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ながひさありか
2025-05-05 09:50:55
715文字
Public
STR-Phaidei
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ファイモス:この世は君の思うまま
25/5/4のスパコミで配布した掌編です。青年期。
「俺が将来的に王位を継承しないといったらどうする」
ぼんやりした声に、あ、酔っているな、とすぐに気づいた。ファイノンは盗聴防止装置がいつも通り動いていることを横目で確認し、重ねて隠匿の術を発動しておく。本気にせよ戯れにせよ、自分以外の誰に聞かれてもまずい。
ほんの数秒の出来事だったが、ファイノンが顔を向けた時には、すぐに答えなかったことを不愉快に思ったのか、苛立った様子の主人が剣呑そうに眉を跳ね上げている。
「飲みすぎだよ」
ファイノンは苦笑しながら、ソファに深く腰掛けているメデイモスの蜂蜜酒の杯を取り上げ、冷たい水を代わりに置く。滅多に酒を飲まない男が、珍しくかぱかぱと杯を空けていた。今夜も明日もどこへ行く予定もなし、と好きにさせていたが、もしかすると離れていた間に気分を害することがあったのかもしれない。
ソファに両足を乗せ、不満そうな顔で見上げてくる主人の腰の下あたりに腰掛け、「君が王にならなくても、僕は気にしない」とファイノンは笑みを崩さずに口にする。酒精で赤くなった麗しい顔に触れたかったが、瞳に混ざる苛立ちが消えないのを見ると、今は自分から触れるべきではないだろう。
屈め、と鼻を鳴らした主人に命令され、ファイノンは言われた通りに顔を近づけた。水を飲んだほうがいいよ、と口にしたそばから唇を塞がれ、甘い蜂蜜の濃い匂いが鼻先をくすぐる。
「首輪の呪いは解除してもらわないと困るけど、それさえしてくれるなら君を攫って逃げたっていい。
—
君が望むなら世界の敵にもなるよ」
ファイノンの答えに今度は満足したのか、メデイモスは熱い手のひらを騎士の頬に添え、「馬鹿なことを言うな」と瞳と口許を緩ませる。
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