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しちろ
2025-06-02 18:13:02
1723文字
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LOM
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真珠は煌めく
レディパールと瑠璃。瑠璃パっぽい。ってか瑠璃パ。
「やっぱり、不思議な色だな」
ふいに、瑠璃が呟いた。
藪から棒に、何のことか。瑠璃は、レディパールの表情を読み取ったのだろう。聞かれる前に自分から答えた。
「レディパール、貴女の核のことだ」
「私の核?
……
いきなり、なにを言うかと思えば」
瑠璃の視線の先には、闇を映しこんだような黒真珠。無垢を体現したような白真珠とは対照的である。
「我が核を『不思議な色』などと評したのは、瑠璃、君が初めてだ。私は黒真珠。光も輝きも宿さぬ、ただの漆黒にすぎぬ。見てわかろう」
レディパールが温度を感じさせない声で言うと、瑠璃が眉をひそめた。
「誰だ、そんなことを言ったのは。
……
ああ、そうか」
暴言の主に思い至ったらしい。声を低めた瑠璃の、眉間にますますしわが寄る。
不快に思うようなことではない。レディパールはそう考えている。黒いのは事実だし、しょせん裏切り者の戯言だ──そう思っていたし今でも思っているが、それとは裏腹に、いつまでも忘れられない一言でもあった。
……
気にしているつもりは、本当にないのだが。
「あの野郎、宝石商なんてやってたくせに見る目のない男だぜ。
……
いいか、レディパール。アンタの核は輝きのない黒一色、なんかじゃないぜ。黒真珠を下地に、赤、桃色、緑、黄、青、紫、いろんな色が光に溶け込んで、混じりあっているように見える。
……
そうだな、それこそ、ここにない色はないんじゃないかってくらい」
「大げさだな。それに酔狂もいいところだ。変化のない黒い核など見て、何が楽しい」
「だから、黒じゃないって言ってるだろ」
アイツの言うことは信じるのに、オレの言うことは信じないのか、と瑠璃が腕組みして地面をつま先でたたきはじめた。
「貴女ほどの珠魅でも、自分の核の色はわからんのか? 貴女の核はただの黒じゃない。少なくとも、オレからはそう見えている。今度じっくり鏡でも見てみろよ」
瑠璃は頑迷である。怒っているようにすら見える。
レディパールは、自分の胸元に視線を落としてみた。
……
漆黒にしか見えぬ。
レディパールはわざわざ自分の核など見たりはしない。己の核で気にかけているのは、傷の有無だとか珠力がどれだけ残っているかとか、そういうことだけだ。
レディパールは、呆れ混じりにため息を吐いた。
「
……
瑠璃、君はいつも、そんなものを見ているのか」
私の、黒く古い核など。
すると、むすっとした顔のまま、瑠璃が言った。
「見ているに決まっているだろう。貴女はオレの大事なパートナーなんだぜ」
レディパールは驚いて、瑠璃をまじまじ見てしまった。瑠璃がハッと顔を上げる。
そのまま、数十秒経過。
固まっていた瑠璃の顔が次第に赤くなり、耳にまで朱が広がっていく。
「
……
スマン。今のは
……
忘れてくれないか」
瑠璃が片手で真っ赤な顔を覆った。さらに、自分の顔を見られたくないと言いたげに、もう一方の手を挙げる。レディパールからは、しっかり見えている。真珠姫より赤くなっている。
つい、笑ってしまった。口の端に乗るくらいの、わずかな笑みだが。
「馬鹿だな、瑠璃。肝心なところで退くのか? てっきり私を口説いているのかと思ったが」
そういうわけじゃない、いや、そういうわけでもあるのかしれないが、違う
……
など、瑠璃はぶつぶつ言っている。
そういうわけじゃないとはどういうことだ、そう怒ってもいいのかもしれないが、レディパールは微笑んでしまう。
瑠璃の不器用な言葉は、目に見えない煌めきとなり、黒真珠に深く吸い込まれていく。そして知らぬうちにかけられていた呪縛を、片端から上書きしていくように思えた。
私の核は、漆黒ではない。
もう一度見降ろした黒真珠は、つまらぬ黒ではないように見えた。
「忘れるなどとはもったいないな。せっかく私の騎士が、我が核を新たに評してくれたのだ。さっそく鏡を見にいくとしよう」
自分の核を見る、ただそれだけのこと。
だのに、こんなに浮かれた気持ちになるのは、初めてだった。
君の言いだしたことだ。付き合え。そう言ってラピスの手を引くと、勘弁してくれと、赤面する騎士の小声が聞こえた。
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