三毛田
2025-06-05 21:36:02
1081文字
Public 1000字4
 

14 014. 波間にゆられるように

14日目
君は浮かぶ

 暉長石号の、ナイトプール。
 仰向けに浮かび、目をつぶっているのは俺の恋人。
 船長権限を使い、今夜は列車で貸切。
 なのは楽しそうにゲームをしていたし、姫子はバーへ。
 ヨウおじちゃんは、階差宇宙のエリアに向かうのを見かけた。
 そして丹恒は、水着に着替えてずっとプールに浮かんでいる。
 まるで波間に揺られるように。
「楽しい?」
「楽しい、楽しくないという問題じゃない。ただ」
「ただ?」
「ドリームプールに身を沈めるより、こちらのほうが水に触れていると感じられるな」
「ふうん」
 せっかく二人きりなのに、構ってもらえないくて拗ねてるんですけど?
 それでも、俺のことなど意識の片隅にすらないようで。
「穹」
「なにさ」
 一応飲み物でも取りに行くかと、プールを出たら声をかけられた。
「飲月に戻っても構わないだろうか」
「それはお前が決めることだろ」
「俺の姿を見られることで、お前が不利益を被るのであればやめておくつもりだ」
 俺のことしか考えてないじゃん! これって、愛されてるってこと?
「何とかするから、丹恒の好きにすればいいさ」
 丹恒の隣に泳いで向かい、そっと彼の頬を撫で。
……お前のそういうところ、好きだ」
 柔らかな声色とともに、長い黒髪が水面で揺れる。
 画になるな。
「穹?」
「飲み物、持ってくる!」
 俺が動揺しているのを感じ取ったのか、くすりと笑い。
 それから軽く泳いでこちらへと来て、プールから上がる。
「どうせ俺と飲むのだろう? それなら、一緒に買った方が効率的だ」
「船長権限で、お金はいらないらしいけど」
 トロピカルジュースは、碧と黄色が綺麗に二層に分かれていて。でも、混ぜたら変わってしまうんだろうな。なんて。
 久しぶりにモクテルでも作ってふるまうかなぁ。
「げっ」
 渡されたジュースは、真ん中がハート形で、先端が二つになっているストローが刺さっている。
 店員はニコニコしているだけ。
「穹、あちらで」
 俺の腕にそっと手を添え、チェアを指差し。
 チェアを寄せ、真ん中にテーブルに置いて。
「吸えない」
 ハートの片方を吸ってみるも、吸えなくて思わず眉を寄せてしまう。
「穹。俺がこちらを吸う。そうしたら、お前がもう片方を吸えばいい」
 ツヤツヤの唇が、ストローに添えられ。ドキドキしながら、俺ももう片方へ吸い付いて。
「!」
 そしたら吸えたので、丹恒を見ると彼は微笑んでいる。
「よかったな」
「う、うん!」
 飲月の姿だと、いつもよりえっちに感じるな。
 でも、それは口に出さなかった。