雲ひとつない眩いばかりの晴天である。窓を開ければ、気持ちの良い風が入ってくる。暑くもなく寒くもないカラッとした天気に、起き抜けの身体も軽い。ここ数日太陽は顔を見せず、また明日から天気は崩れ、近々梅雨入りする予報だ。貴重な晴れ間である本日、なんと仕事は休みであり、そうなればすることはひとつしかない。家中の窓を開け放ち、部屋の真ん中で仁王立ちした簓は、ここに大洗濯祭りの開催を宣言した。数日分の溜まっていた洗濯物、ベッドのシーツやらカバー類、合計三回洗濯機を回した。広いベランダは干した洗濯物であっという間にいっぱいになる。調子に乗った簓は、このまま風呂掃除にも手をつけて、すべての部屋に掃除機をかけ、玄関に並んだ靴も磨きぴかぴかにした。クローゼットの中も整理して出しそびれていた衣装をクリーニングに持って行く。スーパーにも寄って足りないものの買い出し、帰りに最近ご無沙汰であった行きつけのお好み焼き屋に顔を出す。テイクアウトを待っている間、店主である老夫婦や常連の客たちと他愛のない話を楽しむ。多くなってしまった荷物を両手に抱えて帰宅し、昼食にお好み焼きを食べながらベランダではためいている洗濯物を見ていると、なんとも言えない充足感に包まれた。
「オオサカの空は千パーセント晴天!」
はためく洗濯物の写真を送られても返事のしようがないだろうに、左馬刻からすぐに返信がきた。
「こっちは大雨だわ。しかもびしょ濡れ」
ぱちくりと目を見張る。手元のスマートフォンで調べると東の方は警報レベルの大雨真っ最中であった。同じ空の下、西と東でこんなに違うとは。
「びしょ濡れってなんでやねん。傘させや」
今度は即着信。びっくりして取り落としそうになりながら電話に出る。
「傘なんてさしてたらやられちまうだろうが」
開口一番これである。呆れていると、背後ではざあざあと激しい雨音と、怒号、破壊音……何にやられてしまうのかは聞かないでおく。
「取り込み中やった?」
「取り込み中だったら電話しねえよ」
「ええ……?」
雨の音に混じってとんでもない音がしているが、なんでもないように左馬刻は話を続ける。
「ったく、まだ梅雨じゃねえのに」
「傘さされへんかったらカッパ着たらええやん」
「カッパだぁ?カッコつかねえだろ」
「カッコつけ刻〜。こっちは天気ええからびしょ濡れやったら簓さんが乾かしたるのに」
わはは、と笑っているのは簓だけだった。
「……」
「左馬刻?」
「わかった。今からそっち行くから乾かせ」
「えええ?」
「……終わったか、おう、今行く。簓、取り込み中になった。新幹線に乗ったら連絡する」
「えっ、待っ、ほんまに?」
「マジでびしょ濡れだ。覚悟しとけ。じゃあな」
雨の音がやみ、ぼんやりしている簓の頬を晴れた爽やかな風が撫でていく。見渡す部屋はこれ以上ないほど片付いている。とりあえず、乾いた洗濯物を取り込み、左馬刻を乾かす準備をすればいいだけだ。いやいや左馬刻を乾かす準備ってなんやねん、乾かせってなんやねんアイツ。ひとしきり笑い、急に会えることになりそわそわしている自分にも気づいてまた笑った。
梅雨に入る前の、ええ一日になったな。
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