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彼方
2025-06-02 22:06:28
2177文字
Public
お題箱より
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【011】こっちにおいで(全年齢)
お題箱より、付き合ってないDK兎赤(兎→→→←?葦)
小さな〝わざと〟を積み重ねるbktさんの話
【いただいたお題】
兎さんの裏のお顔を。赤くんの前ではぽやっとした感じなのに、
実は裏でいろいろ画策してるみたいな。2025/05/13
木兎さんはなんでそんなに忘れ物ばっかりするんですか、体育があることぐらい時間割見たらわかるでしょう?
木兎さん、早弁したら昼に食べるもん無くなることぐらいわかんないんです?
木兎さん、移動教室の後はさっさと購買行かないと焼きそばパン売り切れますってば!
これ以外にもいっぱい言われてる、赤葦からのオコゴト(お説教まではいかないぐらいだからコゴトだ、って赤葦が)
体操服を借りに行ったら、洗ったばかりの綺麗な方を貸してくれる赤葦。中休みに早弁したから昼に食うものが無いってしょぼくれてたら、多めに作ったからって特大のおにぎりをくれる赤葦。俺がしょっちゅう焼きそばパンを食べてることを、1年のころから知っている赤葦。1年生から一緒に過ごしてきた同級生のレギュラー連中よりも、後輩の赤葦の方が俺のことをよく知っているんじゃないかな。いくら木葉たちから〝木兎係〟なんて呼ばれてるからって、ここまでイタレリツクセリだとちょっとびっくりしちゃうよね。
俺も最初は赤葦に世話になりっぱなしで申し訳ないな〜って思ってた。バレーに全振りしてる俺のパラメーターはたぶんかなり凸凹してて、バレーはズバ抜けてるはずだけど、勉強とか身の周りのこととかバレー以外の方はまるっきりなんだろう。甘やかされるのも悪い気がしなかったし、なんならちょっとずつ赤葦に甘えるようになってたし、主将と副主将になってからは完全にニコイチ扱いされるようになってた。その頃ぐらいかな、赤葦のことが好きだなって気がついたのは。
赤葦のことが好きだってわかった俺は、赤葦のことを前よりもじっくり観察するようになった。もちろんセッターとエースの息が合わなきゃ困るからっていうちゃんとした理由もあるけれど、自分の好きな子のことは知っておきたいじゃん。
俺のバレー以外のポンコツぶりは相変わらずだったし、赤葦の世話焼きっぷりも相変わらずだ。でもずっと赤葦を見ていて気がついたことがたくさんあった。赤葦はたぶん俺の時間割を把握してるし、移動教室も頭に入ってる。辞書は俺に貸すために予備のやつも持ってきてて、多めに作ってくるおにぎりはいつも俺の好きな具ばかり。
俺がジャージを借りに行ったら『もう、次からは忘れないでくださいね』なんて言いながらマンザラデモナイ顔をしていること。俺の教室でみんなで弁当を食べてる時にたまたまクラスの女子と話をしてたら、ビミョ〜な顔でチラチラこっちの様子をうかがっていること。
あと
……
これは俺もびっくりしたんだけどさ。たまたま部活に行く前に体育館の横で赤葦を見た日のこと。てっきり女子に呼び出されて告白されてるところかなと思って、ヒヤヒヤしながら赤葦のことを見ちゃってた俺も悪かった。
『木兎先輩って、彼女とかいるのかな?』なんて聞かれてたんだ、よりによって後輩の赤葦が。どんなふうに答えるのかが知りたくて、俺は息をひそめて二人のやりとりを見守ってた。
そしたら『さあ、あのひとは部活のことしか考えてないようなバレー莫迦だからお付き合いとか無理じゃない?』『俺が入学する前に彼女さんがいたかどうかはわからないけど、いなかったんじゃないかな。始業前も放課後も休みの日もずっと部活だし』なんてくどくどお付き合いが無理そうな理由を女の子に話してるの。
間違ってない。赤葦の言うことは間違ってないし、なんで俺の気持ちそこまでわかるの? っていうぐらい俺が女の子にオコトワリする時の理由と同じだったからびっくりした。結局女の子は諦めたみたいだったけど、赤葦は俺にそれを伝えてくることはなかった。その後の様子も変わったところはないし、俺のところにあの子が来ることも無さそう。
そんなことがあったのに、結局俺と赤葦の距離は何も変わらないまま。仲の良い先輩と後輩・エースとセッター・主将と副主将っていうポジションで落ち着いてる。赤葦は相変わらず俺のことをよく見ているし、俺の面倒をカイガイシク見てくれる。でもね、それだけじゃイヤなんだよ俺。
俺が赤葦以外の奴と話をしてたら嫌だなって思うぐらいになって欲しい。
自分がいないと木兎さんはダメなんだ、って思うぐらいに俺のことを見ていて欲しい。
俺が卒業しちゃう前に、赤葦も俺のことが好きなんだって気がついてくれないかな。
だから俺はいろんなことを知ってるけど、知らないフリを続けている。辞書は部室のロッカーの奥に置きっぱなしだし、体操服はいつもわざと家に忘れてくる。購買の焼きそばパンも好きだけど、赤葦が時々分けてくれるコロッケパンも同じぐらい好き。俺にくれるおにぎりの具がだいたい肉味噌なのも、時々時雨煮になるのも知ってる。
赤葦がもっともっと俺のことを考えてくれるように、もっと俺のことで頭がいっぱいになってくれるように、小さな〝わざと〟を積み重ねていく。赤葦って頭は賢いのに自分のことはあんまりよくわかってないところがある。案外ぽやっとしてるし、たぶん俺がグイグイ行ったら押し切られちゃうんじゃないかなあ
……
。
でもそれじゃダメなんだ。ちゃんと自分で俺のことが好きだって気がついて欲しい。俺の方が先に自分の気持ちに気がついちゃったから──だから赤葦、お前も早くこっちにおいで。
2025.6.2
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