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傘道
2025-06-02 21:39:22
3905文字
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ビリイト
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緋色のヒーローはチャンピオンの味方
#billighter1w
【お題投稿〈第4回〉】
お題①:ビッグ・トラブル
お題②: 分かってねぇな
から書きました。
赤いマフラーを託された。
だからもうあの人に頼りっきりの自分とはおさらばしよう。
もうヒーローに縋るのはやめよう。
郊外にあるホロウの中、後ろを振り向きながらボンプは走る。
赤いマフラーを纏ったチャンピオンがボンプの後をついていく。
ただ歴戦の者は一目でわかる。
チャンピオンは負傷していて、怪我を庇うように走っていることを。
そしてサングラスに隠された顔色は青白いことも。
先代のカリュドーンに対して良からぬ感情を持っている輩は数多く存在する。
それに対処する役目を持っているのが、カリュドーンの子のチャンピオン、ライトだ。
喝采を浴びることがない戦いを続けていたが、一人のプロキシが観客になってくれた。
今も先代に恨みを持つ残党に決着をつけなければならない。
しかしここでアクシデントが起きる。
残党のリーダーが大型のエーテリアスをライトに戦わせるよう誘導したのだ。
残党達の攻撃を掻い潜りながら、プロキシを守りつつ大型のエーテリアスを倒す。
無敗のチャンピオンとしても限界があった。
ボンプを庇い、左の脇腹にエーテリアスの爪が深く刺さった。
そのままカウンターを決めて、エーテリアスを消滅させたものの残党達の決闘をまともにできる状態ではなかった。
撤退を決めて、最短の脱出ルートを捜索してボンプの中に居るプロキシ、アキラはライトを連れて逃げ出した。
背後から残党達が追いかけてくる。
傷の深さもあるが、苦手な血を見てしまったことでライトの精神は参ってしまった。
ふらつきそうになる足に鞭を打ちながら走り続ける。
アキラは脱出と同時に、解決策を模索しながらガイドをする。
どうすれば残党達を振り切れるのか?
カリュドーンの子に連絡をとろうと一瞬考えたが、これはビッグ・ダディとライトの約束だ。
他のメンバーはライトの使命を知らない。
どうすれば、この状況を脱することができるのか?
カリュドーンの子ではなくて、ライトの使命を知っていそうですぐに駆けつけてくれる存在。
そんなヒーローみたいな存在は居るだろうか?
いや、一人居る。
アキラは一か八かでリンに座標を送りその人物に来てもらうよう手配した。
ライトに伝える余裕はなかった。
負傷して顔が青白いライトは追っ手を振り切るだけで精一杯だった。
ホロウの出口まであと少し。
しかし非情にも出口付近で生体反応が複数検知された。
前方に待ち伏せしていた残党が居るのだ。
ボンプの足元に銃弾が放たれる。
アキラは慌てて止まり、ライトのそばまで駆けた。
もう逃げられないぞと二人をじわじわと追い詰めいく残党達。
「プロキシ、時間を稼ぐ。アンタだけでも逃げてくれ。」
「逃げるって
…
ライトさんはどうするんだい?その怪我でこの人数は
…
一人じゃ無理だ。」
「無理だとしてもやるしかない。」
ガントレットに触れ、よろめきながらもライトは臨戦体制に入る。
死んでもいいが、負けてはいけない。
その思いだけで自分を奮い立たせる。
複数の銃口が自分達に向けられる。
敵意と殺意が向けられる。
プロキシの盾になるようにライトは身構える。
残党のリーダーが撃てと命じた。
その時だった。
「悪あるところに正義あり!」
突然の口上にその場に居た全員の動きが止まる。
「光・臨!スターライト・ナイトー-!」
緋色のヒーローが宙返りをして、ライトの目の前で着地する。
「ビリー!」
アキラは賭けに勝った。
ちょうど邪兎屋の仕事で郊外に来ていたビリー。
先代のチャンピオンで、おそらくビッグ・ダディとライトの約束を察せそうな人物。
まさに自分達のヒーローであった。
「パ、パイセン
…
」
「よう、ライト。それに店長も。俺が来たからにはもう安心だぜ。」
ビリーは愛しい娘達をホルスターから取り出して構える。
「可愛い後輩達に手出したんだ。お前ら、覚悟はできてるんだろうな?」
突然の機械人の登場に残党達は戸惑うも、自分達の目的がチャンピオンを倒すことを思い出す。
お前に用はない。
チャンピオンの首が獲れればいい。
残党達はビリーとの戦いを拒否する。
「チャンピオンか
…
ライト、少しだけでいい。赤いマフラー、返してもらっていいか?」
「パイセン、何を
…
」
「何って
…
決闘するんだよ。」
いいからとビリーは一人の娘をホルスターに戻し、ライトに手を伸ばした。
「ライトさん、ここはビリーに任せよう。」
アキラがライトの足にしがみつきながら言う。
「
……
わかりました。汚さないでくださいよ。」
ライトは赤いマフラーを外し、ビリーに返した。
ビリーは首に赤いマフラーを纏う。
先代のチャンピオンが戦場に戻ってきた。
「よーく聞けよ。お前らとの決闘は先代のチャンピオン、ビリー・キッドが引き受ける。ま、現役のチャンピオン曰く、鈍ってるらしいがな。そんな俺に負けるならライトに一生勝てねーよ。」
再びホルスターから娘を呼び戻し、決闘に備える。
怒号、罵声が聴こえる。
この際、チャンピオンなら誰でもいいと言わんばかりに殺意がビリーに向けられる。
しかし当の本人は緊張している様子はない。
「It's showtime!」
決闘のゴングが鳴った。
娘達が放った銃弾が残党達の足や手首に命中する。
命は落とさないが、決闘を続けるのは不可能な部位だ。
呻き声をあげながらリタイアしていく残党は増えていく。
赤いマフラーをたなびかせながら放たれる銃弾の嵐に真っ向から勝つのは不可能だと残党のリーダーは察した。
ならば負傷しているチャンピオンと非戦闘員のボンプを人質にとろう。
そう考えて、ビリーを無視してライト達の元に行こうとすると
…
「観客席には手を出しちゃダメだぜ。そんな卑怯な真似が俺に通用すると思ってるのか?」
二丁の銃を自在に操りながら、鮮やかな蹴りを決める。
近距離に居ようと遠距離に居ようと関係ない。
守るものを背負ったチャンピオンは強い。
瞬きすればもう何名もリタイアが出る決闘。
こんな鮮やかで華々しい決闘はない。
「鈍ってないじゃないっすか、パイセン。」
もしかしたら先代のチャンピオン時代より弱くなったかもしれない。
それでも万全の状態であったとしてもライトは勝てる気がしなかった。
「決闘は終わりだな。もうカリュドーンの子に手を出すなよ
…
って聞こえてねーか。」
娘達をホルスターに戻したビリーの視線の先には伸びている残党達。
立っているのはビリーしか居ない。
観客席に居たライトとアキラは呆然とした様子で観ていた。
アキラは清算の日のライトを思い出し拍手をする。
それを見て、パチパチとライトも拍手をした。
「拍手ありがとうな、店長、ライト。
…
赤いマフラー返すぜ、これはお前のものだからな。」
ビリーは迷子になった子供のような表情をしているライトに優しく赤いマフラーをかけた。
赤いマフラーには砂埃一つもついていない。
「パイセン
…
俺
…
」
「お前はよく頑張ったよ。店長をちゃんと守ってくれたじゃねーか。だから俺が助けに来れた。」
さ、脱出しようとビリーはライトに肩を貸して支える。
「脱出してライトの手当てをしないとな。こいつらをどうするかは俺からおやっさんに相談するさ。」
「ビリー、本当にありがとう。助かったよ。」
アキラは素直にお礼を言った。
ライトは自分が情けなくてたまらなかった。
もう頼らないって決めたのに助けてもらった。
「パイセン
…
すみません。」
「謝ることなんて一つもないぜ。俺はお前のパイセンだからな、まだまだ頼ってもいいんだよ。」
自分が考えていることすらお見通しとは、本当にこの人には敵わないとライトは心の底から思った。
脱出してライトの拠点で治療をした。
ビリーからビッグ・ダディに連絡をとり、残党達をどうするか相談して彼に全て任せた。
「さて、あとは
…
」
ビリーはベッドに横になっているライトを見る。
出血のためか、精神的なものか。
ライトの顔は青白く、ただ天井を見つめているだけ。
「ライト、本当に気にするなよ。お前はよくやったよ。」
「パイセン、後悔してません?」
「後悔?」
「こんな弱くて情けない奴に赤いマフラーを継承したこと
…
後悔してません?」
翡翠色の瞳から涙が溢れる。
また自分を責めているのだとビリーは瞬時に理解した。
「分かってねぇな。」
ビリーは深緑色の髪を優しく撫でた。
「お前は強いよ。守るべき者を守ろうとして、今まで成し遂げてきた。ただ強いだけじゃない。お前は優しくて仲間思いだ。だから赤いマフラーを継承したんだ。俺が誰彼構わず赤いマフラーを渡すと思ってるのかよ。」
「それでも
…
」
「それだけじゃない。俺はライトが好きなんだよ。生意気だけど俺に懐いてくれるライトも、焔を宿し苛烈な戦いをするライトも、実は褒めてもらうのが大好きなライトも、後輩としても恋人としても大好きなんだよ。」
ビリーは傷だらけの手を慈しむように握りしめる。
「お前は分かってねぇよ。俺がどれだけお前のことをチャンピオンとして認めているか。どれだけ大事に思っているか。どれだけ
…
愛しているか。」
「パイセン
…
」
「泣いてもいいんだ。助けを求めてもいいんだ。俺は嫌だとは思わない。パイセンとしても恋人としても頼られて嬉しいんだよ。」
翡翠色の瞳から更に涙が溢れ、鋼鉄の手が雫を拭う。
「これだけは忘れないで欲しい。俺はお前の味方だ。」
チャンピオンに贈った言葉は優しい響きを纏っていた。
緋色のヒーローはチャンピオンの味方。
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