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ながとぅ
2025-06-06 18:02:18
3407文字
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ZZZ/ビリイト1W
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ZZZ【ビリイト1W/敬具、無敗のチャンピオンより】
ビリイトワンウィーク!第四弾!!今回は余裕を持っていけたぞ…!実はライトさんがこう思っていた、的な回です。
お題①: ビッグ・トラブル
お題②: 分かってねぇな
今日は、タンデムでドライブの約束だ。天気もおあつらえ向きに快晴。
自慢じゃないが、パイセンからの誘いを断った事はない。言ってしまえば、楽しみでない訳がない。昨夜、しっかり眠れなかったのがいい証拠だ。
ギンギンではあるが、事故るのは良くない。と言う訳で念の為、寝不足の目をカフェインで覚まし、パイセン並びに邪兎屋が暮らす事務所へ向かう。早く着きすぎた事でパイセンに気を遣わせないよう途中でエンジンを切り、バイクを押して事務所の入居しているビル入口へ横付けする。
スタンドを立ててバイクに跨ったまま、ポーチから飴を口に入れる。
ぶどう味
――
当たりだ。まさにパイセンと出かける日に相応しいチョイス。運がいい。
「ふん、こんなところに無敗のチャンピオン様とは」
パイセンを待つ時間すらも楽しんでいると、空気を壊す無遠慮な声が聞こえた。毎度お馴染み俺の気分を下げる“天才”の登場だ。
毎回顔触れは違うが、俺の行く先々に必ず現れるクズ共。今日は二人だけ、少ない方だ。
「なぁ、俺たちと遊ぼうぜ、赤いマフラー。ダッチワイフが来るまで可愛がってやるよ」
「あんなオンボロ機械人に尻尾振って楽しいか?」
「おら、口開けな。天国を見せ
――
へぶッ」
マフラーを掴んだ挙句、俺をバイクから引きずり降ろそうとする手。
掴まれる前に払うのは簡単だが、敢えて距離を縮めさせる。
この手の輩は至近距離になればなるほど油断するからだ。俺が拳でのし上がった男だと知りながら愚かだとつくづく思う。
「汚ねぇ手でコレに触るな」
まず、背面で構えた右拳を鳩尾に一発。そのまま心臓と喉にも一発ずつ。
初撃で気絶しなかったのは評価に値するが、急所への二打で鼓動と呼吸のタイミングを崩され、呼吸がままならなくなった男が地面にくずおれる。
「アニキ!?」
こういう輩は身体に言い聞かせる必要がある。
バイクから降り、マフラーを整えてから改めて拳を握る。
「
……
分かってねぇな」
後はこの有象無象を徹底的に“教育”するだけ。
――
そう、実に簡単で簡潔なお仕事。
【敬具、無敗のチャンピオンより】
「ひぃいい
…
!」
足元が覚束ないせいで電柱とオトモダチになっているアニキと呼んだ男を置き去りにする速さで、顔を腫らした腰巾着が我先にと尻尾を巻いて逃げて行った。
未だに自分のタイミングを取り戻せないアニキは文字通り息も絶え絶えで腰巾着の後を追っていなくなった。
「ふぅ
…
」
いかに市街地と言えど、一本路地に入るだけでこうした些細なトラブルは日常茶飯事。
俺も有名人になったもんだと肌で感じる。とはいえ、無駄な騒ぎを起こしたい訳じゃない。下手に目立つとトラブルが些細の一言で済まなくなるからだ。
言ってしまえば、治安局の世話になりたくない。無法者が世話になれば直前の汚れどころか、積もった隙間の埃まで“掃除”しようとするからだ。
「着きましたよ、と
……
」
間抜けな逃げを打つ奴らの姿が完全に消えた所でバイクのエンジンを再始動させ、ノックノックでメッセージを送る。
すぐに既読が付いて、スターライトナイトのスタンプが返って来た。
「悪い!ライト、待たせたな!髪型が決まらなくてよ~
…
!」
「いーえ、今来た所なんで大丈夫すよ」
――
勿論、嘘だ。
さっきみたく変な虫がパイセンを貶すのは許せない。結果、いつの間にか早めに到着して露払いをする事が俺のルーティンになっていた。
「んじゃ、行くか!安全運転で頼むぜ、ライト!」
「安全運転じゃ物足りないくせに何言ってるんすか」
こうして、楽しい楽しいタンデムドライブが始まった
――
かに思えた。
出発前の輩に運を吸われたらしく、天気予報は大ハズレ。帰りに大雨に降られ、パイセンの部屋に一泊する事に
――
というか、俺が提案したんだが、心臓が口から出るくらい緊張したものの、パイセンにはその緊張は欠片も届いていないようで心底安堵した。
互いに風呂を終え、早々にベッドへ横になる。
機械油とガンオイル、そこへスパイスのように入り混じる硝煙の香り。パイセン特有の匂いに包まれ、ベッドに寝転がる。悶々としない訳がなかったが、雨天時の運転から生じた疲労、昨日の寝不足と睡魔からダブルパンチを食らって速攻KOされたのだった。
――
この距離感でいい。これ以上詰めてはいけない。繊細なパイセンの事だから思い悩ませる余分な要因は増やしたくない。
まぁ、あの日は目が覚めた時、パイセンの腕の中で抱かれるように寝ていたのは信じられなかったが、それはそれ。
おかげでどんな顔をしていいのか分からず、パイセンが起きる前に部屋を出た訳だが。
それからパイセンと俺は映画やらメシやら、たくさんの時間を一緒に過ごした。
パイセンがどう思っているかは分からないが、俺としては十二分なほど幸せな時間で、どれもかけがえのない大切な思い出だ。
――
そんなある日。
スターライトナイトのステッカーが付属している飴を買い占めた所で出くわしたプロキシの頼みでホロウに入った。
仕事自体は簡単で、難なく終えた。プロキシが帰路を検索している間の出来事。
「シークレット、出ろよ~
…
!!」
「ま、帰ってゆっくり開封の儀って奴を
――
」
――
言いかけた矢先。
倒したはずのエーテリアスから伸びる凶刃。
それは、パイセンの背後から、彼自身へ向けられている。
パイセンは気付いていない。
この速さだと声をかける方が遅くなる
――
ならば俺の取るべき選択は一つ。
「
――
ライトッ!?」
機械人でありながら速度に特化させているせいか、人間である俺より軽いパイセンを引き寄せ、真正面から攻撃を受けた。
踏ん張りも虚しく、空へカチ上げられて
――
って、何でアンタがそんな顔してるんだよ。俺はアンタが無事なら、それでいいんだ。
「ははっ、分かってないっすね
――
」
受け身を取らねば、と思いながら呟きを漏らしたものの、身体が思うように言う事を聞かない。
それでも身体は重力に従い落下を始めようとした直前、突如背後に生まれた裂け目に身体が吸い込まれる。
同時に意識がブラックアウトしていくのが分かった。
▼▼▼▼▼
上も下も前も後ろも、どこを見ても真っ暗なのか、真っ黒なのか分からない。サングラスを外して見ても景色は変わらなかった。加えて、足が地面に付いている気がしないし、寒々しい。そんな前後不覚に陥りそうな場所に浮いている。
異様な感覚から察するに、ここが現実でない事は分かった。
すると、俺は死んだんだろうか。
あの人を庇って死ねたなら本望だ。
いや、本当ならあの人の傍で
――
。
「
……
欲深くなったな、俺も
…
」
思わず溜息を零しながら目頭を押さえる。
贅沢な願いだと自分でも理解しているが、あの人の傍にいる時間が長くなればなるほど、欲深くなっていっている自覚はあった。
何とも言い表しづらいこの心は、自制出来なかった俺のせいで生まれたものだ。
「何だ
…
?」
不意にサングラス越しでも眩い“白”が射し込んで来る。
それは小さいが、温もりを感じる色。
自然と足がそこへ向けて歩き出す。
さっきまであった地に足が付いていない感覚は消え失せていた。
近付くにつれて強さを増していく。
「
――
ライト」
それを手繰るように手を伸ばすと、脳内に響いた声。
そして、俺の手を掴んだ体温。
嗚呼、行かないと。
――
あの人が呼んでいる。
▼▼▼▼▼
ゆっくりと瞼を開ける。
さっきと打って変わって真っ白な場所に出た。
今度は浮いていないし、暖かい。恐らくベッドの上で、病院なのだろう。
「ライト!?」
これは、あの人
――
パイセンの声だ。
するとこれは現実。
何だか慌てているように見える。
そんなに慌てなくても大丈夫ですよ、俺はここに
――
飛び起きようとしてみたものの、身体がやけに重く、思い通りに動かない。
『パイセン、無事だったんすね』
「
……
アンタ、誰だ」
せめてもの気持ちを込めて口に出そうと思った言葉。
しかし、口から出た言葉はあまりに食い違っていた。
「は
…
?」
俺自身も驚いたが、それ以上に驚いていたのは他でもないパイセンだった。
――
これはかつてないビッグ・トラブルの予感、いや
…
ビッグ・トラブルそのものだ。
END?
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