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傘道
2025-05-29 21:08:08
2549文字
Public
ビリイト
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キャンディの思い出を塗り替えるには
#billighter1w
【お題投稿〈第3回〉】
お題①: キャンディ
お題②: 過去の亡霊
から書きました。
差し出した手に乗せられたレモンキャンディ。
煙草を吸わないように渡されたレモンキャンディ。
地下闘技場で、自分が戦う意味を見失わないように食べた幻影のレモンキャンディ。
煌めく黄色の水晶は、人工的な甘さでどこか懐かしく感じる。
自分のせいで失った仲間たちとの思い出。
リングに倒れた時に見えた仲間の幻影は、励ますような笑みを浮かべていて。
立ち上がる理由になったけれども。
今なら思う。
恨まれてもおかしくない。
責められてもおかしくない。
だからあれは自分が都合の良いように作り出した幻影に過ぎないのだと。
楽しい楽しい仲間たちの思い出が。
励ますような仲間たちの笑みが。
どこか重荷のように感じてしまうことすら罪だろうか?
起きる予定の時間より早くに目覚めてしまった。
うなされていたせいか、身体は汗ばんでいる。
過去の思い出たちがフラッシュバックして頭から離れない。
翡翠色の瞳が不安気に揺れる。
乾いた唇から漏れ出るのは、自分のせいで死んでしまった傭兵団の仲間の名前。
どうして彼らは責めないのだろうか?
だけどもし恨みを正面からぶつけられたら耐えられる自信がない。
中途半端な自分に嫌悪感が増す。
どのくらい時間が経っただろうか?
スマホからアラームが鳴る。
アラームを止めるために画面を覗くと、一通のメッセージが届いていた。
『おやすみ、ライト。明日会えるの楽しみだな!』
先輩兼恋人からのメッセージだった。
メッセージを見て今日は恋人が自分の拠点にやってくることを思い出した。
「
…
シャワー浴びないと。」
枷でも付けられているかのように重い身体を引きずって、ライトはバスルームに向かった。
恋人の前では平気な振りをしないと。
それだけの意志で歩を進めた。
「ライト、これプレゼント。」
シャワーを浴びて汗を流して、恋人を迎える準備ができた。
それから1時間後にビリーはライトの拠点にやってきた。
そして先ほどの台詞を言いながら、紙袋を渡した。
「えっと、ありがとうございます。」
紙袋を持つと、片手でも持てるくらい軽かった。
「今開けていいっすか?」
「おう、いいぜ。ライトが好きなものいっぱい入れたからよ。」
紙袋を開けると、色とりどりのキャンディが入っていた。
棒付きキャンディや可愛くラッピングされたキャンディなど様々な形のキャンディが入っていて、まるで子供の宝箱みたいな光景が紙袋の中で広がっていた。
赤、青、黄、黄緑、オレンジ、紫、ピンク
…
味も豊富であることが一目で分かった。
「こんなにたくさん
…
嬉しいっす。」
「よかった。喜んでくれると思ったんだ。」
どれから食べようかと紙袋に手を突っ込むと、何かにぶつかる。
飴にしては大きいなと取り出してみて、出てきたものを視界にとらえ翡翠色の瞳が大きく見開く。
それはタブレットケースに入ったレモンキャンディだった。
ポップなレモンをモチーフにしたキャラが印刷されたタブレットケース。
「あぁ、それ昔からあるレモンキャンディらしいな。なんか珍しそうだから入れたんだが
…
」
ビリーの声が遠くに聴こえる。
ライトに禁煙させるために傭兵団の仲間がくれたレモンキャンディ。
目の前にあるのと同じ製品だった。
再びフラッシュバックする過去の思い出。
「許してくれ
…
違う、俺は
…
そんな笑顔を、向けられる資格なんて
…
」
「おい、ライト!?」
震えが止まらないライトをビリーは抱きしめる。
「恨むだろ?俺はダメな団長だった
…
」
「ライト!」
「お願いだから、恨んでくれ
…
」
「ライト!しっかりしろ!」
ビリーはライトを強く抱きしめた。
紙袋がぐしゃぐしゃになるが、そんなことどうでもよかった。
何度呼びかけても、翡翠色の瞳が虚なまま。
「ライト!」
顎を持ち上げて、ライトの顔を覗き込む。
悪夢に囚われているような恋人の姿。
悪夢から救うには
…
「ライト、大丈夫だ。俺がそばに居るから。」
優しくそう言った後、ビリーはフェイスガードをライトの唇に押し当てた。
それはビリーがライトに贈るキスだった。
夢から覚めるには王子様のキスが必要。
陳腐で現実味がないが、それでもビリーは実行した。
ぶつぶつと呟いていた懺悔がキスによって止まる。
「
……
パイセン?」
それはライトを現実に引き戻した。
「そうだ、ライトのカッコいいパイセンだぜ。」
もう大丈夫だとビリーはライトの背中をさすった。
「パイセン、俺
…
」
「悪かった。お前のトラウマのスイッチを押してしまって
…
」
「パイセンは何も悪くないっすよ。俺がただ弱いだけで
…
」
翡翠色の瞳から熱い液体が溢れた。
「これ昔の仲間がくれたレモンキャンディなんです。でも俺のせいで死んでしまって
…
なのに目に浮かぶのは笑顔なんです
…
俺は恨まれて当然なのに
…
!」
「ライト
…
詳しいことはよくわかんねけど、俺はライトが恨まれて当然の人間だとは思わないな。」
ビリーの言葉にライトは涙を溢したまま、黄色のアイライトを見つめた。
「だってよぉ。自分の楽しい思い出も笑顔もちゃんと覚えてくれて、死なせてしまったことをずっと悔やんでる。ライトが悪人だったら絶対そんなことしないだろ?お前はいい奴だよ、だから仲間は恨んでないんじゃないかって俺は思うんだ。」
「パイセン
…
」
「大丈夫だ。そして忘れちゃいけねーのが、ライトは俺から赤いマフラーを継いだ、俺の愛しい恋人ってこと。これは何があっても揺るがねーからな。だから
…
辛くなったらいつでも頼ってくれよ。すぐ駆けつけてそばにいてやるから。」
「俺、そんなに愛されていいんですか?」
その言葉を聞いてビリーは紙袋をテーブルの上に置き、鋼鉄の手でライトの両手を包み込んだ。
「愛されていいんだよ。だって俺はライトのことが大好きで愛したくてたまらないんだから。」
「パイセン
…
その、こんな俺でも愛してくれるんですね?だったら
…
」
「わかってる。今日は俺がどれだけ愛しているか教えてやるよ。」
ビリーはライトにキスを贈った。
キャンディは楽しい思い出と一緒に。
辛い過去を思い出すキャンディは、トラウマが消えるまで愛されてから食べられる時が来るでしょう。
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