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THE_ENDuuu
2025-06-05 00:58:42
1887文字
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安心(灯有)
一緒に寝る灯有。
エアコンの低い唸り声と、遠くで聞こえる首都高を走る車の音。ここ数日の、じっとりと汗ばむような気怠い室温。深夜1時を回った寝室には、無音とは呼べない静けさが漂っていた。生温いシーツの感触がやけに生々しく、眠れぬまま灯世は天井を見つめていた。
今日は有と二人揃って夕食を済ませ、一時間程前にそれぞれ寝床へついた。眠れる時に眠るという長年の習慣からか、寝付きも寝起きも良い有は、きっともう眠りについているだろう。灯世もいつもなら、眠りについている頃だ。
けれど、時々こうして有が家を空けている日のように変に目が冴えて寝付けない夜がある。目を閉じて意識を霧散させても一向に睡魔が訪れる事なく、眠ることを諦めて瞼を開けた。
暫く天井を眺めていたが、少しだけ悩んで身体を起こす。断られたら戻ってこればいい。そう思いながらも空調の電源をオフにして部屋を出た。
隣の部屋の前に立ち、ノックをするか悩んで、そのままドアノブを捻る。鍵付きの個室であるものの、抵抗なく扉は開いた。灯世も有も、断りなく相手の部屋に入る事自体少ないが、例え入られても困ることがないため施錠は滅多なことがなければしない。
常夜灯の明かりもなく真っ暗な部屋に足を進める。寝付けないうちに目が慣れてしまったのか、暗闇の中でもベッドの上の膨らみが静かに上下するのが分かる。
そっと様子を伺うように覗きこむ。セミダブルのベッドの端っこで、クッションを抱きかかえるように丸くなって眠る有。あまり見ることのない、有が一人で眠るときの形。
出会った時から、子供らしさが許されなかった環境で、有はいつだって大人びて見えていた。我儘や甘えを閉じ込め、大人にも臆することなく向けられる瞳は、この20年ずっと変わることはなかったように思う。そんな有が、いつも綺麗に伸ばされている背筋を丸め、身を守るように小さくなって眠っている姿は、まるでひと匙だけ残された有の幼さを見ているようだった。
ーー起こしてしまうだろうか。
そう思いながらも、有が眠っているベッドに入り込む。一人で寝るには十分な大きさのベッド。けれど男二人で眠るにはいささか窮屈なそこには、一人分のスペースが開けられている。それを自分の都合の良いように受け取り、その隙間を埋めるように身体を潜り込ませた。
「
……
灯世?」
少しだけ寝ぼけた有の声がして、やっぱり起こしてしまったなと、少しだけ申し訳なく思う。
「悪い、起こしたな」
「別にいい」
そう言いながら有は身体を起こし、端に追いやられていた枕を灯世の元に置き直す。「一緒に寝てもいいか」と聞く前に迎え入れられたことに、見透かされた様な気恥ずかしさが生まれるが、ベッドに入り込んでおいて今更言い訳も無駄だろうと思い、差し出された枕に頭を埋めた。背を向ける様にして寝ていた有はこちらに身体を向け、いつの間にか抱えていたクッションも枕元へ置かれている。
「何かあったか?」
再び寝る姿勢をとりながらも、真っ直ぐこちらの様子を観察するように見つめられる。
「いや、ただ少し寝付けなかっただけだ」
隠し事をする気も、そもそも隠すような事もなかったが、正直に部屋を訪れた理由を話すと、嘘がないと判断したのか、安心したように有の表情が和らぐ。夜中につまらない理由で眠りを邪魔されたにも関わらず、その身勝手を咎めるどころか、心配までさせてしまった。それにまた申し訳なく思うも、自分のためだけに向けられた優しさに先ほどまで尻尾も掴めなかった眠気が覗く。小さく欠伸を漏らした灯世を見て、再び緩められた表情に釣られるように口元が緩むのを感じた。
先ほどまで小さく背を向けていた有は、今はこちらを向いて足も下まで伸ばして横たわっている。灯世の寝るスペースを気遣ったのか、無意識のうちなのかは分からないが、分からないままでもいいと思った。それが有の優しさであっても、有の隙に自分が入れている証なのだとしても、大切にしたいことには変わりない。
身じろぐように少しだけ身体を寄せると、それに倣うように有も隙間を埋める。
「おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
エアコンの低い唸り声と、遠くで聞こえる首都高を走る車の音。そこに、間も無くして有の寝息が静かに聞こえてくる。先ほどまで眠れなくて参っていたのに、今は眠ってしまうのが惜しい。けれど、温まった有の手に握られた灯世の体温が混じり合う頃には瞼が重く、微睡んでくる。
「ありがとうな」
何に向けてのものなのか、自分でも曖昧な言葉と共に、額に軽く唇を落とし眠りについた。
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