ながひさありか
2025-02-25 19:52:36
1654文字
Public STR-Phaidei
 

ファイモス:朝ごはん

現パロ。以前のものと同じ2人です。

 今朝こそ僕の方が早く起きようと思っていたのに、今日も負けてしまった。
 ワークアウトから帰ってきたモーディスがシャワールームから出てきた音で目を覚ましたが、まだ頭が眠っていた。ベッドから起き上がり、ドライヤーの音を聞きながらぼんやりしていると、下着姿のモーディスが服を取りに寝室のドアを開ける。
「目が覚めたか」
「おかえり」声を出した途端にあくびが出た。「起きたけど、まだ眠いからちょっとこっちに来てくれないか?」
 大人しくそばへ来てくれたモーディスにキスしてベッドに連れ戻そうとすると、反対に「目が覚めたのなら起きろ」とベッドから追い出されてしまう。さっさと服を着て出ていくモーディスにつれないなぁ、と言いつつ僕も服を着替えて寝室を後にした。
 すでにキッチンに立っていたモーディスに「何か手伝おうか?」と声をかけると、たん、たん、と一定のリズムで何かを切っていたモーディスが「座ってニュースでも聞いていろ」と振り向きもせずに答えた。
 調理中にちょっかいをかけると烈火の如く叱られるので、大人しくそうさせてもらうことにする。
 ソファ前のローテーブルに置かれたタブレットから、いつもモーディスが聞いているラジオが流れており、隣のガラスの紅茶ポットからは、微かにバニラのフレーバーが香っていた。モーディスが最近気に入っているルイボスティーをそばにあった空のマグカップに注ぐと、一層バニラの香りが強くなる。ルイボスはあまり得意じゃないが、このお茶の味は悪くない。
『昼過ぎに少し天気が崩れるかもしれません。お洗濯は午前中にしまっておきましょう』
 ラジオの天気予報を聞き、洗濯物を回すことにした。乾燥機付きの洗濯機は服を傷めるから不要だと主張するモーディスに、いや乾燥なしも選べるからとりあえずつけておこう、と説得したことを思い出した。乾燥機を使えない服は洗濯機の隣の黄色のカゴにいれ、それ以外は洗濯機にそのまま放り込む生活をしているが、今のところはそれでうまくいっている。
 洗濯機をかけて部屋へ戻ってくると、じゅうじゅうと肉を焼く音が聞こえていた。バターの香りに空腹が刺激されるのを感じながら、マグカップとタブレットを持ってダイニングテーブルへ移動する。
 眠っていた間のSNSをチェックし、知人のペットの写真にいいねをつけて、アプリを閉じると、椅子の背に腕と顎を乗せ、調理しているモーディスを眺めた。
 黒いエプロンの紐を腰できゅっと結び、長い髪を適当に一つに括っている。服の上からでもわかる引き締まった腰に昨晩の光景を思い出しながら、愛する人が僕のため朝食を作ってくれているなんて最高の人生だ、と思った。
 煩悩を押さえつけながらじっと眺めていると、焼き上がった肉と何かを皿に盛り付けながら、モーディスが「そんなに腹が減ったのか?」と笑う。眦を緩めた瞳が綺麗で今すぐ目尻にキスがしたかったが、今やると叱られるので我慢した。
「違う、君に見惚れてたんだ」
「わかったわかった、そういうことにしておいてやる」
 褒め言葉をスルーしたモーディスはカットしたクレソンを皿に盛り付けると、フライパンの隣の鍋からスープをカップによそい、トースターの中からパンを取り出す。焼けたパンの香ばしい匂いに、いよいよ空腹を訴えた腹が鳴る。
 モーディスが持ってきた皿とカップを受け取り、テーブルへ置く。
「これってなんだい? りんごに見えるけど」
「豚肉とりんごのソテーだ。胡椒を多めに振ってあるから見た目よりは甘くない」
 どうやら昨日、僕が職場でもらってきたりんごが朝食になったらしい。
 エプロンを脱いだモーディスが「コーヒーをいれるか?」尋ねてくる。
 これで大丈夫、とルイボスティーを入れたマグカップを持ち上げ、「でも食後に入れてくれたら嬉しいな」とわがままを言っておく。わがままなやつだな、と予想通りの言葉が返ってきたけれど、柔らかい笑みを浮かべたままなので問題ないだろう。いい一日の始まりだった。


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