ながひさありか
2025-01-29 16:44:44
7713文字
Public STR-Phaidei
 

ファイモス:都合のいい男

浮気(浮気ではない)判定が厳しい男(ユニコーン気質)×付き合っていないのにやたらとめんどくさいことを言うやつだなと思っている男

肉体関係はあるけどお互いに付き合っていないと思っている。のに、嫉妬すらしてくれないのもなんかもやもやする…と思っているファイノンの話です。
モーディスはファイノンをめちゃくちゃ甘やかしていると最近思ってるのでそういう感じです。

ない設定がいろいろあります。

「噛むな」
「え?」
 モーディスに両肩を強く掴まれたかと思うと、グッと押しやられ、ファイノンは首を傾げた。結構いい雰囲気だったのに嫌だったのか? と考えていると、「噛むな」ともう一度モーディスが言う。
「まだ噛んでないと思うけど」
「だから言った」
「つまり?」
「つまりも何もない。噛むな、痕をつけるな。それだけだ」
 真剣な顔で口にしたモーディスは肩から手を離し、あとは好きにしろ、とでも言うようにベッドに背をつける。その姿がなんだかあまり乗り気ではないように思えて、正直なところファイノンは少しだけつまらなく感じた。まるで僕が君の体だけが目当てみたいじゃないか、と口にすれば「違うのか?」と返ってきそうで、ファイノンは言葉に詰まる。
 多分、半分その通りで、半分そうではないと思っているからだろう。
 ファイノンはモーディスと体の関係を何度も持ってきたけれど、きっかけは「酔った勢いで」だった。
 彼とこんな風に不定期に寝るようになる前は、好意を向けられた相手と、後腐れなしでと割り切ってくれるなら、と言って寝てきた。黄金裔は誰か一人に縛られるわけにはいかないから、と最もらしいことを言えば、大抵は納得してもらえていた。だから、今までそれで不都合もなかった。
 彼が嫌だと言うのであれば、ファイノンの生活は過去に戻るだけのはずだった。今は少し、モーディスと寝る回数が多いと言うだけで。
 別にモーディスでなければいけない理由はまだ見つかっていない。立場が同じで気軽だとか、男同士だと後腐れがないだとか、お互い恋愛感情がないからこうしてやることだけやってられるのだろう、とか、そう言うごちゃごちゃした理由はいくつか持っているものの、ファイノン自身もそれが本心なのかよくわからない。
 モーディスに関してはもっとわからなかった。彼はファイノンに体を許している理由を言わないが、ファイノンと違って他人と同衾している話も聞かない。噂もないのに、オクヘイマにくる前は百戦錬磨だった、なんて話だけは蔓延している。
 トップとボトムは「こっちでいい」とモーディスに最初に言われて、ファイノンは君がいいならそれで、と返しただけだった。返答を意外には思ったものの、ボトムをしたことはなかったし、その気も沸かなかったので、これ幸いとモーディスが望んだ通りに彼を抱いた。それから二度とこの話をしていない。
「その気がなくなったなら帰れ」
 眉を寄せたまま固まっているファイノンを見上げ、モーディスはゆっくり身を起こす。ファイノンの体をそっと押し除け、ベッドを下りて行く。サンダルを履き、棚に置いていたザクロジュースと杯を取ると、ぬるいそれを杯に注いで呷る。
 ベッドのはじに腰掛けたファイノンはジト目でモーディスを睨むと、「君ってちょっと冷たくない?」と拗ねたように言う。
 モーディスが冷たいからどうかでいえば、部屋に入れてくれた段階ですでに冷たくはなかった。時刻はすでに隠匿の刻第二針を回っている。
 ファイノンは今夜、寝苦しさに目を覚まし、なんとなく二度寝をする気にならなくてモーディスの部屋を訪れた。一人でいると余計なことを考えてしまう瞬間があり、今夜はどうにもそんな予感がした。
「勝手に押しかけてきたのはお前だろう。俺はもう床についていた」
「それはそうだけど、開けてくれたのは君じゃないか」
……………
 ファイノンの言葉を無視して杯を傾けているモーディスの姿に少し苛立ち、ファイノンはベッドを下りて彼のそばに近寄る。三つ編みの解かれた髪に触れて、喉から顎を手のひらで撫でる。
 ファイノンの奇行を気にしていないのか、モーディスは無防備にファイノンの手を受け入れた。モーディスの喉がこくりと震えるのが手のひらから伝わって来て、なんだかそれに妙に興奮する。
 中身の残った杯を持ったままのモーディスの手首を掴み、棚に押し付け、唇を重ねた。嫌そうに一瞬体が強張るが、結局蹴り飛ばされはしない。
 鉄錆に似た塩気と酸味が舐めた舌から伝わり、やっぱり、あんまり気分のいいものじゃないな、とファイノンは眉を寄せた。
 唇を首筋に埋め、モーディスの腰に腕を回して引き寄せる。
 杯の残りを嚥下する音を頭の上と触れた喉許で聞きながら首筋に執拗に口付けていると、モーディスが溜息と共に髪を撫でてくる。まるで聞き分けのない子どもをあやすような手つきに、ファイノンの胸がちり、と痛む。子ども扱いされているのが気に入らない。だけど、彼がこんな風に髪を撫でてくれるのは嬉しい、それと同時に、急に恥ずかしくなった。今の自分の行動が少し子どもっぽい自覚もあった。
 子どもはこんなことをしない、と言うのはさておいて。
「痕はつけるな」
「いたっ」
 ファイノンが肌に吸い付いていると、突然後頭部の髪を鷲掴みにされ、グッと引かれる。苛立った金色の瞳と目が合い、ファイノンも負けじと眉を寄せる。
「別にいいだろ、君の体質ならすぐ消えるんだから」
「そう言う問題ではない」
 髪から手を離し、モーディスが首を横に振る。
「例えすぐ消えたとしても、された事実は残るだろう」
……えーとつまり?」
「察しの悪い男だな」
 愚か者を見た時のように不快感に鼻を鳴らし、モーディスはやれやれとため息を着く。さっぱり彼の言うことがわからないファイノンが剣呑そうに眉を寄せていると、「こう言うことだ」と言いながら、モーディスはファイノンの胸許の服を外側へ引っ張り、そこへ唇を寄せた。
「へ、」
……まぁこんなものか」
 強く吸われた感覚は確かにあった。服で隠れる場所だったけれど、赤い鬱血痕が微かに残っている。モーディスと違って数日は残ってしまうかもしれない。
 かーっ、と体の中を熱が走る感覚にファイノンが口を開閉させていると、ぺし、とモーディスが肩を叩く。
「消えたらまた来い」
「それってどういう……?」
「俺は寝る」
 一方的に会話を断ち切ると、モーディスは今度こそファイノンを押し除け、さっさとベッドに戻ってしまう。ちょっと、とファイノンがベッドに駆け寄って声をかけようが、肩を揺さぶろうが、モーディスはもう無視を決め込んで反応を返さない。
 仕方なく、ファイノンは彼のベッドの隣に勝手に横たわり、勝手に抱き枕のようにモーディスを抱きしめて目を閉じた。
 居心地が悪そうに、一度だけモーディスが身じろいだことには気づいていたが、気づかなかったふりをした。

   *

 モーディスにつけられたキスマークは一日も経てばすっかり消えていた。昨日はなんとなくついたままで過ごすのに落ち着かず、ファイノンは何度も見えてはいないだろうかと気にして服の中を覗き込んだりしてしまったけれど、今日はそんな心配をしなくても良さそうだった。
 果たしてモーディスの言わんとすることはなんだったのだろう、と服を着て朝の鍛錬に向かう。その途中、なんとなく、キスマークの残っていた場所を指で触れてしまう。あんなことをされたのは初めてで、正直思い返すたびにちょっとだけ興奮した。モーディスの伏せられた目許にびっしりと生えた睫毛が、そっと自分の胸許をくすぐっていった感触を思い出し、肌の上をビリ、と雷と熱が走るような感覚を覚えてしまう。
 ファイノンは時々、兵士と一緒に基礎訓練をすることにしている。その方が兵の士気が上がるだろうと考えての行動だった。英雄であろうと基礎の鍛錬は欠かさない。一介の兵であれば尚更、なんて考えてもらえればいいという思惑も込みだった。
「あれ」
 訓練所に着くと、珍しくモーディスがそこにいた。クレムノス人とオクヘイマ人の確執は根強く、普段、モーディスはあまり自分から積極的にオクヘイマ人に関わらないようにしているように感じていたので意外だった。
「珍しい、君がいるなんて」
「基礎を教えてくれと頼まれたからな」
 モーディスがそう言って視線を下げた先には、彼の腰ほどの高さもない少年が、目を輝かせながらモーディスを見上げている。
「えーと君は……
 バルネアで見かけたことがあるような、と思っていると「ペレウスです」とファイノンを見上げて緊張した顔を見せる。そういえば、以前、モーディスが子どもに乞われて訓練をつけてやっていた、という噂を聞いたことがあったような気がした。どうやらその相手がこの少年だったらしい。
「君はオクヘイマ人だろう。教わるのはモーディスでいいのかい?」
 本人を前にして失礼な物言いだったが、わざとだった。ファイノンは不愉快そうに眉を寄せるモーディスを想像したが、横目で伺ったモーディスの表情は全く変わらない。なんだかそれが気に入らない。
「僕はモーディス兄さんに憧れてるんです」
 ペレウスがぐっと拳を握りながら、きらきらした瞳でモーディスを見上げる。純粋な好意を向けてくる少年に、モーディスは瞳をそっと細め、微かに口角を上げた。
「モーディス兄さん、この間教わったことできるようになったよ。だから今日はもう一段階上のものを教えて欲しいんだ」
「そうか。しかし焦る必要もあるまい、まずは前回の復習からだ」
 微かな微笑みはとうに消えていた。表情こそいつもとあまり変わらない無表情さだったが、モーディスの声は子どもにむけているせいなのか、幾分柔らかかった。なんとなく声のトーンが気に障り、ファイノンは「へえ」と鼻白む。面白くない。何故だかよくわからないが、確かにそう思った。
「お前は向こうで新兵たちと訓練をするのだろう」
 さっさと行け、と両腕を組んだモーディスに顎で示され、その態度にも苛立ちが募る。子どもに訓練をつけてやっているモーディスにこんなに苛々するのは変だ、と自分でも思ったが、なんだか心がささくれ立っている。
「あの……えっと、」
 なんとなく険悪な空気を感じたのか、ペレウスが困惑したように声を上げた。
「早く行け。俺を言い訳にお前こそ鍛錬をさぼるなよ、救世主」
 モーディスは馬鹿にしたように声をかけつつ、そっとファイノンとペレウスの間に体を移し、視界を遮るように立つ。ファイノンの肩を強めに押すと、「行くぞ」とペレウスを連れて去って行く。
……はいはい、君も未来の戦士の育成頑張って」
 よろけるふりをしながらそう呟き、ファイノンはなんとなくまだ自分の感情に納得が行かないまま訓練所へ向かった。
(失敗した)
 きっとあの少年についてはモーディスがケアしてくれるだろうけれど、そもそもあんな態度を取るべきでないことは明白だった。

   *

 消えたら来いと言っていたし、と言い訳を何度も繰り返しながら、石板でモーディスに連絡を取り、今回は予め来訪を告げておく。
 了承の返事をもらってから部屋に向かうと、モーディスの部屋の戸は、ファイノンを拒むことなく錠が回転する。
「モーディス」
 手土産もなく押しかけたのは、この後一緒に夕飯はどうかと聞こうと思っていたからだった。まだ眠るには随分と早いので、もし彼の機嫌が良ければ、軽く「運動」に付き合ってもらいたかったと言うこともある。
「何の用だ」
 モーディスは部屋の中心の浅いピュエロスに腰を下ろし、足を湯に浸しながら、書を読んでいるようだった。カーテンの開け放たれた部屋の中には日差しが半分ほど注いでいて、風が微かに通る中に、柑橘類の香りが混ざっているのを感じた。入浴剤でも入れたのだろうか、と思いながらそばへ近づく。
「何を読んでるんだ?」
「クレムノスの歴史書だ」
 横から覗いてみるが、古代クレムノス語で書かれているのか、ファイノンには何一つとして読めそうにない。
 モーディスをはじめとしてクレムノス人は戦うことにしか脳がなく、芸術や文学を解さないと思っている人間が多いが、少なくともモーディスは芸術や文化を愛し、案外読書を好む男だと言うことをファイノンは知っている。
 モーディス自身は別に隠している訳ではないらしいが、ファイノンはなんとなく、他人には誤解されたままでいて欲しい気がした。かと言って、彼が他人に誹謗されるのも腹が立つのだが。
 彼はただでさえ、端正な顔立ちと完璧な肉体を惜しげもなく晒しているのだ。恥じるところがないだけだとモーディスは言うが、武芸に秀でている上に芸術も解する人間だと知られれば、それはいくら何でも魅力的すぎるだろう。それにこう見えて案外、モーディスは理不尽に怒らないのだ。
 ファイノンがからかい続ければ怒鳴り声もあげるし粗暴な態度もとるし、勝負をけしかければ乗ってくれるが、そこまでしなければ日常のことは概ね流してしまう。
『あの』クレムノス人の王子に自分からつっかかっていく大人は今のところファイノンだけだと言う話で、今朝のように、子どもが話しかければ彼は普通に応対するし、優しく接してしまう。それを大勢に知られる日が来ないで欲しい。
……おい、なんだ突然」
 急に胸が痛くなり、ファイノンは書を読んでいるモーディスを強く抱きしめた。
 何故だろう。彼が自分以外の人間に優しくしている場面を見ると、なんとなくずっと気に入らない。
 自分が誰と仲良くしようが、優しくしようが、果ては寝ようがモーディスは一切気にしない。気にされていないので、文句も嫌味も言われていない。
 それがなんとなく、気に入らない。今日はそう言う気分だった。

 読書を邪魔されたモーディスは、無言のまま抱きしめてくるファイノンを一瞥してから、なんとか片手で読書を続けた。ファイノンがなんの目的で来訪したのかは知らなかったが、夕食を誘いに来たのかもしれないとなんとなく考えていた。そのつもりなら付き合ってもいいし、そうでないなら勝手に気が済むまで部屋にいるつもりだろうか、と思っていた。
 しばらくそのまま読み進めていると、唐突にファイノンが書を取り上げて、丁寧にモーディスの手の届かないところへ置いてしまう。取り上げた速度と扱いの丁寧さのギャップにモーディスは少しだけ感心した。ファイノンのそう言うところは好ましい姿だった。
「どうした」
 モーディスは不満そうに眉を下ろし、捨てられた犬のような情けない顔をしている男にようやく向き直る。
 この間相手をしてやらなかったのが不満だったのか? と一瞬考えたが、別に自分が相手をしなくても他に誰かを見つけるだろうと思っていた。そう言う話は散々風の噂で聞いているし、本人も別段隠す気はなさそうだったので、嘘ではないのだろう。
 今までも何度か、気が乗らなくて付き合わなかったこともあれば、途中で興が削がれて追い出したこともある。モーディスの方が体力があると言っても、負担は自分の方が大きい。
「君の言うことはよくわからない」
「どの話だ」
「これだよ」
 ファイノンはすでにキスマークは跡形もなく消えている胸許を見下ろしながら、先日モーディスに触れられた箇所を指で撫でる。
 痕をつけたから「他でできなかった」という文句か? とモーディスが考えていると、「やっぱり消えたら何もないじゃないか」とぶつぶつ、拗ねたような口調で言う。
 ふむ、とモーディスは首を少し傾け、果たしてこれはどう言う反応なのかと思案した。ファイノンは時折、年不相応に幼い反応をするので、考えが読めなくなる男だった。
「だが、お前はそこにつけられたことを今の今まで気にしていたのではないか?」
「それはそうだけど、だって君、普段はあんなことしないじゃないか」
 自分の胸許に視線を下したままのファイノンを見つめながら「それが答えだろう」とモーディスは淡々と口にする。
「消えようがつけられた事実は変わらない。痕を残したことをすぐに忘れてしまえるくらい消える速度の方が早かろうが、つけられた方はそうではないと言うことだ」
 ピュエロスから足を引き、濡れたまま部屋を移動して、ファイノンの脇へ置かれた書を床から持ち上げる。書は水に強い加護が付与されているが、汚れには弱い。
 モーディスは汚れがついていないか確認し、読みかけのそれを棚へ戻した。おそらく、今日はもう読書をしている時間が取れないだろう。
「モーディス」
 ピュエロスの前でしゃがみ込んだままのファイノンに呼ばれ、モーディスは彼を振り返った。頭を抱えるようにしているファイノンの背を蹴飛ばして湯に落としてやろうかと一瞬考えたが、濡れた服をこの部屋で乾かされる方が面倒だった。
 黙してファイノンを見下ろしていると、しばらくして、膝に肘をつきながら、ファイノンがモーディスを見上げる。
 哀れそうな表情をしたままの男に、モーディスは自分がどんな顔をしているのかわかっているのだろうか、と疑問が浮かんだ。きっとわかってはいないだろう。
「随分と情けない顔をしている」
「そうかな。……君が相手をしてくれないからかも。まあ、別に君にそんな義務はないけどね」
 恨みがましい目を向けてくるファイノンを見つめ返しながら、面倒なことを言われているとモーディスは感じた。どうせならもっとはっきり自分の欲望を口にすればいいものを、と思いながら、嫌味に気づかないふりをしてやることにした。ここ数日、ファイノンに何があったのかは知らなかったが、きっと彼の中では何か嫌なことが積み重なっていたのだろう。
 モーディスが思案しながら無言で見つめていると、やがて、諦めたようにファイノンがため息をついて立ち上がる。
「別に用はなかったんだ。ちょっと顔が見たくなって、それだけ」
「そうか」
「あーでも、予定がないなら後で夕食を一緒にどうだろう。まぁ、別に来なくていいよ。友人と夕食を摂るより本を読む方が忙しいだろうから」
「気が向けば行く」
 面倒な言葉を重ねてくる男の顔を見つめ返しながら、用がないなら行け、と言うようにモーディスは顎で戸を示す。
 ファイノンが少し傷ついた顔をして横を通り抜けるのを確認してから、ようやく声を上げた。
「今夜もう一度つけて欲しいか?」
 足を止めたファイノンが振り返り、モーディスは自分の胸を――先日キスをしてやった場所を指差した。
「夕食は気が向けば行く。食休みに読書をするかもしれないが、お前がここへ来たければ来ればいい」
 片足を一歩を踏み出したファイノンを、モーディスは制止しなかった。
 果たしてこの男の考えていることが、モーディスには今もよくわからない。それでも、どうやら執着されているらしい、とは考えていた。
 友人だと言ったり友ではないと言ったり、よくわからない男だった。それは彼が未熟で、英雄としての覚悟が決まりきっていないからと言うのもあるのかもしれない。
「それって今じゃだめなのかい?」
 肩に手を置きながら、真剣な目で尋ねてくる男を見つめ返し、モーディスは微かに口角を持ち上げた。
「その気にさせてみたらどうだ?」


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