ながひさありか
2025-06-06 00:33:30
819文字
Public STR-Phaidei
 

ファイモス:不純文学-ホーリーフォーギヴ


 浮気を疑ってもいないのに写真を見てもいい、と石板を渡される。塩らしい顔をしている男の顔を見つめ返し、「必要がない」と画面にロックをかけて返すが、本人の気が済まないのか、「いや、確認してくれ」ともう一度手の中に戻された。
 他人の秘密を見るようで気が引けるが、仕方がないと諦めて画面をスクロールする。保存されている写真の殆どは風景写真のようだったが、よくよく見れば画面の片隅に俺らしき人間? の写ったものが多かった。顔の半分だけが写っていたり、足の先だけが写っていたりと様々だが、どれもなぜか全身や顔がはっきりと写っていない。写真自体は吝かではないが、どう言うアングルだ? と疑問が浮かぶ。そもそも風景に見覚えはあったが、いつ撮られたものなのかはわからない。この男は時々画面を眺めて物思いに耽っている瞬間があったが、どうせ眺めるならもう少しまともな写真にしろと文句をつけそうになった。まあ、他人の趣味に文句は言うまい。
 塩らしくしている男を見つめ返し、「何の写真だ?」と結局尋ねてしまう。君の写真だよ。小さくこぼした男の眉が下がり、恥いるように視線が彷徨った。写真を撮らせて欲しいと言えなかったことを恥じているのか、それとも、そもそも隠し撮りをしていたことを恥じているのか、はたまたどれとも違うのかはわからない。
 どうせ撮るならちゃんと撮れ、と呆れたフリをしながらスクロールを終えた最後の一ページは、どこかの川辺の、薄暗い写真で埋まっていた。永夜の風景等珍しくもないはずなのに、何故かぞわりと肌が粟立つ。画面の明るさを最大にし、じっと目を凝らす。川辺には赤黒い小さなものが点々と落ちており、どうやらそれらは肉片のようだった。悪趣味だな。呆れて溢した俺の目には、血塗れの小指が映っていた。
 赦してもらおうとするくらいなら、秘密は秘密のままにしておけ。そう口にして、結局肩を組んでやる。どうせならまともな写真の一枚でも残しておけ。


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