小さな雪が散り散りに舞う街の大通りでリコとロイは、名物のコイキング焼きを求めてどこかに走って行ってしまったウルトが来るのを待っていた。なぜなら今二人が並んでいる列の先にそのコイキング焼きのお店があるからだ。方向音痴で考えなしに飛び出すウルトでもそのうちここに行き着くだろうと考え、のんびりとこの長い列に並ぼうと決まったのだ。並んでいる間、寒いのが苦手なマスカーニャはボールに戻って、キャップはベンチでアチゲータの背中に乗って暖をとっている。
「それにしてもほんとにすごい行列だなあ」
「うん。コイキング焼きは縁起がいいんだって」
「どんな風に?」
「弱いコイキングが強いギャラドスに進化するのに由来して、今はどれだけ低いところにいてもいつかは大成する…って言われてるみたい」
「へぇ〜…じゃあ今の僕たちにもピッタリだね。これからライジングボルテッカーズの真実を取り戻すんだし」
「だね」
二人は改めて決意を胸に微笑む。するとそこに冷たい風がひゅーっと吹き込んだ。思わずリコは身を竦めて震えた。
「リコ、大丈夫?」
「うん…でもちょっと寒いかも」
「じゃあこれ着て。僕は平気だから」
「ありがとうロイ」
ロイはなんともないといった顔で上着を脱ぎ、リコに着せる。その時リコが両手を上げていると、その手が少し赤くなっていることにロイは気づいた。着せた後で、ロイはリコの右手を軽く握った。
「わ。リコ手冷たいね…」
「うん。この街けっこう冷えるから…」
「しばらく握ってあっためとこっか」
「あ、うん…ありがと…」
右手を握られたまま左手も取られ、リコの頬は少し赤くなった。周りには大勢の行列客がいる中、すっかり二人きりの世界だ。しかしロイにとってはそうでもない。リコが握られた両手を見つめている間に周りにウルトが来てないかを一応探す。すると、同じ光景がいくつか目に止まった。するとロイはリコの右手を握ったまま、自分のズボンのポケットに突っ込んだ。
「え?え?ロイ?」
「どうリコ?あったかい?」
「ええと…あったかい…けど…なんで…?」
「ほら、あの人たちこうやって歩いてるからさ。多分これがあったまるんじゃないかって思ってさ」
ロイが目配せした方をリコが見ると、そこには数組の男女が今のリコとロイのように、男側のポケットに握った手を入れて歩いている。確かに元々体温の高いロイの体に密に触れるからあたたまるのは間違いない。でも、これは。
「あ、あのねロイ…これはその…カ、カップ…」
「ん?カップ?ごめんどういうこと?」
「…なんでもないよ…うん、大丈夫…あったかいね」
「へへ、よかった。あ、でもこれだともう片方の手が冷たいね…どうしようか」
「こ、このままでいいよ。私もポケットあるから手入れとくし」
また両手を握って向かい合うのもかなり恥ずかしい。後ろの人たちから視線を感じてリコはより一層頬を染めた。手を握っているだけのはずなのに、いつの間にか全身がポカポカとあたたまって、なんなら暑いくらいだ。それはまるでロイへの想いのように。
冷たい風が涼しく感じるほどになってしばらくして順番が来たことでとうとうロイの手が離れた。少し安堵すると共に、抜けていく熱がほどよく身を包む。しかし離れた手が少し寂しい。ちょっとだけ、心が冷えた。店員から受け取ったコイキング焼きは箱からもあたたかさが伝わる。ロイの手、ポケットの中の熱とは少し違う、機械的なぬくもりは今のリコにとって、ちょうどいいくらいに感じられた。
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