレットさんがエスコートしてくれるんだろ? ガイドさんにお任せするよ」
 うきうき、そわそわと花を飛ばしつつの提案に是を返す。初めての試みに挑む際は基本に忠実に、がこのひとのやり方だ。きっとパンフレットを読み込んで、観覧ルートを作って今日に臨んでいるのだろう。内部の情報を件の作戦のための必要最低限しか入れていない俺にはちょうどいい。よろしくと繋いだ手を軽く振ると、美貌がぱあと輝く。
「うむ、任せてくれ。精一杯務めさせていただく」
 いつも君には手を引いてもらってばかりだから、と心底嬉しそうに笑うヌヴィレットさんの手を舌の根も乾かないうちに引いて抱きしめてしまいかけたが思いとどまった。いくら「いちフォンテーヌ市民」とはいえ展示もアトラクションもない、テーマパークのただの通路で抱擁を交わす人間は流石に不自然だろう。
 では早速と手を引かれ、辿り着いたのは大きなテントの前だった。『名演! 映影ベストシーン』なるアトラクション名と思われるものが掲げられている。
「ここは映影の有名なワンシーンを、ゲストが実際に体験できるアトラクションだそうだ。原作となった書籍の展示コーナーもあるようだな。私はこれまであまり映影に触れてこなかったので見知った名前はないが、君が知るものや体験してみたいものはあるだろうか?」
 ヌヴィレットさんと並んで見つめたボードには、このアトラクションで取り上げられている映影のあらすじや見所、この映画のこの部分を再現しました、という説明が連なっている。
「俺も腰を据えて映影を観始めたのは最近なんだよな。いくつか知ってる名前はあるが、観てるだけで満足だ。アレとかうっかり本気になりそうで怖いし、そもそも『あれ』があるなら参加したらバレるしな、色々」
 話しながら指差したのはテント横のスクリーンだ。そこには稼働中のアトラクションの様子が投影されていた。ブラウズポートを利用しているようだ。コンベアの上を次々と流れてくるパンチンググローブにゲストが翻弄されている。開始時に渡されるリモコンで一定時間コンベアの速度を下げることができるらしいが、そもそも動き慣れていないとそれを使う発想ができないだろう。頭と身体を同時に動かすのは実は人が想像するより難しいのだ。
 一般人用に調整されているとは分かっていても正直胸が躍る。試してみたいがヌヴィレットさんの前だ。変に意地を張ってリモコンを使わずにクリアしようとする真っ青な自分が見えるようだし、ヌヴィレットさんの『ちょっとした術』は人間の視覚に対して効果を発揮するものだ。「撮影された映像」に対して効果は適用されないはずで、であれば明らかに一般人ではない男が暴れていたはずのアトラクションから一般人が出てくることになる。不審に思われてしまうだろう。
「それは確かに。だがうむ。残念だ」
 君ならばあの程度瞬く間に片をつけたろうに。
 ブラウズポートに気づいたヌヴィレットさんがこくりとうなずく。それから本当に、心から残念そうに呟くので(見てみたかった、と聞こえたのは幻聴ではないはずだ。多分)、もう面が割れてもいいかなぁ、なんて思ってしまったのは内緒だ。なし崩しにデートが終わってしまうのは勿体無いし、ヌヴィレットさんの初めてのガイドを不完全燃焼で終わらせたくない。
「あのスライム風船に追っかけられるヌヴィレットさんもちょっと見てみたかったな」
 隣のスクリーンに映し出された図書館の中で、ゲストが風スライムを模った気球に追いかけ回されている。見たところ本棚で作られた迷路の中でスライム風船から逃げながらコインを集めるアトラクションなのだろう。平時であれば案外おっとりとしているヌヴィレットさんがスライム風船と追いかけっこをする様子は大いに俺を癒やしてくれるだろうが、同じ理由でそれは見られそうにない。残念だ。
「む私とて戦闘の心得はある。一方的に追われるだけではいない」
「そういうアトラクションじゃないから迎撃できないと思うぞ」
「そうかであれば分が悪い、かもしれない」
 迷路もあまり得意ではないと呟くヌヴィレットさんに残念さが追加補充された。わたわたしながらスライム風船から逃げ回るヌヴィレットさん、絶対可愛かったのに。このひとの『最高審判官』の身分が憎らしい。
 一通りアトラクションの様子を見物して、レストランエリアを横目に海辺へ手を引かれる。急ごしらえにしてはしっかりした桟橋と、そこに停泊する小型船。すれ違うのは家族連れが多い。
「二つ目のアトラクションは、この小型船に乗ってコースを周遊するものだ。『水』の登場する映影がモチーフになっているらしい」
「へえコースは二つあるのか」
「うむ。アドベンチャー映影コースは家族連れに最適だそうだ」
 説明してくれるヌヴィレットさんの横を、今まさに家族連れが通り過ぎていく。映影のジャンルからして子どもが喜ぶようなコース作りがされているんだろう。順番待ちの列もできている。
「ここにはブラウズポートもないようだし、もし君がよければ
「勿論いいよ。乗ろう。さっきは体験しそびれちまったしな」
 周囲に目を走らせたヌヴィレットさんに控えめに引かれた手を握り返す。揃って向かったのはアドベンチャー映影コース――ではない方だ。どのみち元ネタは知らないからそれに拘る必要はないし、待ち時間がそこそこありそうだったから。


「あっはっは! 貴重な体験をした!」
 映影ファンに聞かれたら怒られそうな理由で別のコース――アクション映影コースを選んだ俺たちは、水流とエンジン出力を最大限に活かした高速の『周遊』に圧倒された。風景はどんどん流れてしまうから楽しむ余裕はあまりなかったが、船上とは思えないスピード感を体験できた。出航前に「絶対に席を立たないで」「ベルトを締めて」と乗務員に説明された理由はここにあったようだ。時々要塞で使う飛び降り移動よりは速度もなかったし、一般人でも無理なく楽しめる『高速』だったと思う。正直物凄く楽しかった。思わずガキのように大笑いしてしまったが、今の俺は「いちフォンテーヌ市民」なので問題ないだろう。
 傍らに目をやると、最初の加速でびくりと俺の手を強く握りしめてからルエトワールの如く動かなくなってしまったヌヴィレットさんはぱちぱちと夜明けの瞳を瞬いていた。このひとも戦闘時はスピードに乗った大立ち回りをすることもなくはないが、やっぱり“急に来る”と驚くらしい。
……驚いた」
 それが、ゆっくりと深呼吸をひとつしたヌヴィレットさんの感想だった。
「フォンテーヌ船にはあれほどのスピードが出せるのだな
 しみじみと呟くヌヴィレットさんに、この国の技術力は高いなと同意して席を立つ。そろそろ降船の順番だったからだ。
ヌヴィレットさん?」
 倣って足に力を込めたらしいヌヴィレットさんは何故か立つのをやめてしまった。不思議に思って小さな声で名を呼ぶと、階調の瞳が困ったように見上げてくる。
「リオセスリ殿その、どうも、立てなくなってしまったようで、」
 不甲斐ない、手を貸して欲しい、ともにょもにょと救援を要請されて失礼と知りつつ笑み崩れてしまった。だってあまりにも可愛い。周囲を見れば他にも何人かよろめきながら降りていくゲストがいて、なるほど人によってはああなるのか、なんて新たな知見を得てしまった。
「あんたをエスコートして船を下りられるなんて最高の栄誉だよ」
 正面から抱きかかえるようにして(肩を貸す方が不自然さはないんだろうがヌヴィレットさんの手がどうにも離れなかったのだ)ヌヴィレットさんを引き上げる。本当は横抱きにしたかったが一般人の枠を越えてしまうので我慢して、あくまでも『友人を支えて降りる男』を取り繕い船を下りた。
「ちょうどいいし、そろそろレストランで休憩なんてどうだい?」
「私も提案しようと思っていた。食事を終える頃にはこの足も使いものになるだろう」
 申し訳ないと肩を下げてしまったヌヴィレットさんの歩みに合わせて、のんびりとレストランへ移動する。ちょうど空いていた隅の席へ落ち着くと、ヌヴィレットさんは人心地ついたようだった。見まわした感じ、給仕スタッフの姿は見えない。レストランの名を冠してはいるが、客が自分で席を取り注文をしに行く、カフェに近い仕組みなのかもしれなかった。
「オススメはあるかい、ガイドさん?」
 テーブルの上に用意されていたウェルカムドリンクならぬウェルカムウォーターを注ぎながら首を傾げると、ヌヴィレットさんはうむとうなずく。パンフレットからはちらりと付箋が見えていた。
「このテーマレストランには一定の周期で内容が変わる、イベント限定セットなる特別メニューがあるそうだ。当日にならないと内容はわからないらしい。よほど食の好みに偏りがあるかアレルギーなどなければ、そちらを勧めさせてもらいたい。映影ランドのために考案された特別なメニューと聞く。きっと舌も心も満足感を得られるはずだ」
「シェフはエスコフィエさんだしな。特別許可食堂みたいなサプライズを警戒しなくてもいい。よし、じゃあそれを注文してこよう。行ってくる」
「君に使い走りのようなことは」
「恋びとのために気を回す、デキる男の演出に力を貸してくれ」
 ぱちりと片目を瞑って、早くも空になっていた瓶を片手にカウンターへ向かう。う、と詰まったヌヴィレットさんからよろしく頼む、と飛んできた声を背中で聞きながら。
「あら、公爵様。いらっしゃいませ。お揃いでのお運び光栄だわ」
 にこ、とゲスト向けの笑みを浮かべて迎えてくれたエスコフィエさんが、ちらと俺の背中の向こう側を見てやや声を落とす。のに、そういえば『ヌヴィレットさんのちょっとした術』は元素力の扱いに長けている人間や勘の鋭い動物たちの視覚を貫通するのだったなと思い出した。だったとして、ここで会う可能性のある人間は察しのいい人たちばかりだ。警戒する必要もないだろうと判断して、特段対策はしていなかった。
「良い評判しか聞かないもんでね。これは是非遊びにきておかないとと思ったのさ。イベント限定セットを二つと、水のおかわりをもらえるかい?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
 カウンターの上に置いた空き瓶をエスコフィエさんの尻尾のようなマシナリーが攫っていき、調理器具が一斉に仕事を始める。彼女が「水の下」の住人だった頃何度かその手腕を見る機会はあったが、相変わらず見ていて気持ち良い動きだ。特に魅せる動きを意識はしてないんだろうが、無駄と迷いを極限まで排除するだけで動作は洗練されたものになる。俺の持論だが。
「お待たせしました。イベント限定セット二つに、お水です」
 そうして出てきたのは二つのプレートだった。アイスティーの傍らのスペースに、片方にはハンバーガーが、片方にはバターロールのオープンサンドが二つ乗っている。
「今季のイベント限定セット、ナタの野菜とフォンテーヌの海鮮を使った特製サンドイッチです。こちらは限定セットをご注文の方へのオマケです。園内散策のお供にどうぞ」
 空いたスペースに貝殻を模した小さな入れ物が収まって、限定セットは完成を見たようだ。代金と礼を置いて振り返ると、ヌヴィレットさんがそわそわとこちらを見ていて小さく笑ってしまった。そんなに一生懸命見張っていなくても、どこにも行かないのに。
「お待たせ、ヌヴィレットさん」
「ありがとう、リオセスリ殿。これがイベント限定セットなのだな」
「ナタの野菜とフォンテーヌの海鮮のサンドイッチだそうだ」
「なるほど」
 まじまじとプレートを検分したヌヴィレットさんが内容が違う、と呟く。バーガーとオープンサンドの事を指しているのだろう。元々二種類なのか、ヌヴィレットさんの食の好みを把握していたのだろうエスコフィエさんの気遣いなのか、あえて突っ込まなかったので詳細は不明だ。
「こっちは限定セットのオマケだそうだ」
「うむ。これが」
「これはなんだい?」
 ヌヴィレットさんの指が貝殻の入れ物をついと撫でる。
「これはシュヴァルマラン映影ランドの目玉、『シェルキャンディ』だ。フォンテーヌの生き物を模したキャンディの詰め合わせなのだが、甘さの中に少し塩気のある珍しい味わいだとか。限定セットについているものの中には、時々本物の真珠が忍ばされていると聞いた」
「なるほど。運試しもできるのか。面白い趣向だな」
 俄然楽しみになってきた。運試しは後にして、温かいうちに食事を頂くことにする。バーガーには立派なフリルレタスとレッドオニオン、サーモンのフライが挟まっていた。サクサクとしたフライと新鮮な野菜がレモンが香る爽やかなソースとよく合う。俺がもぐもぐと口を動かしているのを機嫌良さげに眺めてから(このひとは時々こんな目で俺を見る。俺も食事しているヌヴィレットさんを眺めているのは楽しいのでおあいこだ)ヌヴィレットさんもオープンサンドへ指を伸ばした。
「んむ」
 たっぷりと乗せられた具材が不安定に揺れる。ヌヴィレットさんの一口は控えめなのだ。
「もう少し思い切っていかないと端から溢れるぞ」
「うむ分かってはいるのだが、こういった食事方法には慣れず
「カトラリーをもらってこようか?」
 切り分けて食べるようなものではないが、このひとがストレスなく食事を楽しめる方が重要だ。一口サイズを提案した俺に、ヌヴィレットさんは首を振った。
「いや。こうやって楽しむメニューなのだろう? であればこのメニューに相応しい方法で味わいたい。君には見苦しいところを見せてしまうが
 上目に伺われて心中天を仰いだ。今日も俺のヌヴィレットさんは可愛い。
「いやいや。この手の料理はこうやって食べるのがなんだかんだ一番美味いからな。オープンサンドもその方が嬉しいだろうさ」
 飛び出した具が食べられなくなるわけじゃなし、こぼれた分は別に食べればいいだけだ。俺の答えにほっとしたように肩の力を抜いたヌヴィレットさんは、さっきより心持ち大きめに口を開けてオープンサンドへかじりつく。こくりと喉が動いて、夜明けの瞳がゆるりと細まった。
「うん、美味だ」
「そっちのメインはエビに見えたが」
「うむ。茹でたエビと、卵と、タマネギだな。コンソメ風味でさっぱりとしている。パンも柔らかく食べやすい」
 ヌヴィレットさんが少しばかり高い声でオープンサンドの味を語ってくれる。失敗した。このひとをこんなに喜ばせてくれた素晴らしい料理を提供してくれたシェフに、もっとチップを弾むんだった。
 君にも是非味わって欲しい、と顔をほころばせてヌヴィレットさんが差し出してきたのは手のつけられていないもう一つだった。それをちらと見て、周囲に視線を走らせて。
いや。これはあんたのための料理だ。俺はこっちを頂くよ」
 俺に比べれば小さな歯形のついたオープンサンドにかぶりつく。勿論遠慮は忘れずに。ふわふわでプリプリでシャキシャキ。あっさりしていてこれはこれで上手い。二個と言わず三個か四個くらい入ってしまいそうだ。
確かに美味いな。ありがとう。ご馳走様」
 お返しにとハンバーガーを差し出す。生憎一つしかないので少し角度を変えて。ぱちぱちと瞬いていたヌヴィレットさんは、ふむと呟いて律儀に「頂こう」と口にしてからハンバーガーに齧りついた。わざわざ首を傾けて、俺の歯形の上から。
「うむこちらはサーモンのフライがメインなのだな。ソースが良いのだろうか。あまり重みは感じない。美味だ」
 ほわほわと花を飛ばすヌヴィレットさんがご機嫌麗しいのは十中八九「あーん求愛給餌」のせいだろう。『ちょっとした術』に浮かれてやらかしたかと思ったが許されたようだ。ヌヴィレットさんも俺と同じように浮かれてくれているのだとしたら、それは物凄く嬉しいななどとぼんやりと考えつつ残りの食事を腹に収め、二人同時に貝殻の蓋を開けた。
「おお」
「可愛らしいな」
 シュヴァルマラン婦人の頭を飾るそれのデザインに寄せたのだろうリボン型と、巻貝、ヒトデ、二枚貝。水の国フォンテーヌらしいモチーフの可愛らしいキャンディが、貝殻のケースに収まってキラキラと輝いていた。
これは可食性はなさそうだが」
 細い指がリボンに飾られた真珠に触れ、そっと摘み上げる。目線の高さまで持ち上げたそれをじっくりと見つめたヌヴィレットさんはやはりとうなずいた。
「これはキャンディではなさそうだ」
「お、つまり“当たり”か。さすがヌヴィレットさん、持ってるな」
 おめでとう、と軽口を叩く俺に律儀にありがとうと答えたヌヴィレットさんは、俺の手元を見てまつ毛を羽ばたかせる。
「リオセスリ殿。君のそれも、恐らく“当たり”だ」
「うん?」
 目線を追って自分の貝殻を覗き込めば、婦人のリボンの真ん中でヌヴィレットさんのそれと同じような真珠が鎮座している。ただし色は黒だ。
この黒真珠、本物か?」
「私の見立てでは」
「海のあるじが言うならそうなんだろうなぁ。ははっ、大変な記念品を貰ったみたいだ」
 こりゃあ忘れられない日になっちまうな。
 元よりそんな日になるのは確定していたわけだが、まるで仕込まれていたようにあまりにもなもてなしをされて――エスコフィエさんの仕事への姿勢はよく知っているつもりだ。贔屓などする人ではないから、本当に“大当たり”だったのだとわかる――どうしようもなく浮き足立ってしまう。何せ心の中にはまだテーマパークなるものへの苦い憧れを燻らせている少年がいるので。
そうか。そんな日を共に過ごせたことを心から嬉しく思う」
 言葉通りの笑みでヌヴィレットさんが囁く。好きだなぁを噛み締めつつ、俺は思いついた提案を口にした。
「今日はまだ終わっちゃいないが、最高の想い出をくれたお礼にこいつはあんたにプレゼントさせてもらうよ。そうだなテーマパークに遊びにきた記念だ。『可愛い寄り』に加工して渡すから楽しみにしててくれ」
 このサイズなら机の上でもこのひとの邪魔をしない、小さな置き物が作れるだろう。
「『最高の想い出』を貰っているのは私も同じだ。私も君に、これをプレゼントしたい。勿論、本日の記念品として可愛らしくしよう。任せてほしい」
 浮かんでくるデザイン案に締まりがないのを自覚しながら相好を崩しつつ告げると、ヌヴィレットさんは自身の手元の真珠にそっと触れてふわりと笑み、少しだけ胸を張る。こういうところ果てしなく可愛いんだよな、このひと。
「明日からの楽しみが増えたな」
「うむ。私もだ」
 くすくすと忍び笑いを交わしてから口に放り込んだキャンディはヌヴィレットさんのガイド通り、甘さの中にミントの爽やかさとほのかな塩気のある、珍しくも癖になる味だった。土産物屋で売っているらしいから、帰りに買って帰ろう。
 因みにこの時持ち帰った真珠は黒真珠を抱えたラッコと真珠を転がして遊ぶ仔狼の置き物に加工されてそれぞれの机の上にそっと乗ることになるのだが、今の俺たちがそれを知るのは互いに『可愛い寄りに加工した記念品』を贈り合ったあとだ。



 トレーを返却し、手を取られて隣のアトラクションへとエスコートされる。食事の間にもちらちらと聞こえていた鳴き声の元へ向かう俺の足は正直うきうきしていたし、ヌヴィレットさんにも俺のそれが伝わってしまったのか彼の足取りもなんだか軽い(「君が嬉しいと私も嬉しい」をさらりと、本心から口にするひとなのだこのひとは)。
あら! ふふ、こんにちは、素敵なゲストさん達! 『のんびりガーデン』へようこそなのよ!」
 俺たちに気づいた看護師長から完璧な出迎えを受けて、このアトラクションの注意事項を説明される。無闇に距離を詰めない、触れようとしない、大声や大きな音を立てない、追いかけ回さない。動物に対する時の基本事項だ。
「このアトラクションの主役はあくまでも動物たちなの。このコたちがびっくりしないように優しくしてあげてね。ゲストさんたちなら絶対に大丈夫って、ウチ分かってるけど!」
 ぱちんと飛ばされたウインクを受け取って、ヌヴィレットさんと並んでエリアに足を踏み入れる。映影ランドの最奥に造られているアトラクションだけあって、申し訳程度の柵の向こうは大自然だ。海岸をうまくエリア内に取り込んで、水生生物と陸上動物の両方を楽しめるようにしてあるらしい。
……でかいな」
「うむ標準の二倍いや、三倍くらいはあるだろうか」
 リスやヤマガラの間をゆっくりと歩きながら思わず呟いた俺に、ヌヴィレットさんもうなずく。先日『落とし物』として届けられたリスはこれくらいの大きさだった、と手のひらを示されるのに、だよなと同意して。
「ガイドさんの情報は何かあるのかい?」
「うむここではリスやヤマガラの他、ナタの固有種であるモコモコ駄獣やカピバラを見ることができる。水場エリアには我が国のプクプク獣が招かれているそうだ。一般のゲストであれば、見所は特殊な訓練を受けた風スライムや水キノコンだろうか」
 首を傾げると、相変わらず澱みなく、けれどどこか華やいだテノールがアトラクションについて語ってくれる。彼らを近くでゆっくりと見る機会は中々ないだろうからな、とヌヴィレットさんが言った通り、もちもちと弾む風スライムやぷかぷかと浮かぶ水キノコンの周りで足を止め、写真を撮っているゲストは割といた。
「見た目は可愛いもんなぁ」
「油断をすると思わぬ苦戦を強いられるがな」
「数と種類でこられるとキツいよな」
 友人の少年の手伝いの最中さなかに何度か見た痛い目を思い出して、二人して遠くを見つめてしまった。真面目な話、数と種類は厄介だ。特にキノコン族は。
「あっ、ゲストさんたち!」
 あまり良い思い出とは言えないあれやこれを思い出していた俺たちに、看護師長が駆け寄ってくる。
「なんだい、メリュジーヌのお嬢さん」
「あら、お嬢さんだなんて。嬉しいわ。あのね、このガーデンにカピバラがいるのは知ってるわよね?」
「うむ。ちょうどそこで寝転がっているな。愛らしい」
「カピバラはとっても温厚な動物で、人間や他の生き物を怖がらないの。いつものんびりふわふわしているから、例えば近くでケンカをしている動物も自然と仲直りしちゃうのよ」
 ころころと笑った看護師長は、カピバラについて説明してくれた後にひそりと声を落とし、緋色を煌めかせた。
「だからね、二人で一緒にカピバラを撫でるとずーっと仲良しでいられるっていうおまじないがあるの」
 良かったら試してみてね、と看護師長が笑う。万が一嫌がったらすぐにやめてあげてね、と釘を刺すことも忘れずに、「毛並みに逆らって撫でるとケガしちゃうから気をつけてね。ガーデンを楽しんでちょうだい!」と言い残して彼女は俺たちから離れていった。
試してみるかい? せっかくの特別顧問さんからのオススメだし」
 ちら、とヌヴィレットさんを見る。ほんの微かではあるが、頬に赤みがあるように見えた。
「是非とも。その、シグウィンが勧めてくれたからという理由だけでなく、私がまじないに望みを託したいと思った、ので。付き合ってくれるだろうか」
 愛するひとにおずおずと見つめられ、繋いだ手に控えめに力を込めながらお伺いを立てられて嫌と言う男なんているだろうか。いやいない。フォンテーヌ紳士たるもの、恋びとのご要望とあらば全力でお応え申し上げるべきだ。あと俺個人としても正直担げる験は担いでおきたい。だって末長く仲良くいたいじゃないか。やっと捕まえたひとなのだから。
「勿論。俺以外に声を掛けられたら寂しくて水の下に帰るところだったよ」
 繋いだ手を引き寄せて、手の甲に唇を寄せる。戯けて笑えば、ヌヴィレットさんは君以外に候補がいるとでも、と少しだけ唇を尖らせた。
 ――さて。
 そうしていざ撫でさせてもらったカピバラは、見た目そのままにもふもふだった。看護師長の助言通り思ったよりもその毛は硬いが、特に首周りの毛はふさふさで、毛並みに沿って撫でればつるりつやりと触り心地がいい。ついそこばかりで遊んでしまうが、カピバラは嫌がるそぶりも見せずのんびりと構えている。
「大物だな
「ふふふ、確かに。普通の動物であればそろそろ私たちから離れていきそうなものだが」
 ふかふかしている、と滅多に聞けない語彙で(得をした)毛並みを評しつつカピバラを撫でるヌヴィレットさんは楽しそうだ。『おまじない』の話の真偽はともかく、「触れられる動物がいる」という情報だけでも抜群に有意義だった。シェルキャンディ、看護師長の分も買って帰ろう。



「いやあ、遊んだ遊んだ!」
 カピバラを構い倒し(モコモコ駄獣に乱入されるというサプライズもあった)、ガーデン横のナタ地域紹介の展示スペースに用意されていた果実のジュース(なんと果物に直接ストローをさして飲むタイプだった。ヌヴィレットさんは少し困惑していた)を味わい、看護師長に耳寄り情報の礼を言って、相変わらず手を引かれて辿り着いたのは映影ランドのメインステージの裏側、フォンテーヌ廷を望む広場だった。夕日に輝くパレ・メルモニアが美しい。中央の大きな鐘を挟むようにフラワースタンドと書籍スタンドがある。『某映影で主人公がヒロインへ贈った花』やら『某映影で秘密の情報の受け渡しに使われたフラワーアレンジ』やらが置かれていたり、『某映影の原作小説』『某映影シリーズの考察本』なんかが置かれているようで、そこそこの賑わいを見せていた。
「君が今日という日を楽しんでくれたなら嬉しい」
 私は役目を果たせただろうか。
 そんな広場の片隅で海からの風を浴びながら口にした俺に、ヌヴィレットさんはふわりと笑う。
「もの凄く楽しかったさ。優秀なガイドさんのおかげだな。あんたはどうだい? 俺のガイドをしてたせいでいまいち楽しめなかった、なんてことはなかったかい?」
 是と言われたら今度は俺がプランを考えて、二周目を企画しなきゃならない。幸い映影ランドの開園期間はまだ残っているし、改めて下見する時間も取れるだろう。“その時”の事を考えつつ問いを返した俺に、ヌヴィレットさんは首を振った。
「いいや。君と並んで歩いて、知らないものを二人で見て、新しい体験をした。私もとても有意義ないや、楽しい時間を過ごせた。誘いに応じてくれてありがとう、リオセスリ殿」
 とろりと笑む美貌に、それなら良かったと返した声は震えていなかっただろうか。随分感情と表情をリンクさせる事が上手になったこのひとの笑顔を見るのは大変光栄なことに初めてではないのに、思ったより多いバリエーションで五回に一回ほど呼吸を忘れてしまう。
「ところで今回、どうして俺を誘ってくれたんだい?」
 言い方はアレだが、このひとは『民で賑わう場所』への足が重い。積み上げてきた“これまで”が人々を萎縮させてしまう、それは本意ではないからと語るそのひとの暁が少しだけ寂しそうだったのがずっと気になっていたのだ。俺か、少なくともメリュジーヌ達が手を引けば連れ出されてはくれるだろうが、それでこのひとが気落ちするような事があっては本末転倒だ。そんなわけで踏み切れずにいたわけだが、今回はまさかのこのひとからのお誘い、かつ『ちょっとした術』の採用で『民で賑わう場所』へヌヴィレットさんを連れ出すことが叶った。乱用はしないと言い切ったそのひとに一歩を踏み出させたのがなんだったのかは正直気になる。
 首を傾げた俺にヌヴィレットさんは言った。「君が『テーマパーク』の話題を耳にするたびに瞳に落ちる影が気になっていた」と。
 これはあくまでも私の拙い想像に基づくものなので君を不快にさせるかもしれない。許して欲しい、と前置いたヌヴィレットさん曰く、テーマパークなるものは往々にして『家族』と強く結びつくものであるから、リオセスリ殿の裡にある記憶とそれに付随する感情がその影の原因ではないかと思った、そうだ。拙い想像どころか大体正解だった。
「君は空であることすら知らなかった私の器を、温かいものや美しいもので充たしてくれる。だから私も、君の器にそれを返したい。君が真に望んでいるものを私が差し出す事はもはや叶わないが、少しでも君の器にいろを乗せられる存在でありたいと願って――いや、望んでいる」
 塗り直せはしないが新たに色を乗せることならばできると思ったと、それが俺を誘ってくれた理由だと微笑うヌヴィレットさんに、流石に我慢できなかった。今日一日引かれるだけだった手をこちらから引いて、細い身体を抱きしめる。
「り、リオセスリ殿」
「今の俺たちは「いちフォンテーヌ市民」だろ? こんなロマンチックな場所なんだ、俺たちを気にする人間なんていないさ。だから」
……うむ」
 案の定狼狽えてしまったそのひとをしっかり抱き込んで囁くと、長めの沈黙のあと背中に腕を回してくれた。この国は『愛』に寛大な国だ。睦まじい様子の二人を見たら世界に二人だけにしてやりなさい、なんてロマンに全振りの諺があるくらいに。今だけはロマン全振りが大好きな国民性に大感謝だ。
「俺の昔の記憶は、今となっちゃ嘘と虚飾と羨望だらけのクソッタレなものだ。けどあんたのおかげで、今日その一部が最高の色で塗り直された。小さなリオセスリ君も大満足だ。ありがとう、ヌヴィレットさん」
 もしもあの時みっともなく駄々を捏ねていたら、商品価値を下げた上出し殻のような記憶を残すことになっていただろう。養父母がカネを出し渋ってくれたおかげでガキ臭い羨望を抱えて生きて来るだけで済んだし、胸糞悪いデッサンは今日、世界で一番うつくしい色で上から丁寧に塗り上げられた。無様と知りつつこれ羨望を捨てなくて良かった――とは、口には出さないでおく。
 今日この日、俺の中の『テーマパーク』の記憶と印象がヌヴィレットさんとの楽しい想い出に更新されたことを告げると、ヌヴィレットさんはそれはそれは嬉しそうに笑った。
そうか。君の新たな記憶の彩の一部を担えたならば、とても嬉しく思う」
「一部というか、ほぼ全部だな」
「う、むそうか。……そうか」
 今日の記憶にヌヴィレットさんは欠かせない彩――というか、ヌヴィレットさんを中心に彩が付いていると言っても過言ではない。断定した俺に暁を煌めかせたひとは、まるでとろけるようにそれをゆるめる。困った。際限なく可愛いなこのひと。思わずキスのひとつでも贈りたくなってしまったが、流石に自制した。せめて映影ランドを離れてからだ。
なあ、ヌヴィレットさん」
 陽が落ちたら帰ろうか、なんて言い合って名残を惜しみつつ傍らのひとへ語りかける。
「なんだろうか」
「いつかあんたがあんたのまま、こういうイベントを楽しめるようになったらいいな」
 少しずつ、少しずつ。学びを重ね、理解を深め、その瞳で人間と同じものを見てくれようとしているやさしいこのひとを迎える土台が、今のこの国にはある。百年も経てば、今日のように溢れる興味に軽くされた足取りでイベント会場を歩くこのひとが「ようこそ、ヌヴィレット様!」なんて笑顔で手を振られる世界が訪れているかもしれない。百年後の世界、なんて、人間の俺にはスケールがデカすぎてちょっと想像がつかないので、全部俺の多大なる願望ではあるけれども。
 ぱち、とまたたいたヌヴィレットさんは、絡んだ指に力を込めて小さくうなずく。
「うむその時は、君も共に」
「勿論、喜んで」
 まるでその日が見えているように微笑ったそのひとがこぼした言葉は、俺を人の時間から外したくないと希ってくれるこのひとの、無意識の素直な願いだったのかもしれない。