ながひさありか
2025-04-23 00:26:12
2056文字
Public STR-Phaidei
 

ファイモス:ひとりじめ

現パロ:ペットを飼いたいモーディスと、イヤッイヤッのファイノン。
いつものカフェの二人です。

「ペットか……
 大抵のことは「いいんじゃないか?」と笑って受け入れてくれるファイノンが、珍しく眉を寄せてうんうん唸っている。意外な反応に、モーディスは大人しくファイノンが悩み終わるのを待つことにした。
 とは言え、何を迷うことがあるのかはよくわからなかった。モーディスは家の契約書に目を通して問題がないことも確認したし、お互いの収入面についても問題がないことを確認した。世話に関しても、ファイノンは時々長期出張で家を空けるが、モーディスはシフト変動があるくらいで、家を長期間空けることはない。もちろんファイノンにも協力はしてもらうが、基本的には自分でやるなら問題はないだろう、と考えていた。
 昔、デートでファイノンにドッグカフェに連れて行ってもらったが、別に彼も問題なく、犬を抱き上げたり撫でたりしていたように思う。白くてふさふさのグレートピレニーズとサモエドの子犬がじゃれている姿を見ななら、どちらかと言えばサモエドの方が似ているな、とその時に思った。
「犬が嫌いだとは思えなかったが……実はそうでもないのか?」
 三十分も唸っているファイノンに、これは何回かにかけて説得するしかないか、と思いつつモーディスは尋ねた。もし犬が苦手なのであれば、流石に要求を押し通そうとは思わない。
「いやそんなことはないよ、大抵の動物は好きだ。どちらかというと猫派だけどね。ただ……
「ただ?」
「ペットを飼ったら、君って絶対可愛がるだろ」
「可愛がりもしないのにペットを飼おうとするわけがないだろうが」
 そもそも何故犬を飼いたくなったのかと言えば、子供の頃、実家で犬を飼っていた話を先日親友と通話したからだった。
 実家を飛び出した際に写真だのなんだのは全て置いてきてしまっていたので手元になかったのだが、「データフォルダを漁ってたら、君とココボ3世と僕で撮った写真が出てきたんだ」と子どもの頃の写真を送ってくれた。
 もしかすると、写真を見て少しホームシックになったのかもしれない。モーディスは二度と実家には帰らないと決めているし、別にファイノンとの生活に不満も不安もないが、それでも時々、ファイノンが二週間以上家を空けると、ひとりでいるのはつまらないな、と感じることがあった。
 子どもの頃、実家ではいつもココボ3世と遊んでいて、父親とうまくいかない日々が続いても彼がそばにいれば別にいいか、とベッドに乗せて眠った夜が幾夜もあった。
「モーディス?」
 いつの間にか過去を遡っていたらしく、おーい、とファイノンが眼前で手をひらひらと振っている。ハッとしてファイノンに向き直ると、不満そうに唇を曲げたファイノンの顔があった。
……俺が犬を可愛がることの何が嫌なんだ?」
「そりゃあ嫌だろ! 君が僕以外に愛情を注ぐところを四六時中そばで見てろなんて拷問だと思わないか? ……いや、僕だって犬に嫉妬するなんてみっともないとは思うけどさ…………
 ファイノンの言葉が尻すぼみになったのは、モーディスが「はぁ?」と腕を組み、眉を跳ね上げたからだった。
「時々思うが、よくそんなに嫉妬深くて今まで生きて来られたな」
 もはや呆れを通り越し、尊敬の域に達していた。ファイノンから昔のパートナーの話を直接聞いたことはなかったが、自分と違ってそれなりに経験して来ただろうことは会話の端々から感じていて、それなのに、本当に俺がよかったのか? と時々、モーディスは不思議に思っていた。
 お前を好きにならないやつはいないだろう、と言えば「君にだけは言われたくないんだけど……」とファイノンは不服そうに言う。
「出張で数週間帰ってこないこともあるし、その間に君に寂しい思いをさせているのは本当に申し訳ないと思ってるよ。思ってるけど、でも僕がいる時に君がペットを可愛がってるところは見たくない……
 モーディスが犬を可愛がっている姿を妄想したのか、ファイノンは顔をくしゃくしゃに歪め、狭量なのはわかってるよ、と呟く。
 そこまでか。泣きそうになるほどのことなのか。
 流石にそこまで強い拒絶感情が出てくるとは思わず、モーディスは「わかったわかった」と首を振る。
「お前がそれほどまでに嫌がるとは想像しなかった。流石に押し通す気はないから安心しろ」
 情けない顔で俯いているファイノンにため息をつきつつ口にすると、無言でそばに移動して来たファイノンに強く抱きしめられる。
 寂しがりなのはお前の方ではないのか? とモーディスは背中を撫で返しながら、疑問を脳裏に浮かべる。
「何があっても僕を優先してくれないと嫌だ」
……………時と場合と内容による」
 大真面目に答えたモーディスに、「まあそう言うところも好きだよ」、と、ファイノンは何故か、理解を示す男のような顔をする。現実では妄想のペットにすら嫉妬して、飼うのを許さないにもかかわらず。
「次に長期出張に行く前には休みをちゃんと取るよ。約束する」
 それならまあ、いいか。


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