ながひさありか
2025-02-07 23:21:02
1139文字
Public STR-Phaidei
 

ファイモス:ピロートーク

を口でしない二人

 顔に触ってもいいかい?
 尋ねたくせに、モーディスの了承を待たず、顔に手を伸ばしてくる男に眉を寄せて不満を表してはみたが、熱の余韻のあるうちは、触れられても構わないと思っていた。
 目を閉じて呼吸を整えていると、ファイノンが右目の下の刺青をそっとなぞってくる。親指を頬骨に添え、目の下のラインを慎重に触れる手が妙に優しくて落ち着かない。
 した後のファイノンはいつだってこんな風に、熱の余韻を引き止めるように触れてくる。したりないのかと尋ねても反応は半々で、もう一度したがる時もあれば、いやそうじゃないよ、とただモーディスの体や髪を撫でるだけのこともある。
 鼻梁を撫でてくる指に瞼を開け、モーディスは視線を隣へ向ける。寝台に頬杖をつきながら、顔を撫でている男と目が合い、水色の瞳が星を散らすようにまたたくのが見えた。
 夜のないオクヘイマでも、分厚いカーテンを下ろすと部屋の中は薄暗くなってしまう。天井から吊るされた橙色の灯りは弱々しいものだったが、ファイノンの瞳が微かな光を取り込んで青白く輝くのを見るのが好きだった。
 陽光に照らされた海のようだ、と考えながら瞳を見つめていると、ファイノンがどうかした? と首を傾げながら、唇を親指の腹でなぞってくる。
 モーディスは無言でファイノンの顔に手を伸ばし、顔にかかる前髪を指ではらうが、すぐにまた髪が降りてきて、ファイノンの目を半分ほど隠してしまう。
 なんとなく残念に思っているうちに、ファイノンが覆い被さっていた。頬骨に親指を添え、中指と薬指で顎をすくうように口付けてきたファイノンの胸に手を置く。まだ熱の余韻の残る肌は、しっとりと滑らかな手触りをしていた。
 いつ触れても随分と着痩せする男だ、とモーディスはファイノンの鍛え上げられた腹から腹斜筋をそっと撫で、顎に噛みついてくる男の背中に片足の踵を置く。両手を伸ばし、顎に噛みついていたファイノンの顔を引き寄せた。
 ファイノンの銀髪をくしゃくしゃにかき混ぜながらキスをして、背中に乗せた足を引いて抱き寄せる。触れ合った唇の隙間から、ファイノンが小さく笑った。
 自分の背中を引き寄せていた足をそっと脇に下ろし、身を起き上がらせたファイノンがモーディスの肩に触れる。体を走る赤い刺青を爪先でそっと撫でられ、ふ、と息を吐いた。触れられているのかいないのか、曖昧な触られ方は少し苦手だった。膚がやたらと敏感になって、快感とくすぐったさが同時に襲ってくるからだ。
 冷えかけていた膚に再び熱が落ち、頭の中が痺れるような感覚にモーディスは瞳を細めた。ファイノンがもう一度戻ってくるのを受け入れながら、先刻よりも強く穿ってくれと言う代わりに、ファイノンの手首を掴んで引く。


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