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さゆき
2025-05-31 23:18:12
3486文字
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シアタールームでの攻防
アベ→(←)星くらいのアベ星小話。
2.3のプレゼントや映画イベントやらですっかりアベ星に沼った時に衝動的に書いた短文です。
映画リベンジしてほしいな〜と思ってたら総監はたまに遊びに来てる(スタレワールドイベ)みたいで横転しました
スラーダって結局お酒なんだっけ……?とか星ちゃんは未成年(?)だけど黄金の刻には入れたから成人はしてる……?とかその辺りがふわふわしてますね……
見慣れない景色が瞳に映る。
ああ、天井か、なんて呑気に働いた思考を閉ざすように不思議な色の瞳が星を捉えた。
身体はソファに転がされ、覆い被さるように顔の両脇に手を付かれる。近いからよく顔が見えるな
……
と星がぼんやり考えていると、小さな溜息を零された。
「
……
君は、知らないのかもしれないけれど」
「アベンチュリン?」
「男は好きじゃない相手だって抱けるんだよ」
光のない瞳が、一層仄暗く眇められる。いつかホテル・レバリーの部屋で彼に迫られた時と同じ表情。
でも、その声はどこか乾いていて、咎めるような響きで。
「そうなんだ」
過去の記憶が殆どないのもあるが、そもそも男女の機微について疎い自覚は星にもある。でも、と彼女は言葉を続けた。
「あんたはそんなことしないでしょ」
「
……
どうして?」
「あんたにその気があるなら、忠告なんてする間もない。なんだっけ
……
ああ、あれ。君は断れない、断る理由がない、断る余地もないってやつ」
過去に彼に言われた言葉をなぞると、苦笑いが返ってきた。でも、腕の檻はまだ解けない。
「君は僕のことを本当に理解しているね」
「友達だからね。
……
まあ、分からないことも多いけど」
「例えば?」
「なんでそんな泣きそうな顔でこんなことしてるのか、とか。アベンチュリン、何かあったの?」
そっと、囲われた腕の中から手を伸ばすとアベンチュリンの身体が強張るのが分かった。星から触れてこられるとは思っていなかったのかもしれない。気にせず頬に触れ、手袋越しにゆっくりと撫でると次第に硬直が溶けていくのが分かった。
「
……
星ちゃん」
「うん」
「もう少しだけ、こうしていてもいいかい?」
「良いけど、腕辛くない?」
星の言葉にアベンチュリンは確かに、と笑うと身体を起こした。そのまま星の手を取って自分の頬に擦り寄せる。
追いかけるように星も身体を起こしたが、彼は何も言わなかった。
「
……
アベンチュリン、さっきのだけど」
「ああ、ごめんね。君があまりにも無防備だから、忠告したくなって」
「無防備?」
「友人とはいえ、年頃の男と二人きりで、こんな雰囲気の良いシアタールームで煽るようなことを言っちゃいけないよ」
その言葉に、星はそんなこと言ったっけ
……
と記憶を探る。
先日この飛空艇のシアタールームで記憶の映画を観ようとした時、アベンチュリンとトパーズも誘おうとしたが会議中でダメだった。だから今度こそ、とリベンジしようとして。
トパーズは別のプロジェクトで来られなかったけど、アベンチュリンがOKだったので予定を合わせた。せっかくなら列車のみんなもまた誘おうと思って
……
「なのに『邪魔するほどウチは野暮じゃないから!』って言われたけど、アベンチュリンと私は友達なんだし、邪魔も何もないよね
……
って言ったこと?」
「
……
その次くらいの言葉かな」
「そもそもアベンチュリンは私にそういう興味ないと思うし?」
はあ、と大きな溜息。アベンチュリンは天を仰ぐと星の両肩に手を置いた。
「君はもう少し情操教育が必要だと思う」
「
……
なにそれ」
「身体はほぼ大人でも心がまだ子どもだってこと。アンバランスすぎてヒヤヒヤするよ、全く
……
お仲間達が過保護なのも分かる気がする」
「確かにまだお酒飲めないし子どもかも。黄金の刻には入れたけど、お酒飲めなかったのは残念」
「そういう物理的な意味じゃないんだけどな
……
」
がくりと肩を落として、アベンチュリンは星から手を離した。そのままお土産として持ってきたスラーダのボトルを開けて、星に手渡す。
「友達同士でも、女の子から二人きりで会いたいって言われたら男は期待するものなんだよ」
「二人きりで会いたいとまでは言ってない」
「結果二人きりなんだから同じだよ」
自分の分も開けて乾杯、とボトルを軽く合わせる。普段の彼ならお洒落なグラスに注いで飲みそうなものだったが、今日はこのまま楽しむことにしたらしい。
「しかも君ときたら、来るなり上着も靴も脱いで完全に自宅モードに入るし
……
」
「この船の船長は私だからね。ここは私の第二の家みたいなものだよ」
「ナビゲーターのお姉さんは君に慎みを教えてくれなかったのかな?」
家のように寛ぐのは構わないし、無礼講も悪くはない。気の置けない友人として見てくれているのは喜ばしいことだ。
……
だが、そのミニスカートと胸元が見えそうなトップスのままソファに寝転がって「そういう興味ないだろうから別にいいでしょ」と言うのはいかがなものか、とアベンチュリンは内心で深いため息を吐いた。
これが自分だったから良いものの、他の男だったらと思うと背筋が凍る気がした。このままだとこの子は危ない。本人的にも、周囲の異性からしても。
「誘惑したいんじゃないなら、男の前で誤解されそうな行動はやめた方が良いよ。さっきの、僕が本気だったら嫌だろう?」
「本気なら、するの?」
「
……
そう来たか
……
」
怖いという感情がないのだろうか、開拓者には。きょとんと目を丸くする星に、本日何度目か分からない溜息がアベンチュリンから溢れた。
「本気なら、したかもね」
口にしたのはほんの揶揄いだった。無防備な星に対する嫌味でもあったし、多分響かないだろうという目算だった。
けれど、その言葉を受けた星はふぅんと感情のない相槌を打ってこう返したのだ。
「別に嫌じゃないけど」
「え」
ゴトン、とスラーダのボトルが机に落ちる。幸い中身はなかったから溢れることはなかったが、そんなことを気にしている場合ではない。
「星ちゃん、それは
……
」
「映画観ようよアベンチュリン、どの記憶にする?
……
って言っても私もあんまり選べないんだけど。あんたと最初に会った辺りの記憶にでもする?」
「いや、それより星ちゃん」
「あんたをボコボコにした記憶の方が良いか。まさか戦闘でギャンブルしてくるとは思わなかったよね」
「星ちゃん!!」
普段余裕綽々な彼が珍しく焦っている。それに気を良くした星はふふん、と笑いながら立ち上がって映写機のスイッチを押しに行った。
……
内心、早鐘を打つ心臓の音や赤く染まった耳元がバレませんようにと願いながら。
(あんなに近くに寄られたこと、アベンチュリン以外になかったからだ
……
なんだか、そわそわする)
なのかやホタルとは密着して写真を撮ったりしたことがある。けれど、異性にここまで接近されることは星にはなかった。
あのホテルでも、さっきも。相手が纏う香りを感じられるほど近い距離は、どこか落ち着かない。
落ち着かない、はずなのに。
アベンチュリンの隣へ、触れ合わない程度に間隔を空けて座る。彼が言うようにパーソナルスペースを守って適度な距離を保つ方が『良い友達』っぽいだろう。
星なりにそう考えた行動だったのに、アベンチュリンは無言で星へ身を寄せた。
空いていた間隔がゼロになる。
「
……
誤解されない距離にしたつもりだったんだけど?」
「ここには君と僕しかいないんだから、別に良いだろう?君は嫌じゃないみたいだし」
「これ、本当に友達の距離なの?」
「さぁ?僕は友達が少ないから、分からないな」
いつの間にか形勢逆転されている気がする。揶揄いすぎて怒っている
……
?そう感じた星が恐る恐るアベンチュリンの表情を見ると、彼はもういつもの胡散臭い笑顔で星を見つめていた。
「
……
やっぱり離れて」
「酷いなぁ、何にもしてないのに」
「これ、集中しないと映せないから。雑念が混じったら何が映るか分からない」
「雑念が混じりそうなくらい意識してくれてるってことかい?」
「おかげさまで今危機感がすごい。教えてくれてありがとうアベンチュリン、今後はもう少し距離を置くから」
「あはは、じゃあ
……
」
今日はこの距離で良いってことだね?
耳元でそう囁かれて、星の集中力は見事に切らされることになった。乱れた意識ではまともな映画など映るはずもなく
……
「ねえ、君の映画って全編ゴミ箱中心なんだけどどうなってるの?遂に金色のゴミ箱が出てきたんだけど
……
」
「最近アイツとの激戦を終えたばかりだったんだよね。今もこの船にいるよ」
「金色のゴミ箱が
……
?」
気付けばいつものペース、いつもの温度感に戻った二人だったが、こっそり様子を見に来たなのかは後でこう語っている。
「あの二人、あんなに広いソファで密着して映画観てたんだけど!いつの間にそんなことになってんの!?」
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