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しきみ
2025-06-02 00:38:25
1940文字
Public
司類
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探検、冒険、その後の、
フォロワーさんのポストからできた司類(飼い主🌟と🐕️🎈)です
あまったれたイッヌはかわいいね…
「ねえ、司くん」
少し先を歩く類が振り返り、甘ったれた声でオレを呼ぶ。
「
……
類、あのな、」
次に続く言葉は、もう何度も耳にしたことがある。ここで甘やかしてしまえば、また繰り返すだろう。
あまり甘やかすのもよろしくない。それはわかっている。
わかっては、いるのだが。
オレよりもよく聴こえる耳に、オレよりも多くを嗅ぎ分けられる嗅覚。人間よりも優れたそれらに支えられた類の底なしの好奇心は、たまに爆発する。
普段は決まったコースを通る類との散歩だが、オレの休日になると、その爆発した好奇心によって随分な遠出になることがある。
それも気になる、こちらも気になる、そうしている内に遠くのあれも気になる
……
と馴染みの薄い道で、好奇心に満ちた類の瞳はきらきらと輝き、ふさふさの尻尾の揺れは止まることを知らず、ハーネスに繋げたリードを持つオレを待たずにぐんぐんと足を進めていく。
心の赴くままに歩いていく類は、それでいて頻繁にオレの方を振り返ってくる。
「司くん、司くんも今の見たかい?」
だの、
「あっちから面白そうなにおいがするんだ」
だの、
「いつもの道もいいけど、知らない道も楽しいねぇ」
だのと、星を散りばめたような笑顔と声で話しかけてくるのだ。
振り返った先にオレがいることを信じて疑わない声がけ、その純粋な信頼を裏切ることなどあってはならないだろう。そうやって類に応え続けているうち、オレ自身も類の好奇心の向く先を見るのが楽しくなってしまうのだった。
そうして、いつも、もう戻ったほうがいいんじゃないかと告げるタイミングを見失う。
今日も例に漏れず、そのようになった。
ちょっと喉が渇いたな、と類が休憩を挟もうとしたタイミングでようやく帰宅を切り出せたものの、家の近くへ戻ってきた時にはもう随分と日が落ちていた。
「今日もよく歩いたなぁ、類」
少し前を歩く類に声をかけると、そうだねえ、とまだ色々なものに気を取られているような声が返ってきた。
まだ満足しきらないらしいと思っていたが、ふと類の足が止まる。低い位置でゆらゆらと控えめに揺れていた尻尾が、ぱさりとその動きを軽やかに大きくする。
ああ、これは。
「ねえ、司くん」
くるりと類が振り返る。オレが当然、自分が振り返った視線のすぐ先にいるものと信じて、自分に応えてくれるものと信じて。
続く言葉はわかっている。遠出をした帰りにはほとんど毎回聞いているのだから。
「
……
類、あのな」
ここで甘やかしては、また繰り返すこともわかっている。ここは飼い主として、ともに生活をする者として、きっちりと。
「うん、なんだい、司くん?」
きっちりと、断らねばならない。そうわかってはいるのだが、しかし。
ぱさぱさとご機嫌に振られる尻尾、オレの言葉を律儀に待つピンと立った耳、子供がそうするようなあどけなさすら感じる甘ったれた声に、ゆるゆるにゆるんだ笑顔。
「
…………
いや、なんでもない」
これを裏切って、がっかりとさせる。そんなことはオレにはできなかった。
「それで、どうしたんだ?」
「ふふ、うん。あのね、」
「僕、歩くの疲れてしまったんだ。だからだっこしてほしいな」
家まであと少しのところでそうねだられて、今回も断れずに類を抱えて歩く。
オレが普段から鍛えているとは言え、悔しいがどうしても歩みは遅くなる。しかし、途中で夕飯が楽しみだなんだと言っていた割に、腕の中の類はくふくふと上機嫌に笑っているのだった。
「この距離だったら、もう少し頑張って自分で歩いた方が早く帰れるんじゃないか?腹が減ったと言っていただろう、お前」
言っても仕方がないとはわかっているが、なかなかの重労働を決めている今、これくらい零すのは許してほしい。
「まあ、それはそうなんだけれどねぇ。きっと、ヒトより力持ちな僕が司くんを運んだほうが速いし」
「おい
……
」
「ふふ、でも、僕は別に、早く帰りたいわけではなかったから」
ごめんね、と言葉だけの謝罪で、類がオレの胸元に頭をぐりぐりと擦り付けて甘えてくる。ふわふわの耳の先が、類の頭の動きに合わせて顎をくすぐる。抱えた類の重さや体温、触れているところから伝わる鼓動が、じわりと全身に広がっていく。
「わかっているくせに」
にんまりといたずらっぽく笑って、それでいて安心しきった声音とともに、類はオレの目を覗き込む。オレの答えは知っている、とその目は語っていた。
そう、わかっている。だから、オレだって歩く速度は上げていないのだろうが。
完敗のため息をついて類を抱え直すと、実に楽しそうな笑い声が耳を打つ。
次の遠出の帰り道も、きっと。
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※当作品は、しきみ(
https://bsky.app/profile/shikimi-k.bsky.social
)による二次創作作品です。
※当作品の、転載、改変、AI学習への使用は禁止です。
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